JR山手線、東急東横線、東京メトロ銀座線など9路線が乗り入れ、1日の乗降客数が約260万人。多くの人が行き交い、さまざまな目的を持った来街者、オフィスワーカー、学生、内外の観光客などが訪れる渋谷。

 当然、飲食店や飲食施設も多種多様で数多く展開され、一大飲食ゾーンを形成。最近ではさらにトレンド発信機能も強まり、若者だけではなく大人も楽しめる店も増えている、この街に11月1日、「渋谷スクランブルスクエア」が開業した。

 今回は前回の食物販に続き、この商業施設の飲食店の見どころを紹介する。

新たな魅力、際立たせた特色で他の施設と差別化

 渋谷駅の上にオープンした大型複合施設「渋谷スクランブルスクエア」は、12階に9店と13階に8店が出店するレストランゾーンを形成しており、カフェ11店、コーヒースタンド1店が各フロアに点在している。

 施設が「世界最旬」を追求しているため、レストランゾーンは日本初1店、新業態5店、商業施設初が2店、都内初1店、渋谷初3店と、新たな魅力を発信。特色を際立たせた店も目立ち、他の飲食施設とは違いを打ち出している。

 洋ではフレンチがなく、イタリアン2店、スパニッシュ2店とカジュアルさが特徴で、地中海・アラビア料理という異色の店も投入。和でも本格的な和食店は誘致せず、串揚げ、もんじゃ焼きといった庶民的な味を導入。しゃぶしゃぶ・すき焼きも手軽な業態が出店している。

 各フロアの空間構成はオーソドックスだが、それぞれの店が工夫を凝らした店づくりを行う点も特徴だ。

和は庶民的な手軽な業態が出店している

 日本橋魚市場より150年続く老舗魚問屋が手掛ける月島で行列ができる人気店「月島もんじゃ もへじ」が、フレンチを取り入れた新業態を出店(席数は97)。江戸時代に生まれた東京名物もんじゃを、伝統的な月島スタイルに加え、フレンチシェフが作る進化形スタイルで提供し、トッピングアイテムにはフォアグラ、トリュフも用意している。

 

「蟻月」は2003年のオープンからもつ鍋ブームの火付け役なり、渋谷スクランブルスクエアが海外を含め10店舗目。看板メニューは「白のもつ鍋」(数種類ブレンドした白みそにだしを加え、コクがあり味わい深い印象のスープに仕上げたニンニクの効いた白みそ仕立ての鍋)。鉄板の上で焼く「もつ焼き」も人気になっている。今回は初めて博多屋台定番のメニューを鉄鍋で提供する新業態で出店している(座席数は57席)。

「お好み たまちゃん」は、「bills」や「アイスモンスター」などオリジナルブランドから海外発ブランドまで、数々のカフェ・ダイニング・バーを運営するトランジットジェネラルオフィスのお好み焼きと韓国惣菜の店。東京では青山に続く2号店。“鉄板焼きダイニングで、「鉄板ホルモン焼き」や「トマトチーズ焼き」「たまちゃんデラックス焼き」などを提供する。お好み焼きは大阪風。

 立ち飲みで天ぷら×ワインを楽しむ新スタイルがテレビや雑誌、SNSでも話題になった大阪の「天ぷら 天寅」の東京1号店(席数は50席)。店内は和モダンでスタイリッシュな空間。油・衣・食材を厳選し、低カロリーでヘルシーな天ぷらと、天ぷらの語源の国ポルトガルの微発泡ワインでマリアージュして楽しむスタイルを提案する。

「つるとんたんUDON NOODLE Brasserie」は、芸能人も御用達の人気うどん店「つるとたん」の渋谷エリア初の店舗(テーブル席のみの101席)。丁寧に仕上げたコシと艶のある喉越しのよいうどんの他に、本格的な日本料理やアルコールも充実。落ち着いたディナーや個室でのパーティーにも対応している。

「塚田農場」や「四十八(よんぱち)漁場」などのエー・ピーカンパニーが手掛ける新業態「しゃぶしゃぶ つかだ」。今ブームの一人しゃぶしゃぶの専門店で、すき焼きも提供する(カウンター席が48席でテーブル席が12席)。

 店舗デザインは著名なクリエイティブディレクター 佐藤可士和氏の監修によるもので、シンプルで明るく開放的な空間。

 牛肉は神戸牛、A5、A4の黒毛和牛など高品質な国産にこだわり、香りや食感を味わう旬のこだわり野菜とともに一人一鍋で提供する。オススメのメニューは「A4黒毛和牛肩ロースとA5黒毛和牛のブリスケ」4400円。

台湾の人気店 鼎泰豊(ディンタイフォン)が出店

「Gu-O」(グーオ)は銀座アスターの新業態。眺めの良い個室も用意し、スタイリッシュなおしゃれな空間で、独創的な中華料理を楽しめる(席数は60席)。客単価はランチで3000円、ディナーで6000円を見込んでいる。

 店内の内装やインテリアは「SAMURAI Chinese(サムライチャイニーズ)」がテーマ。シックな色使いの家具で落ち着いた雰囲気を醸してつつ、和のスピリッツにあふれている。ペースト状の滑らかな粥に食材をくぐらせて食べる「粥ベジ鍋」をはじめ、オリジナルのメニューを豊富にそろえ、和食材を多用した和中華前菜をタパススタイルで初めて提供。

 

「鼎泰豐(ディンタイフォン)」は台北で1972年に点心料理の販売を開始。小籠包が評判となり、評判を呼び、新人気レストランの仲間入り。93年にはニューヨーク・タイムズ紙で「世界の人気レストラン10店」の1つにも選ばれ、世界的なブランドとなった有名店だ。日本では全国の商業施設などに出店し、この店は21店舗目。名物の小籠包をはじめ点心を豊富にそろえ、テイクアウトメニューも提供する(席数は88席)。

 新メニューとしてカリフラワーライスや青梗菜など1/2日分の野菜を使用した炒飯「スースータンチャーハン」1298円やケーキのモンブランを思わせる「モンブラン小籠包」2個400円も登場させた。

洋はフレンチがなく、カジュアルさを打ち出す

 日本初出店のスパニッシュ「José Luis」(ホセ・ルイス)は、スペイン王室も愛用する1957年創業のマドリッドにある老舗レストラン。伝統と革新をテーマにスペインの伝統と日本の文化を融合させたメニューを展開し、日本限定のアレンジメニューも展開する。米の代わりにフィデオ(ショナパスタ)を使って炊き上げたパエリヤや、スペインバルのフィンガーフードなど多彩やメニューをそろえ、4800円のコースも用意。ワインはスペイン産でサングリア、シェリーも。

 渋谷エリア初出店のスパニッシュの「La Coquina cerveceria」(ラ コキーナ セルベセリア)は、こだわりのスタイリッシュな空間で、本格的なスパニッシュ料理を体感できるレストラン(6席の個室も備え、席数は84席)。バスク地方の微発泡ワイン「チャコリ」をはじめ、ソムリエ厳選ワインも多数用意。タパスは500円からと手軽で、スペインバルの活気も楽しめる。

「ビステッカ・アラゴスタ」はイタリアンの新業態

 牛肉とオマール海老をメインにトレンドの食材や厳選素材を使った料理を提供する「BISTECCA-ARAGOSTA」(ビステッカ・アラゴスタ)。イタリアワインを中心にワインも豊富にそろえている。ディナーコースは6000円、8000円、1万2000円。

「PASTAHOUSE AWkitchen Figlia」(パスタハウス エーダブュルキッチン フィリア)は自家製生パスタをバラエティ豊かにそろえる。奇をてらわず、全国各地の生産者から届く野菜を合わせたイタリアンで、渋谷エリア初出店。

 地中海とアラビア料理・クラフトビールの「CARVAAN TOKYO」(カールヴァーン・トウキョウ)は、2017年、埼玉県飯能市に出店したレストランで、都内初出店の2号店(店舗面積は約57坪で席数は82席)。「アラビア世界の大人の社交場」をテーマに、アラビア建築と明治時代の洋館を融合させ、世界各地から集めた家具などを配置している独特の空間だ。

 アラビア料理はひよこ豆のペースト「フムス」など。アルコールは長期熟成のビール「バーレーワイン」や古代小麦を使ったビール、レバノン産ワイン、ジョージアのオレンジワインなど珍しいアイテムを展開している。

ウィーンの老舗監修のカフェ新業態に、伊藤園の新業態も

「ocha room ashita ITOEN」(オチャルーム アシタ イトウエン)は伊藤園の新業態(テーブル36席・カウンター7席)。ドリンクは抹茶、日本茶、紅茶、抹茶ラテ、ほうじ茶ラテの定番の他に、チーズティーや抹茶ビールも用意する。スィーツも抹茶わらび餅や抹茶しるこの他に、抹茶の風味を生かしたバケットサンドイッチなど、お茶を使用した斬新な商品もラインアップ。抹茶を自分で点てたり、お茶をワイングラスで提供したり、商品の提供方法にも新しい工夫を取り入れ、急須や湯呑などグッズも販売する。

「ANNA'S by Landtmann」(アンナーズ バイ ラントマン)は1873年創業のウィーンの老舗「カフェ ラントマン」監修の新業態(テーブル席のみの40席で落ち着いた空間)。「身体の中から美しく」をコンセプトに、季節のフルーツやハーブ、野菜をふんだんに使ったスムージーやリフレッシュメントドリンクをメインに、ウィーン本店のコクと滑らかさが際立つコーヒー、サンドイッチ、スイーツを用意。

 米国・ロサンゼルス発の「Urth Caffé」(アース カフェ)が初めて、テイクアウト専門のコーヒースタンドとして出店。プレミアムなコーヒーや人気のボバ(タピオカ)など、こだわりのカフェメニューを提供し、限定のドリンクメニューやオリジナルグッズも取り扱う。

 

 ミラノで200年以上の歴史を誇るラグジュアリーパスティッチェリアの「Cafe Cova Milano」(カフェ コヴァ ミラノ)。優雅でクラシカルな内装が特徴で、ミラノで愛されて いる本店を再現している(テーブル席のみの34席)。エスプレッソやカプチーノ、リゾットや フレッシュケーキなどを提供、チョコレートの詰め合わせやパネトーネなどギフト好適品も取り扱う。

〈総括〉情報発信が可能な点は評価も、ゾーニングや動線に課題

 12階、13階のレストランゾーンは、特色ある店舗も多く、渋谷に今までなかった飲食の集積を創り出している。全体的にカジュアル感を打ち出しながら、各店の空間づくりもスタイリッシュなものが多く、大人の空間に仕上げている。各フロアに点在するカフェもさまざまなスタイルのものを誘致、幅広いニーズに対応している。

 トータル的に情報発信が可能な飲食ゾーンとして評価できるが、レストランゾーンのゾーニングや動線はもう一工夫すれば、館のコンセプトである「ASOVIVA(アソビバ)」が体現できる場となっただろう。