(Photo/山田ヒロシ)

 ――ネット社会でSMの商売に変化は見られますか?

 上田 チラシ広告などのネット化は進んでいるが、実際に来店される方で紙のチラシを見た方と、ネットでチラシを見た方は恐らく、紙の方が上だろう。本来はEDLP(エブリデーロープライス)で、基本的にチラシを打たず、常時、一定のリーズナブルな売価で提供する商売の仕方が、最も販売数量が増え、利幅的にも一番安定し、かつオペレーションも安定するので非常にいいと言われている。これを志向する会社は同業の中にもあるが、弊社は依然としてハイ&ローの施策が現段階では最も有効と、脱却できていない。将来的に脱却できるかというと、世の中もっと大きな変化があれば随分変わると思うが、この辺りの変化が普遍化するには、まだ時間がかかると見ている。

 ――現在の競争状況を見ると、ハイ&ローで来店いただくことも必要では。

 上田 どちらかに偏り過ぎるのではなく、それぞれの特徴を極めていくことが、結果として会社の業績の向上につながっていくのかなという見方をしている。

 ――ニーズが多様化しているといわれます。

 上田 弊社では1日60万人強くらいのお客さまが来店されている。ニーズは極端に言うと60万通りある。それを類型化していくと、「リアル店舗を1つのコミュニティとして位置付けて、そこにいろいろなサービスを付加する」「お客さま同士の会話が促進できるような場を提供する」など、いろいろな切り口があるが、そのお客さまは何割いるのか。そのニーズを満たすために、例えば2万SKUの中から商品を選択するお客さまのニーズを犠牲してでもやるべきことなのかは、常に悩むところだ。

 巷でよく言われているイートインコーナーは、大きな方向感は間違いないと思うが、「マルエツプチ」のような50~60坪の空間でイートインコーナーをつくるとゴンドラを3本犠牲にしなければならない。3本を犠牲にすることで被るデメリットと、イートインを設置するメリットと、どちらを取るべきなのかはいつも悩むが、結論は立地だと思っている。標準装備としてイートインをマルエツプチに設置する必要はないというのが、現段階での結論。ただ、将来、それが大きく変わってくる可能性は十分ある。

 ――イートインの位置付け、可能性はどう考えていますか?

 上田 可能性は間違いなくあり、イートインを求めるお客さまがたくさんいることも事実だ。イートインがあるからその店に行くお客さまもいる。ただ、イートインを設置すると必ず、トレードオフの関係になる。500~600坪の広さがあれば標準装備で全く問題ないが、ある程度の品揃えを犠牲にしなければならないのであれば、そこまでやる価値がある店と、やってしまうと多くのお客に不満を与えてしまう店を見極める必要がある。

 ――今、イートインはどう使われていますか?

 上田 業界誌の人が考えるものと、現場の実態は違う。酔っ払いのたまり場だったり、宿題の情報交換会の場だったり、現場の店長は管理が大変だと結構、嫌がる。設備的には一見よさそうだが、理屈と現場のギャップがかなりある。イートインコーナーは買物をしなくても利用でき、それを拒否できない。これは外食の客席とは決定的な違いだ。本来のわれわれの意図はそうではなくて、店内で買われたものをそこで食べていただく、コミュニティの場となって地域のお客さまの会話の場を提供する目的でつくる。この辺りが非常に難しい。

 ――コミュニティの場にしようとしているのは、どのような理由からですか?

 上田 これから日本は加速度的に高齢化が進んでいって、高齢の人の単身比率が高まると思う。とりわけ、首都圏は高齢単身者の比率が増え、非常に大きなマーケットを形成する。そうした人たちが会話の場として、物理的な空間を利用するというシーンがあるはずだ。地域に住んでいるお客さまにそれ目的でもいいので使っていただく。こうしたサービスを本当に考えていかないと、選ばれるSMにならなくなる可能性がある。