セブン-イレブンの最新のテレビCMは「安全安心健康 栄養成分表示の取り組み」です。個別の商品のアピールではなく、あくまで企業イメージを上げるためのCMです。

 では、どうして今、こんなCMを放送するのでしょう。

 キャッチコピーは次の通りです。

「新しい今日がある」

「安全と安心と健康へ」

「保存料・合成着色料を使用しない取り組み」

「からだを想うおいしさ」

「糖質、食物繊維、食塩相当量 表示開始」

「表示は、決意です。」

 保存料と合成着色料不使用は、従来から訴えているので、セブン-イレブンにとって目新しいことではありません。安全安心をアピールするために、もう一度アピールしておこうといった程度のことです。

 今回のCMで一番訴えたいことは「充実した栄養成分表示を開始したこと」です。

 この連載でも何度も取り上げていますが、栄養成分表示は、2015年に施行された食品表示法で義務付けられました。完全実施までの猶予期間は、2020年3月末までです。4月1日以降、製造、加工された加工食品には、原則、全て栄養成分表示をしなければなりません。栄養成分表示がないものは、食品表示法違反になるので販売することはできません。

 義務表示項目は「エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量」の5項目です。しかしセブン-イレブンは、義務化される前からほとんどの商品に栄養成分が表示されていました。では一体、何の表示を開始したというのでしょう。

 一つは、従来「ナトリウムの量」が義務表示でしたが、食品表示法では「食塩相当量」が義務表示になったことです。わざわざ「食塩相当量表示開始」とうたっていますが、半年後には義務表示になるので「半年前から始めました」という意味です。

 もう一つは、義務ではなく推奨表示である糖質と食物繊維の表示を開始したということです。「糖質+食物繊維=炭水化物」ですから、炭水化物だけを表示すれば問題ないのですが、炭水化物の内訳も表示しますということです。

 特に、糖質ダイエットの流行などで、糖質の量を気にする消費者がいるので、分解して表示することで健康をアピールしているのです。食品表示法では、炭水化物を分解して表示する場合、糖質だけ、あるいは食物繊維だけを抜き出して表示することはできません。

 必ず炭水化物の量の表示をした上で、糖質と食物繊維の両方を表示しなければなりません。ですから、糖質(あるいは食物繊維)だけを表示することはできないので、当然ながら「糖質(あるいは食物繊維) 表示開始」ではなく、「糖質、食物繊維 表示開始」となります。

 こうした炭水化物の詳細(分解)表示は、既に取り入れているメーカーも多いので珍しいことではありませんが、おにぎりなどの弁当・惣菜関係ではほとんどありません。コンビニで一番売れるのが、弁当・惣菜関係です。

 コンビニの顧客で、カロリーや塩分、糖質や脂質などの栄養成分を気にする人は少ないですが、少ないながらも気にする人はいるのです。たとえそれが来店客の1割であっても、そうした顧客には、他のコンビニやスーパーマーケットなどではほとんど表示されていない糖質や食物繊維の量を表示することは、大きな差別化になります。

 コンビニの弁当・惣菜関係では、既にほとんどの商品に栄養成分が表示されていますが、スーパーマーケットなどの弁当・惣菜には、ほとんど表示されていません。そんなスーパーマーケットでも、来年4月からは一部の例外品を除いて、数多くの商品に「健康にとって非常に重要な情報となる栄養成分」が表示されます。

 そうなると、コンビニ惣菜の優位性が失われます。そこでセブン-イレブンは、機先を制して「糖質と食物繊維」を表示すると宣言したのです。

 表示を気にしない顧客は、極端なことを言えば、何があってもお気に入りの店しか利用しません。ところが、食品表示を気にする人は「表示の情報で安全安心を評価する」ので、動きます。つまり売上げを左右するのです。

 栄養成分表示だけではありませんが、食の2020年問題は、食品業界の生き残りをかけた壮絶な戦いになるでしょう。