働く女性が増えてきた今、スーパーマーケットの選ばれ方は大きく変化している。「チラシを見ている暇がない」「安いよりも近い方が良い」といったお客さまが増加し、今までの販促方法ではもはや立ち行かず、岐路に立っているスーパーマーケットも多いだろう。AmazonなどをはじめとするECの登場やスケールメリットで勝負できる大手チェーンの存在なども、中小のスーパーマーケットにとっては脅威だ。

 そんな中、スーパーマーケットはどんなお店を目指せばいいのだろうか?「サミット」が、その問いに対して果敢に挑戦している。

2017年「サミット」の快進撃が始まった

 今回取り上げるのは東京都内に本部を置くサミット。小売業界の中でその存在は言わずと知れたところではあるが、改めて主婦目線で面白さを語りたい。

 1都3県に115店舗(19年10月末現在)を展開するサミットは、数年前までは「普通のスーパー」だった。「都内でイチオシのスーパーマーケットは?」と聞かれ、幾つか挙げる中でサミットの名を出すと、ほぼ全員から「サミットは昔に行ったことがあるけど、特にインパクトのあるイメージはない」と言われる。そんなセリフを聞くと私の『サミット愛』に火が付き、サミット論を語り過ぎて引かれるのが困ったところではあるのだが、とにかくサミットは今、すごい。

 快進撃が始まったのは2017年。新社長として就任した竹野浩樹氏のもと進められた改革は、従業員を巻き込んだ「スーパーマーケットのエンタメ化」であった。

「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」。竹野氏が掲げた事業ビジョンは、小売関係者なら聞いたことがある人も多いだろう。

 このビジョンで行われた取り組みは、商品を掲載せず「マル秘」とだけ書いたチラシ(社内では「白紙チラシ」と呼んでいる)の発行、人気惣菜が1位になった際の公約を掲げ、買物客の投票によって順位を競う総菜総選挙、バイヤーたちが徹底的に現地で聞き込み取材をした沖縄フェアや北海道フェアなどのご当地フェア、ユニークなメロンパンを中心にメロン味のお菓子や果物のメロンまで一挙に集めたメロンフェア(通称メロフェス)など、月に一度のペースでユニークな販促企画を実施している。

こちらがうわさのマル秘チラシ。左面が真っ白!

 奇想天外な企画の数々はSNSでも多数シェアをされ、サミットはたちまち「普通じゃないスーパー」となっていった。

従業員を巻き込み、社内の雰囲気全体を変えていく

「すてきだな」と感じるのは、スーパーマーケットを楽しくするために、まずは従業員が楽しんで企画を運営しているということ。社長や本部がいくら便利なサービスを取り入れたり、店舗作りの理想を語ったりしても、現場の従業員が乗り気でなければ浸透しない。そのギャップに苦しんでいるチェーンも多くあるだろう。

 お客さまに一番近いところにいるのは店舗従業員。スーパーマーケットが変わるためには、現場の意識が変わることが何よりも重要である。

 サミットでは、店舗の従業員が社内専用のコミュニケーションツールを使い、うまくいった企画の取り組み事例や共有したい事柄を、積極的にシェアをする。良いと思ったアイデアはどんどん他の店舗でも採用されていくそうだ。本部が企画を考えて発信するだけではなく、店舗の従業員たちが「この企画をお客さまに楽しんでもらうには、どうすればいいか?」をしっかりと考えられている。

野球シーズンに行われたフェアでは、店舗の従業員がユニフォームを身にまとい盛り上げる。これも店舗発案
元になったフェアの告知ポスター。野球シーズンとかけて開催

 とはいえ最初からうまくいったわけではない。事業ビジョンを掲げた当初は、具体的な企画が考えられなかったり、変わっていくことを恐れたりする従業員も多かったという。

 そこで、まずは社長が積極的にアイデアを出し、徐々に「ここまでやってもいいのか」という雰囲気を従業員間に醸成するよう務めたそうだ。今では店舗の従業員から発案される企画や取り組み方法も多く、すっかり「スーパーマーケットを楽しくする」ことを、従業員が楽しめている様子だ。

 サミットの店舗に入ると「何だか明るい雰囲気だな」と感じる。それは、従業員の雰囲気が良いことも関係しているのだと思う。

「家庭の味」を極める惣菜力

 ユニークな取り組みの他にも、「サミットに行きたい」と思う理由はたくさんある。その一つが惣菜力だ。サミットが惣菜に注力し始めたのは15年ほど前。共働き世帯の増加という背景から、「家庭の味」が食べられる惣菜に力を入れるようになったという。

 それまでは品数を多く作っていたが、改めて見直し、家庭でよく食べられているメニューを中心に商品数を絞って開発していった。目指したのは「飽きのこない味」。惣菜のライバルは他店の惣菜や外食ではなく、家庭料理。そこで家庭料理のように安心して何度でも食べたくなるよう、体や気持ちに負担のない調味料や味付けにこだわって開発をしている。

 各メーカーと作り込んだオリジナルの惣菜は極力店舗で作るようにして、作りたてのおいしさを楽しんでもらう。閉店間際でなくとも、惣菜を作った数時間後には値引きを開始する商品もあり、「食べ頃」にこだわって店頭に出しているという。また化学調味料などもできる限り使わないようにして、優しい味付けの惣菜を目指しているそうだ。

人気メニュー「塩にんにくの若鶏もも竜田揚げ」

 そんなサミットの惣菜は、もはや「手抜きのために買う」ものではなく「おいしいものを食べたいから買う」ものへと惣菜の概念を変化させている。

 かくいう私も「ちょっと遠くてもあのお惣菜が食べたいから、サミットへ行こう」と思い通っているお客の1人。家からは30分ほどかかるサミットに、おいしいお惣菜を求めて時々足を運んでいる。

この"メディア化"をまねしたい!「サミット編」

 サミットでは「献立を考えたり、買物に行ったりするのが面倒でつらい」という生活者の気持ちに寄り添い、「サミットに行けば何とかなる!」「サミットは自分のことを分かってくれている!」と思ってもらえる店を目指しているという。

「共働き家庭で毎日ごはんを作る」のは、結構つらい。そんな中、「スーパーマーケットをエンタメ化」し、“買わなければいけない”ではなく“買いたい”を創り出しているサミットは、「買物がつらい」という感情について新しい挑戦をしている。

 買物に対して抱える負の感情にどう向き合うか。各社サミットの取り組みを参考にしながら、ぜひ自社らしい取り組みを企画していってほしい。全スーパーマーケットが「買物がつらい」に真剣に向き合えば、きっと世の中は変わっていくはず。そのくらい大きな課題であり、すてきな挑戦だと思う。

 主婦にとって「つらい」買物が「楽しい」買物になるよう、楽しみながらメディア化していきましょう!