住友商事と住商アーバン開発が、神奈川県藤沢市に広域型ショッピングセンター(RSC)「テラスモール湘南」を開業したのが2011年。それから8年目となる今年10月25日(金)、千葉県松戸市に「テラスモール松戸」をオープンした。

エリアの事情を考え、オーダーメイド

『地域メイド型』と呼んでいる、それぞれのエリアの事情を考えたオーダーメイドのショッピングセンターで、住民の実消費をベースに松戸は『豊かに楽しむ毎日の暮らし』をコンセプトにしている。「希少・こだわり領域を拡大し選択肢を提示」、「交流の機会や空間を創出し、コトを通じて体験・時間価値を提供」、「デイリー需要の強化と地域拠点の創出」を行う施設だ。

 コト、コミュニティといった今どきの機能を付加しているが、湘南が高感度エリアであることから非日常的要素を強めて広域からの集客も期待したのに対し、松戸はRSCながらより地域に密着した施設づくりを目指しており、大きく性格が異なっている。

 施設の広さも湘南が地域最大の約6万3000㎡に対し、松戸は約4万2000㎡とコンパクト。店舗数も177と湘南の6割程度にとどまる。

 立地も前者はJR辻堂駅の前、後者は駅から離れており、公共交通機関はバス。湘南はオープンモールも備えているが、松戸はクローズドモールと相違点も目立つ。

 テラスモール湘南は一大商業集積地・横浜への商業流出を食い止め、東は大船駅から西は小田原駅までの範囲を商圏とし、初年度の来館者2000万人・年商400億円を目標とした。ところが、実際はそれを超えてより広域から集客。初年度は来館者数約2370万人・売上高は約509億円とはるかに想定を上回った。

 そして、昨春には大規模なリニューアルを実施。さらに高感度なファッションや雑貨の専門店を導入、飲食店やライフスタイルゾーンも増設し、都市型ライフスタイルモールの機能を強化した。その結果、前年と比べて来館者は約7%増の1820万人、年商は約15%増の544億円と過去最高を記録した。

5㎞圏内はSC空白エリア

 これに対し、松戸市は東京都心から約20㎞、電車で約30分のベッドタウン。子育てしやすい環境にあることから若いファミリーも多く、世帯年収は700万円以上の層が厚い地域。

 テラスモール松戸の商圏は3㎞圏26万人、5㎞圏61万人、10㎞圏200万人と潤沢で、半径5㎞には大型の商業施設がほとんどないショッピングセンター(SC)空白エリアで、柏、流山に流出していたお客を呼び戻す狙いを持つ。

 周辺に居住する専業主婦や有職女性、子育てファミリー、有職者やリタイア層のアクティブシニアと、マルチターゲットで近隣からの平日利用の来店頻度を高めながら、より広域の週末利用も期待し、来館者1060万人、年商270億円を見込んでいる。

 テラスモール湘南と同じく、家庭と職場とは異なる居心地の良いサードプレイスを目指し、ショッピングだけではなくさまざま機能を備えて「松戸ライフ」をサポート、何度でも通いたくなるよう食物販と飲食店を集積した。

 館内には施設中央吹き抜け空間「アトリウムテラス」に「こもれびステージ」を設け、イベントを随時開催。地域のサークル団体に発表の場としても貸し出しを行い、地域のコミュニティ活動やワークショップ、子供の誕生パーティなどさまざまな利用法が考えられるコミュニティールーム「さくら」と「けやき」も用意した。

 館外には水と音と光の演出が楽しめる噴水を設けた「けやき広場」もあり、ゆとりある空間にしている。

多核モールの3フロア構成

 テラスモール松戸は多核モールの3フロアで、1階は「マルシェ&デイリーライフ」のフロア。核店舗は「無印良品」「ロフト」と湘南と同じくグループ企業のスーパーマーケット「サミット」が出店している。

 中央の食ゾーンは、松戸北部市場の跡地であることから「キタイチバ」と名付け、生鮮、惣菜、スィーツの29の専門店が集積。その周辺にはグロサリー「北野エース」、コーヒー豆・輸入食品「カルディーコーヒーファーム」、ヴィレジヴァンガードの食のセレクトショップ「こととや」を配置している。

 ドンクの新業態であるベーカリーレストラン「ベーカリーテーブル ディレクション バイドンク」、スィーツポテトパイの人気店「POGG」も誘致した。

 テラスモール湘南は、専門店ゾーンはデパ地下的なスィーツと惣菜の「湘南マルシェ」だったが、今回はよりデイリーユースへの対応を強め、生鮮は精肉のタカギフーズは引き続きだが、青果は澤光青果から菜果善、鮮魚は魚の山金から魚の北辰に変わった。強まる簡便ニーズに対応し、全体的に惣菜を強化し、地元の人気店の導入も目立っている。

 2階は「レストラン&トレンド」のフロア。ファストファッションの「ユニクロ」と「H&M」の大型店に、「OPAQUE.CLIP」「LEPSIM」「AZUL by moussy」といった23のアパレル、ファッション雑貨は12ショップ。湘南で当時注目を集めていた「ロンハーマン」や、ビームスをはじめとするセレクトショップの集積はなく、手軽でこなれたブランドが多い湘南とは対照的なショップ構成で、新業態もなく、SCにおけるアパレル不振を物語っている。

 レストラン街「けやきダイニング」は店舗とテラスを融合し、路地のような空間を演出。人気店の「山本のハンバーグ」がSC初出店した12のレストラン街でカフェが路面店感覚で軒を連ねている。

 SC前を通るけやき通りに面した大きなガラス窓のあるインナーテラススペースにはレストスペースを配置し、ゆとりを持たせゆっくり時間も過ごせる。

 3階は「フードコート&ファミリー」のフロア。家電の「ノジマ」、スポーツオーソリティの新業態「スポーツオーソリティ アーバンステージ」に「アカチャンホンポ」、100円ショップ「ダイソー」をはじめ、キッズショップの集積などで構成されている。

 約750席のフードコート「ケヤキッチン」には「リンガーハット」「はなまるうどん」「FRESHNESS BURGER」「いきなり!ステーキ」「IPPUDO RAMEN EXPRESS」など10店舗で構成されている。

 つけ麺の人気店「中華蕎麦 とみ田」の新業態「松戸富田麺桜」や、千葉エリアということで「マザー牧場CAFE&SOFTCREAM」も投入している。

 さらに時間消費を取り込むため、エリア唯一となるシネコンは11スクリーン1975席の「ユナイテッド・シネマ」、アミューズメントは「ナムコ」、最新機能を備え、キッズ対応も強化したフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」も誘致した。

 サービス機能として注目されるのはヤマト運輸の「ネコサポステーションprovided by ヤマトグループ」。地域住民を対象に家事サービスや暮らしの相談にイベントも行う、サービス・情報提供の場として機能、もちろん宅急便の発送・受け取りにも対応する。

 また、テラスモール松戸ではSC初となる全館共通の「QRコード決済端末」を導入。PayPay、楽天Pay、LINE Payなど11のQRコード決済が利用でき、スマホやパソコンなどから施設や店舗の予約が可能なEPARKの「順番待ちサービス」もレストラン13店舗に導入した。

 テラスモールの2店舗目となるテラスモール松戸は1号店の湘南を進化させたというより、湘南の施設コンセプトを引き継ぎながら、立地に合わせてアレンジし、最新コンテンツも導入しながら、地域密着度を高めたRSCとなった。来店頻度を高めて足元需要を取り込みながら、エリア外の流出を食い止め、どこまで商圏を広げることができるか。湘南に続く柳の下の二匹目のどじょうではなく、一匹目のドジョウとなれるか、その成否が注目される。