「良い会社」になれば採用活動はいらない

――今後、人材の採用はどのように進めるのか。

 これまでは新卒採用を強化してきましたが、大幅に縮小することにし、これからは社内登用の強化に切り替えていきます。

 このような方針になったのは、そもそも「飲食業は社内に社員となる母集団が形成されている」ことに改めて気付いたからです。

 例えば、アルバイトが400人いるということは社員となり得る母集団が400人いるということです。それにもかかわらず人材を外に取りに行っているということは、端的に言って社内で採用することができないから。つまり、魅力的な「良い会社」となっていないからでしょう。

 社内で働いてくれているアルバイトが入社したいほどの会社でないのに、当社のことを知らない学生さんに「良い会社」と宣伝し採用するということは矛盾です。

 そこで「新卒採用を中止する」と決めると、新しい社員はアルバイトないし当社のことをよく知る地元の人を採用することになります。それを可能にするためには現場の環境やレベルを向上させる以外に道はありません。そして、アルバイトをもっと愛情を込めて育成しようという気風になる。これこそが「良い会社」をつくる第一歩でしょう。

 当社は地域でドミナントを形成しています。当社で働いている人、働いたことのある人は当社にとって最も近しい顧客でもあります。ですから、その方々がどのように当社を捉えているかがとても重要になります。

 例えば、このエリアで当社の話題が出たとします。その中に当社で働いたことのある人がいて、「良い会社」と言えば、それはすごい説得力となります。このように「良い会社」と吹聴してくれるようになったとき、本当に「良い会社」になっているのだと思います。

「良い会社」とは待遇が良いことだけで評価されるものだと思いません。店の在り方や哲学がしっかりと根付いていて、働く人が気持ちを込めて仕事ができる環境をつくることが全てであると認識しています。

――社員の待遇はどのようにしていくのか。

 

 店長、料理長がインセンティブを大きく取れる制度をつくり始めました。会社を良くしていき、稼げる人にはそれに報いるようにしていきます。彼らの給料が増えて豊かな生活を過ごしていることは憧れの対象となると思ったからです。

 そこで、「理念経営」を推し進める一方で実力制度を導入していきます。労働環境の整備や福利厚生を充実させることは重要なことです。ただし、これらばかりであると組織に依存的な体質が出来上がると危惧していました。

 飲食業で働く人は、それぞれがしっかりとした技術を身に付け、稼げる人であることが重要です。われわれは組織に依存する人のために会社を成長させてきたのではありません。

 われわれは、向上心と感謝の心を持ち続けている人と一緒に仕事をしたい。福利厚生にしろ、このような人たちが報われる制度をこれから充実させていきます。

――キープ・ウィルグループは過去、都心で大規模ブライダル事業を手掛ける計画があったが、それが契機となって地域への思いに改めて目覚め、地元に集中し深堀りすることを選択した。7月にオープンしたコワーキングスペースの「アゴラ」や、町田最大級の規模を誇る「STRI」、新卒採用を縮小して社内登用に切り替えるなど、ここで述べられた保志氏の考え方は「武相エリア」を盛り上げることを極めてきた現在進行形である。今日「持続可能」が喧伝されるようになっているが、地域社会の中で企業活動が成立しているという事実を真摯に追求していくことで、企業活動はおのずと社会貢献となり、持続可能な仕組みが出来上がっていくのではないか。保志氏が語る「GOOD LIFE BUSO」というキープ・ウィルグループの展望からそのような構造が見えてきた。