この地でビジネスを発展させたい

――「BUSO AGORA」(以下、アゴラ)はどのように機能している。

 ここを活用する人たちは個人事業の方々です。これから起業しようという人だったり、フリーランスの人だったり。さまざまな職種の人が集まっていることから、それぞれがビジネスのシーズ(種)について話し合っている。

コワーキングスペースの「BUSO AGORA」はインキュベーションの拠点であり、さまざまなセミナーやイベントが開催され、ビジネスの交流が活発に展開されている

 これからはキープ・ウィルグループのビジネスリソースをシェアするなどインキュベーション体制(創業支援)をつくり上げ、インキュベーションマネージャーやコミュニケーションマネージャーが入居者それぞれの活動内容やビジョンを聞き出します。「あの人とあの人を結び付けると良いビジネスが生まれるのではないか」とセッティングしたり、アイデアを形にする支援の環境をつくっていきたい。

――これまでの経済社会の「生産性」とは別の世界ですね。「アゴラ」のインキュベーションマネージャーの生産性とは。

 それはまず、入居者さまを増やすことです。活用する人が増えることで必然的に当社の本部コストはなくなっていきます。企業の社会貢献における生産性とは、一つは「シェア」だと考えます。しっかりと奉仕することで、利は後からついてくることでしょう。

 これまで企業の本社はコストでしかありませんでした。飲食企業の場合は特にそうです。しかし、本社の空間やビジネスリソースを他の人とシェアすることで、ツーペイになっていく仕組みを創り出せます。

 今、本部スタッフは「アゴラ」の中で当社の本社業務に従事していますが、例えば経理業務は当社の仕事だけで完結するのではなく、「アゴラ」の入居者さまの経理を請け負うことが可能です。人事部も同様、入居者さまの採用を手伝うことが考えられます。このような形であらゆる部門が外販機能を備えると本部の間接コストはなくなっていきます。

 つまり、自社の全ての部門がインキュベーションの対象になるということです。ついには入居者さまとわれわれとの垣根がなくなり各部門が独立した「ティール組織」※1に近い形になると思っています。

 これまで述べたことは3年で完成させる計画です。

※1 従来の組織とは大きく異なる組織構造や慣例、文化を持つ新たな組織モデル

街の誇りとなるレストランが会社の認知度を上げる

――キープ・ウィルグループの飲食事業はどのように進めるか。

レストラン「STRI」は町田で最大級の規模を誇り、また高感度なレストランを展開している飲食企業のサポートにより、キープ・ウィルグループのクオリティを大きく引き上げた

 今回の「STRI」は高感度なレストランを展開されている(株)マザーズさまにお手伝いをいただいて、当社のクオリティのレベルを2段階ほどアップさせることができました。

 近年、お客さまから「より本物の料理を」という要望が増えてきました。ハイエンドにあるものを日常的な価格で表現するとたくさんのお客さまから喜ばれるということを、今回の出店で感じています。

「STRI」の開発は他社さまの力を借りて、当社の料理人やバーテンダーの総力を挙げてじっくりとつくり込んでいきました。大きな勝負をしたことになります。街の中心にあり、西東京最大のルーフトップを誇り、地場の食材を活用するなどして地元の方々が誇りを持てる店となることを意識しました。

 その結果、地域の方々から当社グループ店舗はハイブランドとして認知されるようになってきた手応えを感じます。

――「STRI」で培ったノウハウを多店舗化につなげていく発想か。

 いえ、多店舗化は当社の望むところではありません。「STRI」のノウハウは既存店にシャワーしていきます。既存店をボトムアップしていくことにで、増店するより利益が上げられることでしょう。

 飲食店ではQSCを極めていくことが最も重要なことであり、どれだけ会社が大きくなろうとも飲食店の現場は常に同じ地域にある個店との一騎打ちです。店の一つ一つが強くなければ売上げの昨年対比が割れてしまいます。そこで既存店の品質と生産性を常に高めていく必要があるのです。

 また、来年より業務委託での独立事例を増やしていきますが、今後はこのエリア内で当社との関係の深い仲間たちによる社内FCのような事例を増やしていきます。

――新しい事業としてどのようなことに取り組むのか。

 私が統括する社長室では行政の仕事のプロデュースや業務委託をする機会に恵まれてきました。ここでは公園や公共施設のなどでの出店事例を増やしていきたい。それは地域ブランディングを目的としている当社のビジョンと合致しています。

 今進んでいるプロジェクトは「薬師池公園」の活性化です。ここはリス園、ダリ園や自由民権運動記念館など町田の観光資源が凝集されているポイントなのですが、いまひとつ利用する誘因が弱い。そこで当社はこれらをブラッシュアップして、地域や県外の人がやってくるような施設にするために全力で貢献したいと思っています。

 また、町田の農産物は東京都内でも最も大きな生産量を誇っているのですが、市内で流通していないという課題を抱えています。そこで薬師池公園ではマルシェも行い、野菜を集めてここで販売する他、加工して当社のカフェに運び、市内で流通する流れをつくりたい。

 このような形で、当社が目指していることは事業活動そのものが社会貢献となるということです。