4人のパネリスト

 日本経済新聞社と日本経済研究センターは10月21日、都内で景気討論会を開催した。10月1日から消費税が8%が10%に上がり、景気後退への懸念があるが、参加者からは国内景気の落ち込みは限定的ではないかという声が強かった。

ポイント還元終了後の景気の落ち込みの方が心配

 今回の出席者は、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、丸紅の柿木真澄社長、日本総合研究所の翁百合理事長、日本経済研究センターの岩田一政理事長の4氏だ。

 施行されたばかりの消費税増税の影響についての見解では、新浪社長は「政府がポイント還元などの準備をしたことで大きな問題は起こらないでしょう。ただ、『心理は景気』で底流にあるデフレマインドがしつこくありまして、そちらの方に注目した方が良いのではないか」と発言した。

 翁理事長は「日次で見ると食料品、日用品は1週間くらい前から駆け込み需要がありましたが、10日くらいで(落ち込みは)戻りつつあります。ポイント還元の終了が2020年の東京五輪前に終わる(実際に終了は2020年6月)ので、そのタイミングでの落ち込みが心配だなと思っています」とした。

 景気動向の指標になる設備投資について柿木社長は「設備投資は心理的な影響を受けやすいです。大きな案件から小さな案件まで不確実な案件が世界各地域にあるので、大きな設備投資をするかというとリスクもあるので迷います。ブレグジットの問題、イランとサウジアラビアの中東情勢などといった懸案が1つずつ消えたとしても、最後には米中の対立が残るのでしょう。投資はタイミングです。私も幾つか投資案件を抱えていますが、今やらないといけないのか、今やっていいのかというジレンマを抱えています」と複雑な心境と吐露した。

 ブレグジットなど世界が不安定であるという意味で日本経済研究センターの岩田理事長は「米中対立において言いますと、貿易だけではなく技術での覇権を争っています。金融面において中国は、国際的な金融ネットワークであるSwiftから除外されることを心配しています。米国が中国を為替操作国に認定するといった通貨戦争あるいは金融戦争に拡張するリスクもはらんでいると思います」と述べた。

 米中対立について日本総合研究所の翁理事長も「部分合意は一時的なものです。国有企業の補助金の改革などは中国政府としては譲歩しがたいので、対立は長期的に続くものと考えています。貿易摩擦でサプライチェーンの見直しが本格化すると思われるので、中国の経済構造も変わっていくとみています」

温暖化対策をしないと最終的には高くつく

 もし業績が下降局面に入ってきた場合、人手不足が続いていく中での雇用環境について新浪社長は「まず、女性、高齢者が増えると非正規なので1人当たりの賃金が下がっていますが、全体していわゆる所得収入そのものは増えています。逆に景気後退となると、こういった人たちの労働時間は減ってきますので、雇用がずっとひっ迫するかというとそうでもないでしょう。賃金についても外需の縮小傾向が続くとすれば、経営者として賃金を上げるのは心配だなあというのはあります。政府と産業界で賃金を政策的に上げてきましたが、実感として非常に厳しいです」と率直な感想を話した。

 今後の長期的な対応策、展望などについては柿木社長は「日本は高齢者が増えていく中で生産性を高めていかないと価値が増えていかないでしょう。大企業は中小企業を下請けとしてではなく、強い中小企業を作るべく、ある程度投資として支援をするというのも大事です。そのため、丸紅は地方銀行に当社の人材を送り込んでいます。また、アメリカのような流動性だけを取り入れるのではなく、日本風の論理、倫理観など取り入れて日本風の流動性というのを高めた方がいいと思います」とした。

 一方、翁理事長は「社会保障では、2025年には団塊の世代の方々が後期高齢者になります。全世代型の社会保障について、将来に不安がありますから、国民に分かりやすい形での社会保障改革をしっかりやっていくことが大事だと思っています」と国の改革に期待感を寄せた。

景気討論会の様子

 また、日本経済研究センターの岩田理事長は「デジタル化と(データ分析などを活用する)デジタルトランスフォーメーションの活用が必要だと思います。また、地球温暖化対策を抜本的に行うことも必要です。実は、この2つは密接に結び付いていまして、AI(人工機能)を活用することで被害をできるだけ少なくする態勢を整えます。温暖化そのものをどうストップをかけるかという意味においては、ヨーロッパが掲げるゼロエミッションが大事で、最終的にそこにいかなければ台風19号を上回るような規模の大きい台風がこれからも来ることになる。それを止めないと費用ばかりかかってしまう」と、温暖化対策をしないと結果的に復興などで余計にお金がかかると警鐘を鳴らした。

 今回の景気討論会の客席を見ると、参加者の多くは見た目は50代以上がほとんどで、20代、30代の若者は少なかった。夕方に行われた景気討論会では、普通に勤務しているサラリーマンらが会場を訪れるのは難しいだろうが、将来を担う人材があまりいないことは悲しく感じた。