ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある石屋さんからのご報告。このコラムでは時々石材店(いわゆる墓石店)の事例をお伝えするが、今回の「石屋」はその石材店に石を卸している石の生産者だ。日本のある地域で産出する独自の石を製造販売している。

 こういう方々がお客さんである石材店と出会うのは展示会のような機会だ。彼も毎年出展し、新規客の獲得を図ってきた。今年、いつものように出店していると、昨年初めて同社のブースに来場したある石材店がやって来た。その方には昨年、ご来場いただいた後、手書きのお礼状を送り、1週間後には過去のニューズレター(同社が年に4回発行している定期刊行物)を送り、その後は秋、冬に送り関係性を維持してきたが、昨年ブースで見たお墓が気になっていたようで来てくれた。そして、五輪塔という墓石を店の在庫として置きたいと、買ってくれたのである。

 その方のお話を聞くと、作り手の見えない外国製のお墓を仕入れて建てている今の石屋の商売に面白味が感じられなく、「君みたいに一生懸命やっている人から買いたいんだよ」とのこと。そうおっしゃった時のその方の表情は、彼に既に好意を持ち、絆ができているようだったという。

 同社の石は高価なもので、在庫として持つのは石材店にとって易しいことではない。ましてや、2回会っただけの新規客にこれほどのものが、しかもほとんど営業活動なしに売れたことは同社でも過去になかったこと。これは、ワクワク系の実践によって作られた売上げだと彼は言う。そして自分なりに売れた原因を考えてみると、ワクワク系の実践として行っている、自社の取り組みと商品の価値を来場した方に伝えるための展示会ブースのしつらえ、それらを含めた独自の世界観の構築と、送ったお礼状、二ューズレターの相乗効果で、買いたいのスイッチが押せたのではないかと。

 この分析は合っている。同社の石は安価であることが売りではないため、価値を伝えることが営業活動の軸となる。そして、一度接した相手と関係性を維持し、さらに価値を伝え続けることは、ワクワク系では営業活動の要だ。それらが結実したのが今回の結果であることは、「君みたいに一生懸命やっている人から買いたいんだよ」の言葉に凝縮されている。また今日買い手が何を求めているかも、この言葉に集約されている。このことは、もしあなたが「価値」を売るのなら、BtoBでもBtoCでも、忘れてはならないことなのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください