店舗の売上げ・収益は「店長の能力」に大きく左右されます。たとえ立地が悪くとも、優秀店長は店舗を立て直してしまう。全ての企業が店長育成に力を入れているゆえんはそこにあります。

 しかし、最近は憧れの仕事どころか、「店長にはなりたくない」という社員が増えています。責任を負わされ、多忙を極め、疲れ切った姿を見ているからです。結果、店の活気が失われ、業績も伸び悩むことになります。

 こうした悪循環を断ち切る有効な方法が「店長会議改革」です。11月13日に『店長会議をちょっと変えれば会社の人事はもっとよくなる!』を上梓する、(株)新経営サービスの中谷健太氏は、すぐ実行できる「小さな改革」に手を付けるだけで、店長会議を「最強の仕組み」に変えることができると言います。

 店長にイキイキと働いてもらい、停滞しがちな人事評価や教育プログラムなどの制度を活性化する有効な方法として、店長会議の改革を推奨します。

参加したくなる「店長会議」

「会議が変われば、会社が変わる」とよく言われます。

 言い換えれば、業績低調の会社は、「店長会議」を改革すれば、会社自体が変わるチャンスがあるということです。しかも、毎月のように行う会議ですから、意識して変えようと思えば、すぐに改革に取り組むことができます。普段、当たり前のように続けている店長会議を、一度立ち止まって、問題意識を持って変える。たったそれだけのことで、会社経営が前に進み出すのです。

 また、採用環境がますます厳しくなる中、優秀店長が辞めないこと(定着)と、初級・中級店長を優秀店長に育てること(育成)は、会社にとって採用以上に重要な課題です。優秀な店長を定着させ、初級・中級店長を育てる仕組みをつくり出せれば、売上げが伸びる店舗が増え、会社の業績向上につながります。

 店長の育成はとても難しいテーマですが、店長会議を変えたことをきっかけに、半年から1年で店長の目の輝きが変わってきたという会社が少なくありません。店長会議は、すぐにでも変えられ、活用の仕方によっては会社を成長させる大きな原動力になるのです。

楽しくなければ会議じゃない

「店長から活発な発言が出ない」。経営陣や会議進行役(ファシリテーター)から、こんな不満の声をよく聞きます。

 発言が活発に出るようにするには、「会議のノウハウ」を提案する多くの書籍が指摘するように、進行役のファシリテーション・スキルが求められるのは確かです。ですが、もっと簡単な方法として、会議室のレイアウトを変えるだけでも、会議を活性化できます。進行役のスキルの巧拙にかかわらず、参加した店長に活発な発言を促すことが可能なのです。

 では、どのように「会議室づくり」をすればよいでしょうか。

 会議に参加している店長の思いを十分に吐き出させるには、緊張した雰囲気を避け、「自由な雰囲気」のある会議室づくりが必要になります。自由な雰囲気が店長の発言を促すことにつながり、そのような環境から出てきた意見によって合意された計画は、抵抗感なく実行することができます。

 ところが実際には、店長会議が始まるまではわいわいと楽しく会話していても、会議が始まった途端にその場が緊張感に包まれます。緊張した空気の中では、自由な意見は出にくいものです。結論が出てきたところで、意見を整理しただけの形式的なものになってしまいます。

 多くの場合、経営陣や進行役の想定していた落としどころに落ち着いただけの忖度実行計画となります。これでは実行度は上がりません。

 経営陣や進行役があらかじめ落としどころを決めている場合、店長たちからさまざまな意見が出たとしても、それを聞いているようで頭の中では反論の仕方しか考えていません。結局、発言した店長も「説得」されるだけになってしまいます。

 なぜ、そういうことになるのか。それは、進行役が、会議の成果として「何かを決めなければならない」と思い込んでいるためです。「(会議では)何かを決めなくてはいけない」という考え方が第一にくると、進行役も活発な議論を求めず、限られた時間に収まる形式的な会議になってしまい、あらかじめ想定していた落としどころに結論が落ち着くことになります。

 会議の主催者や進行役に求められるのは、店長たちがイキイキと発言できる「自由な雰囲気づくり」に意識を向けることであり、「(会議で)物事が決まらなくてもよい」というくらいのスタンスです。

 店長会議を、店長にとって「参加したくない」「行く意味がない」というものから、「行きたい」「楽しみ」と思えるものにしなければなりません。

「自由な雰囲気」こそが、会議参加者の「楽しい」につながります。楽しい雰囲気の中で導き出された結論は、参加者の主体性と可能性を引き出します。

「安心・安全な場」をつくる

 会議の運営上、最も大切なポイントは「安全・安心な場づくり」です。これが、意見や議論が活発になる自由な雰囲気づくりにもつながります。

「安心できる場」とは、会議参加者が「こんなことを言ったらバカにされるかな?」「こんなことを言うと怒られるのではないか?」などといった不安や心配がなく、心理的に安全・安心と感じられる場のことです。安心できる場には情報が集まり、意見交換が盛んになります。その場に集まってくる情報量が圧倒的に多くなるのです。

 これについて、興味深い分析結果があります。生産性の高いチームの必要要素を探った、Googleの分析プロジェクトの結果です。

 その一つの解が、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性でした。同時に「こんなことを言ったらチームメイトからバカにされないだろうか」「リーダーから叱られないだろうか」といった不安がチームのメンバーから払拭されていることでした。

 これは「心理的安全性(Psychological Safety)」と呼ばれます。安らかな雰囲気をチーム内に醸成できるかどうかが、成功の鍵とされているのです。

 もし、あなたの会社の会議が「店長の発言が少ない」「店長たちが何を考えているのか分からない」といった問題を抱えているのなら、その会議の場が「安全」であるかどうかを確認すべきです。

 店長を叱咤することで、その場の緊張感を過度に高めていないか。店長の発言を否定していないか。バカにしたことはないか。しっかり店長の発言を聞く姿勢をもって受け止め、尊重しているか。そのような点を見直してみてください。

会議に「期待感」をもたせる

 また、店長会議は、店長に「行く意味がない」「行きたくない」といったマイナスの感情を抱かせず、「楽しみ」「行きたい」と思えるものにしなければなりません。楽しい雰囲気は、人の主体性と可能性を引き出すことにもつながるからです。 

 店長が、店長会議に対して「行きたい」「楽しみ」と思うようになるには、それに対する「期待感」があります。店長に会議への「期待感」をもたせる必要があるのです。では、「期待感」をもたせる会議コンテンツとは、いったいどういうものでしょうか。

 期待感は、基本的に「報酬」に対して生まれます。報酬というとお金のことが思い浮かびますが、それだけではありません。報酬には「内的報酬」と「外的報酬」があります。

「内的報酬」とは、達成感、成長感、やりがい、充実といった精神的な報酬です。一方の「外的報酬」とは、昇給、昇進、承認、称賛など、金銭・地位などの具体的な報酬です。これらの報酬が自分にとって満足できるものであれば、人はそれを期待して、努力(行動)することになります。期待の大きさが努力の大きさにつながります。

 店長会議に置き換えてみましょう。内的報酬としては、自己の成長につながるコンテンツ、つまり学び(研修)の機会を用意することが考えられます。その研修の内容が楽しく学びがいがあるものなら、参加する店長たちは「今日は、どんなことを学べるのかな?」「今日はどんな面白い話が聞けるのかな?」といった期待感をもちます。

 外的報酬としては、一般的には「予算達成店舗の表彰」があります。予算を達成している店長は、社長から皆の前でねぎらいの言葉をかけてもらえる、承認される、賞状とともに金一封が授与されるということで、店長会議に期待感をもつことでしょう。この表彰制度をひと工夫することで、さらに大きな期待感をもたせることもできます。

店長の悪い癖を矯正する

 店長にはいろいろなタイプの人がいます。幾つか挙げてみると、

・自説をくどくどと述べる説教タイプ:高過ぎる理想をもち、それを部下に押しつけるような指導をしがち。

・部下の痛みに鈍感なタイプ:自分の感情を表現せず、気配り、思いやりを示せない。

・部下を自分に同調させようとするタイプ:会社や周りに対する愚痴や不満が多い。

・仕事を抱え込むタイプ:効率を求めるあまり、部下に仕事を振らずに自分でやってしまう。

・物事が前に進まないタイプ:人間関係の葛藤を好まず、他人の意見に同調し、結論を先送りする。

 といった感じでしょうか。

 店舗の従業員が離職する理由として「職場の人間関係(店長や社員との関係)がよくないこと」が上位に挙げられます。従業員を定着させるには、店長の癖に対しても改善に向けて教育に取り組むことが重要です。

 しかし、店長の言動に対して改善を促し、指導したものの、「なかなか変わらなかった」という経験はありませんか? 正論を突き付けて指導すると、相手も「分かりました」と言うものの、その後も変わらない人がいます。

 実は、人にはそれぞれ「変われない理由」があるのです。

 効果的な人材育成をしていこうとするのであれば、その「変われない理由」の原因を捉えて、指導アプローチの方法を変える必要があります。人の行動や癖を矯正するのは、非常に難易度の高い問題ですが、店長会議をうまく活用することで、こうした問題も解決することができます。