2大流通グループのイオンとセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)の19年度上期決算が発表された。

 イオンは営業収益4兆2902億1500万円で前年同期比0.6%増、営業利益は863億2600万円、3.9%減の増収減益だった。純利益はイオンディライトの子会社であるカジタクの不正会計処理による修正額を第1四半期に一括計上したことで、64.1%減の37億9100万円大きく落ち込んだ。

 一方、セブン&アイも、営業収益は3兆3132億2400万円と前年を0.9%下回ったが、営業利益は2.8%増の2051億2700万円の減益増収で、純利益は9.2%増の1106億4700万円となり過去最高となった。

2大流通グループの「稼ぎの構造」

 しかし、両者とも不振事業を抱えており課題も多い。この機会を利用して両グループを比較。現状を分析しながら、改めてその問題点を明らかにし、今後の行く末も占ってみる。

 まず、この数値から明らかなのはセブン&アイがイオンに収益力で大きく勝るという現実がある。営業利益率はイオンの2.01%に対し、セブン&アイが6.19%と大きく上回り、純利益もカジタク分を除いても、10倍近い開きがある。

 規模ではイオンだが、利益はセブン&アイ。この構図は以前からずっと続いており、収益力の向上がイオンの長年の課題となっている。

 これは既に広く知られていることだが、セブン&アイがコンビニのセブン‐イレブン・ジャパン(以下SEJ)という金の卵を持っているためだ。コンビニ事業は本部にとっては小売ビジネスでなく、加盟店に商品を供給し情報・サービスを提供する収益性の高いライセンシー事業であることによる。イオンもミニストップでコンビニ事業を手掛けているが、圧倒的にスケールが小さく、同業他社と比較して収益力も高いとはいえない。

 セブン&アイの国内外のコンビニ事業の営業利益は全体の84.9%を占め,そごう・西武(以下SS)の百貨店事業とイトーヨーカ堂(以下IY)の赤字を補てんしている。2番目の稼ぎ頭が271億円のATMのセブン銀行に代表される金融事業で全体の13.2%を占める。

 小売事業ではヨークベニマル、ヨークマートなど(IYを含む)、のスーパーストア事業は全体の3.4%、赤ちゃん本舗やロフトといった専門店事業は2.0%を占めるにすぎない。

 つまり、SEJに”おんぶにだっこ”の状態で、多くの業種・業態を展開しているグループとしては極めていびつな利益構造となっている。

 そうした中、SEJの今上期の既存店売上高が0.6%減少し陰りが見え始めている点が懸念材料。24時間営業問題で一部加盟店オーナーと対立し社会問題化し、本部と加盟店オーナーとの関係性やコミュニケーションの問題も浮上している。

 こうした点からSEJでは本部と加盟店の利益配分を見直すことにし、新たな加盟店支援策として、20年3月から定額のインセンティブ制度を導入し、1店舗当たりの収益は年間約50万円改善されるとしている。しかし、人手不足による人件費の高騰もあり、まだまだ十分な手当て策ではなく、効果は限定的なものになりそうだ。

 営業政策では成果を上げている「新レイアウト」を進化させ導入を進め、販売力を高めて売上げを増やそうとしている。

 ただ、今回明らかになったことで衝撃的だったのが、SEJ全店舗の3分の1にあたる約7000店舗が、月間の売上総利益額が550万円以下の低収益店舗であること。日販がチェーン平均よりはるかに低く、収益力の劣る店舗も相当数に上り、店舗間格差が厳然として存在しており、「セブン最強神話」が内部から崩れ去ろうとしている。

 

 収益の多くをコンビニに依存するセブン&アイに対し、イオンは営業利益ベースで、総合金融事業(イオン銀行、イオンクレジットなど)が346億円と全体の36.0%、イオンモールをはじめとするディベロッパー事業が282億円で29.3%と、この2事業が収益の両輪だ。

 また、ヘルス&ウエルネス事業(ドラッグストアのウエルシアなど)とサービス・専門店事業がそれぞれ17.6%と、これら4事業で利益の大半を稼ぎ出している。

 その半面、GMS事業(イオンリテールなど)は75億円の赤字。スーパーマーケット事業(ダイエー、マックスバリュ西日本など)の営業利益は25億円にとどまっている。

 営業収益ではSM事業が1兆6051億円、GMS事業がが1兆5304億円と1、2位を占める主力事業で、ここで収益性を高められれば利益構造も大きく変わる。一刻も早く収益性の高い事業構造に転換させることが求められる。

「GMSイオンの自力改革」と「IYの他力改革」

 そこで、イオンはまずGMSの再生に力を入れ、改革を進めているが、セブン&アイともども、GMSは依然として低迷から脱却し切れていない。ただ、打開策は極めて対照的だ。

 イオンは、「イオンリカー」や「イオンバイク」といった売場の専門化を進めて、さらに20年度まで「キッズリパブリック」「ホームコーディ」「グラムビューティーク」「iC(インナーカジュアル)」の4つを分社化。専門店として品揃えや売場づくりを深化させ、ユニクロ、ニトリなど有力専門店に浸食された住関連と衣料品のマーケットを奪い返そうとしている。

 比較的堅調な食品では、買ってすぐ食べる「ここdeデリ」を推進。ニーズが高まる即食ニーズの取り込みを図り、店舗スケールをダウンサイジングし、食品中心の小型店の展開で活路を見出す。

 イオンではこうした取り組みにより売場が活性化されつつあり、効果も出始めている。このまま収益に結び付けていければ再生も見えてくる。イオンの自力によるGMS改革が成功するか注視される。

 これに対し、IYは自力再生を事実上放棄し、外部の力を借りて事業の立て直しを図ろうとしている。

 収益性や将来性を精査し、全158店中103店舗はPM(プロパティマネジメント)を強化し、SC化することで館の魅力を高めることが可能と見ている。しかし、33店舗については自力での再生が難しいと考えており、グループ企業や外部の企業との連携を模索し、それでも難しければ閉店も検討するとしている。いずれにしても直営売場の大幅な縮小は避けられない。

 長きにわたって不振の主要因であった衣料品と住居用品にも大胆なメスが入れられることになり、対処療法ではなく抜本的な大手術が行われる。改革の大きな妨げになっている部門の縦割りの弊害を解消するため、昨年1月、ライフスタイル事業部に統合し縮減したものの、さらなる大幅縮減とMD改廃に着手する。

 自主MDからの大幅な撤退も視野に入れ、将来的には自主MDは半減。外部との連携を強めて、テナント化がより一層進み、衣食住の総合業態のGMSとしての「イトーヨーカードー」は解体され、事実上、食品にシフトしていく。

 また、これまで手を付けていなかった人員削減にも着手し、自然減を含み22年度末まで雇用移転を図り18年度末比で1700人削減。人員水準を抜本的に見直し、年齢別の要員構成の歪みも是正する。現状から約2割減ることになり、労働分配率は41.2%から35%に低下する。

 GMSと同じく低迷するSSの百貨店事業も契約社員も含めて約1300人減員する。転進支援、社外出向、社内配置転換で要員構造を適正化。本部の移転、縮小に伴う本部人員適正化と固定費削減で、約86億円の人件費圧縮を実現させる。

 店舗閉鎖も拍車がかかる。来年8月に「西武岡崎店」「西武大津店」「そごう西神店」「そごう徳島店」、21年2月には「そごう川口店」を閉鎖。「西武秋田店」と「西武福井店」も店舗面積を減縮させる(21年2月)。

 そして、首都圏へ経営資源集中を加速させていく中で「西武池袋本店」と「そごう横浜店」は、MDや売場に手を入れながら旗艦店として強化。「そごう千葉店」も唯一の地域の百貨店として役割を果たしていこうとしている。「西武所沢S.C.」と「西武東戸塚店」は、よりSC化を進めて生き残りを目指す。

 地方の大型店として収益面で課題を抱える「そごう広島店」、東急による大規模な再開発が進む渋谷で長年営業を続けてきた「西武渋谷店」、圧倒的に強い駅ビル「ルミネ」と対峙する「西武大宮店」は、今後、中長期的に見れば、百貨店としての存続できるか微妙なところである。

スーパーマーケットは再編統合、国際事業に期待

 スーパーマーケット事業も動きがある。IYで22店舗展開している「食品館」業態では、グループのヨークマートとの連携を強め、首都圏での事業展開をさらに進め、分社化し経営統合も視野に。これにより収益性の高いビジネスモデルの構築を目指しているが、現時点では競争力は十分とはいえず、さらなる改善が求められているといえるだろう。

 また、今夏登場した、今までのスーパーマーケットの既成概念からかけ離れた新業態「コンフォートマーケット」はチャレンジグな取り組みだが、意欲が空回りしているよう思え、実際苦戦を強いられている。

 一方で、日本一のスーパーマーケットチェーンとなったイオンだが、SM事業の営業利益率は2.6%と低収益構造から脱し切れていない。

 そこで、全国を6地域に分けて企業を統合を推進。中国・四国では今年3月、東海・中部では9月に実施し、北海道は来年3月、残る3エリアも最終合意に向けて調整中だ。これにより経営の効率化を図り、仕入れ、産地開発、ネット販売、デジタル、垂直統合などでシナジー効果を狙う。

 そして、コストをゼロから見直し。今のビジネス構造に対する危機感を共有し自己変革を行おうとしており、新たなビジネスモデルの構築につなげようとしている。

 このように国内事業は課題が多いが、両グループにおいて今後、伸び代があり、新たな成長ドライバーとして期待できるのが海外だ。

 イオンの国際事業の営業利益は11億円と、全体の営業利益の1.1%。だが、イオンモールではアセアンエリアでは投資回収が早まり、今後もアジアで開発計画が目白押し。事業の拡大が見込め、新たな収益源となることが期待される。

 2025年にはイオンモールの海外事業は営業利益350億円で営業利益率20%、70モール体制と現状の国内事業と同等の効率と規模を目指そうとしており、海外シフトが加速する。

 セブン&アイでは既に海外コンビニエンス事業は、営業利益ベースで全体の19.8%を占めているが、北米コンビニ市場におけるシェアは6%足らずで、事業拡大の余地が大きい。

 ファストフードの強化、PB開発、オペレーション力の向上、新店開発や既存店活性化など日本で培ったノウハウも活用し、現地のマーケットに合わせてローカライズ化。

 新業態の実験店「ラボ・ストア」も好調に推移しており、シェア拡大に向けた取り組みを強化している。さらに、デジタル戦略を推進、グローバル戦略も加速し、確かな成長軌道に乗せようとしている。

 人口減少で国内市場の伸びが見込めない中で、海外事業で成長を担保できるか、その成否が問われることになる。

巨大グループは新しい環境に対応できるか?

 リアルとネットがせめぎ合い、IT、AIの急速な進化が見込まれる中で、デジタル戦略も今後を大きく左右する。

 セブン&アイは、今年7月導入を開始したバーコード決済「7pay(セブンペイ)」が、不正利用され、サービス中止に追い込まれた。この痛手は大きいが、スマホアプリの開発、NTTデータなど異業種とのビッグデータ活用も進めており、今後も取り組みを一層強めていこうとしている。

 イオンは岡田元也社長がデジタルシフトに積極的で、2021年まで5000億円の巨費を投じ、取り組みを強めているが、国内では具体的な成果を上げられていないのが現状で、デジタル化に乗り遅れている。そこでデジタル化が日本より進んでいる中国で、新たなアプリの開発、顔認証レジの導入などを進めて、日本や東南アジアにも展開していく。

 いずれにしても、既存の発想を捨て、パラダイムシフト的転換が求められており、有用な人材を獲得できるかがカギ。外部企業との連携も必要となろう。

 こうして見てくると、イオンもセブン&アイも大きな曲がり角を迎えていることが分かる。巨体故に一気に瓦解するリスクを抱えながら、細胞を活性化。新たな息吹を吹き込み、自らリボーンし、有機的に結合するフレキシビリティあふれた生命体に変えていかなくては、未来は開けてこない。

 そのためには現状の問題を解決する因数分解と、新たな成長を担保する異次元の方程式が必要となる。