令和元年台風第19号の被害が連日報じられています。私の親戚も台風の被害に遭いました。被害に遭われた方には、心からお見舞い申し上げるとともに早期の復興を祈念いたします。

 今回は自然災害の中でも台風ということで、予測が直前になりがちな地震や津波とは違い、事前に進路予測について幾度も報道がなされました。そんな中、緊急・災害時に対する各企業の姿勢は二極化されているように感じました。

緊急・災害時の店の対応は二極化

 悲惨な災害を経験するたびに、多くの企業の意識は少しずつ前進していると感じます。以前なら見られなかった鉄道の計画運休、各種イベントの中止や延期発表が事前に発表されることで、各商業施設やショップも続くように臨時休業を発表しました。こうした事前の発表により、あらかじめ家での備えに時間を使えた人も多かったように思います。

 一方で、SNS上では「台風だけど出勤」と語るスタッフ個人の声もたくさん見受けられました。自分のバイト先や勤務先が休むのか営業するのか分からずやきもきする声に加え、twitterトレンドでは一時「#台風だけど出社させた企業」というハッシュタグが駆け巡りました。

 緊急・災害時でも必要とされる職業に従事する人ならまだしも、大半の企業は数日なら休んでも業務に大きな支障はないはずです。当然その日の売上げはなくなり仕事は滞りますが、緊急事態なのですから仕方のないことです。

 また現在の日本では、事前にある程度は備蓄しておける環境が整っています。食料はその日食べるものの分だけ、レトルト食品や衣服・肌着などの備蓄が全くないという人は、極めて少数派ではないでしょうか。

 緊急・災害時の企業姿勢は、通常より多くの人に見られています。家にいる人は情報収集をする傍らで、こういった報道や声を普段より目にしやすい環境にあるからです。実際に、「こんな緊急事態でも出勤を求められる企業があるのか……」と思ったのは、私だけではないはずです。企業の客離れやマイナスイメージが付くのはもちろん、今後の採用や離職率に影響しないとも言い切れません。

 もちろん災害規模が大きければ大きいほど困る人は出てくるので、スーパーマーケットやコンビニなどの店舗がインフラとして求められる可能性は高いです。ですが、真の緊急状態ではそもそも大規模な公的支援が必要とされるはずです。

 緊急・災害時に向けていち早くスタッフやお客さまのことを考え臨時休業を決断した企業と、今までの慣習に縛られてなかなか決断できなかった企業や営業を続けた企業とでは、価値観の違いも浮き彫りになったように思います。

何かあったとき、誰も生命の責任は取れない

 

 あらかじめ自然災害が分かっているのにもかかわらず店を営業することは、緊急・災害時に本当に求められている人の負担を増やすことにもつながります。

 けが人や被災者が出れば、それだけ行政や医療従事者の負担は増えます。本人のケアに時間がかかるのはもちろん、本当に必要な時にも店の営業ができなくなりかねません。個人が自分のために考えて適切な行動を取るのはもちろんですが、企業側もスタッフにそのような過酷な判断をさせることのないよう、できるだけ早く決断してほしいと思います。

 またホテルなど予約制の店では、今回に限ってキャンセル料を無くすなど、柔軟な対応を取るところも見受けられました。お客さま側からキャンセルの連絡はしにくい人もいるので、予約客にはあらかじめ店側から連絡して予約キャンセルの旨を伝え、早期の理解を得ると同時に自分たちの身を守ってほしいです。

 たとえお客さまが「近所だから来店できます」と言っても、来店中に危険に遭うリスク、そしてスタッフが出勤する負担を考えれば、丁寧に説明すれば営業を中止することを伝えても理解はしてもらえるように思います。

 流通・小売業は人々の生活を日々支える、とても大切な仕事です。でもむしろ自然災害が過ぎ去った後、平時の方がニーズが高い職業のはずです。ぜひ、緊急・災害時にはスタッフのことを考え、いち早く適切な対応を発表する企業・店が増えることを願っています。そして個人としても、緊急・災害時には安易な理由での来店はしないように社会を変えていくべきだと考えています。