「客数」とは何か?

 コンビニ(CVS)業界が既存店の来店客数の落ち込みに頭を悩ませている。6月28日に経済産業省が開催した第1回「新たなコンビニのあり方検討会」に提出された資料によると、少子高齢化が進む日本においてコンビニの店舗数は約5万5000軒にも増加しており、客数の減少を客単価の増加で補う状況となっている。

 コンビニのあり方については議論が進んでいるが、そもそも今後、コンビニの既存店が客数を増やすことは可能なのだろうか? 一般的に店舗における客数不調のマーケティング課題は以下3つのいずれかである。

1.商圏生活者の減少

2.店舗の非認知・未利用

3.顧客の離脱、来店頻度の減少

 既存店かつ個店向けの対策を想定すると、商圏が狭いコンビニで商圏を広げることは非常に難しく、出店地における認知率も開店から数カ月で頭打ちになることが通常である。未利用者に利用いただくためには、チラシやポスティングといった集客販促も考えられるが、販促コストに見合うかどうか。現実的かつ大掛かり過ぎない客数への施策を打つにあたって、最初に取り組みたいマーケティング課題は「顧客の離脱・来店頻度の減少」である。

※認識合わせとして、「客数」とは店舗が利用された回数、すなわち延べ利用人数であり、来店客1人を個客として捉える「顧客数」と同義ではないことを記しておく。

10%の顧客が「客数」の半分を占めている!

 では、コンビニの顧客の構造はどのようになっているのか? インテージが提供する全国5万人からなる消費者パネル SCIデータ(以降、SCI)を用いて、コンビニの顧客を分解してみる。以下は2018年9月から2019年8月の1年間において、コンビニを年1回以上利用した人を利用頻度で分解し、それぞれの顧客構成比、購入回数構成比、購入金額構成比を見るものである。

 

 週3回以上利用している顧客は全体の11%であるが、購入回数構成比では47%を占めており、顧客1人当たりが最大4~5%の客数に影響していると考えられる。

 また、週1回以上3回未満の中頻度利用者は顧客数と購入回数が昨年よりやや目減りしている。この中程度利用者の顧客構成比は23%で、34%の購入回数構成比に当たる。ということは、中頻度利用者は1人当たり1~1.5%ほどの全体客数に値しており、この層の離脱と頻度減少が、既存店の客数減に影響しているはずである。

 消えた客数はどこに行ってしまったのか? お客さまのお買物自体が減っていないのであれば、代わりに客足が伸びている競合や他業態があるはずである。再びインテージSCIにてコンビニ利用者のお財布シェアとそのシェアの前年差を確認し、流出先に目途をつけてみる。競合他社への流出入状況も確認するため、今回はセブン-イレブン利用者のお財布シェアと前年シェア差を見てみたい。

 
 

 お財布シェアとは顧客1人の財布のうち、自社がどの程度の金額を占めているのかを見るものである。業界トップのセブン-イレブンの利用者であっても競合他社を併用しており、9割以上のお買物でセブン-イレブン以外の購買先を選択しているようである。

 お財布シェアの前年差を見ると、もともとお財布シェアの高いスーパーやネットスーパーからはシェアが取れているものの、ドラッグストアや同業他社からは奪われているようである。

 ではどんな要因でドラッグストアや競合他社に利用が移っているのか? 顧客がコンビニに期待するイメージをインターネット調査にて全国1085人の生活者に聴取した。

 

 ここからは「便利な」「お手頃な」イメージをコンビニに期待していることが分かる。これらに対する期待は月1回以上月3回未満といった低頻度顧客層ほど大きい。

 では、実際に各企業は期待するイメージに応えられているのか? 下記はセブン-イレブン利用頻度別の利用者の企業イメージである。

 

「便利な」「気軽な」は軒並み低めであり、高頻度利用者で見れば「お手頃な」というイメージが特に低い。一方、「おいしい」「好きなものがある」「なじみのある」というイメージは高頻度利用者が高く、来店動機につながっていることが推測できる。

 ローソンの企業イメージも確認してみよう。ローソンではセブン-イレブンとは逆に高頻度利用者の方が「お手頃な」イメージが高い結果となっている。「おいしい」「好きなものがある」に関しては高頻度利用者ほどイメージが高いという傾向は見られない。

 

 これらのことから、セブン-イレブンでは「おいしい」「好きなものがある」「なじみのある」といった店舗イメージを持っている顧客ほど高頻度に利用しているが、生活者の店舗選択基準が「お手頃な」に変化すると利用頻度が伸び悩むのではと考えられる。ローソンでは高頻度利用者が「おいしい」「好きなものある」というイメージを持ち始めると、少なくともセブン-イレブンからは客数奪取の可能性がありそうである。

自店を利用してもらいたいタイミングで一番に想起されることが大事

 それではお客さまはどれくらい意思を持って「あなたのお店」を選んでいるのだろうか? 相対的に見てどのコンビニをどの程度利用したいと思っているのか、配分法と呼ばれる手法で測ってみる。先と同じインターネット調査にて「距離に差がない場合、あなたはどのコンビニを利用したいと思いますか?」と対象者に聞き、持ち点10点を「セブン-イレブン」「ローソン」「ファミリーマート」「その他コンビニ」に割り振ってもらった。この点数の配分比率をそのブランドを利用したい気持ちの強さ(マインドシェア)に置き換えて確認していく。

 

 客数の半分を支えている高頻度利用者は、どのコンビニでもマインドシェアが高いものの、中~低頻度利用者となると各社他競合に逆転されるケースも見られる。ファミリーマートを見ると、利用が週3回未満のお客さまからマインドシェアが低くなっているため、今利用しているお客さまが、意思を持って次回も自店を選んでくれるような固定客を増やす取り組みがより一層重要である。

 店舗飽和時代の客数対策とは、チラシや販促でやたらに顧客の幅を増やすことと同義ではなく、今いるお客さまの購買行動を、どこよりも深く理解することである。また、ブランドイメージを理解し、店舗を使ってほしいタイミングで一番に想起されることが重要である。

 自店と顧客の関係を深く理解できるのであれば、商売を続ける上で不要な顧客のニーズは断捨離しても良い。客数を増やす上で大切なことは、顧客に自店を利用してもらいたいタイミングはいつなのか、顧客が必要性を感じた時に自店を一番に想起してもらうには、どう訴求したらよいかを理解していて、それらを今利用している身近な顧客と共有していくことではないだろうか。