観光地「函館ベイエリア」の観光客の流れを変えた「マリーナ末広店」

Point

  • 【店舗】リロケーションで大型化

  • 【情報発信】店内に撮影ポイントを多く設ける

  • 【商品】観光客に100アイテムのお土産を開発

観光エリアに出店した店が人の流れを変える

 2012年9月「峠下総本店」のオープンに続いて、17号店としてオープンしたのが15年4月の「マリーナ末広店」。創業の店から徒歩2分の場所にあり、遊覧船の桟橋の上につくられていて8割が海の上に浮いている。200坪154席で、ここもゆったりとしている。

 同店がある一帯は、函館ベイエリアという観光地だ。ここを訪れる観光客のほぼ100%は同店の前を通ることになり、人の流れが大きく変わった。同店のお客さまの95%は観光客で昨年は29万人が訪れた。このように同店は観光ポイントの中心にあることから、観光客にとってのラッピの認知度を格段に上げることにつながった。

「港北大店」は2号店だが、2018年11月、近隣に広い土地を確保してリロケートし大型化した

 最新店は18年11月にオープンした「港北大店」。フェリーの埠頭から車で1分、北海道大学水産学部の前にある。同店は元々ラッピの2号店で30席で営業していたが、近隣に土地を確保して200坪111席の店舗にした。「エルビス・プレスリーが青春だった」をテーマに、撮影スポットも数多く設けた。

「港北大店」のテーマは「エルビス・プレスリーが青春だった」

 新店の店内に撮影ポイントを多く設けたことで、次々とSNSで情報が発信されていく。ラッピでは今日のようなSNS時代となる前から「店内撮影禁止」にはしていなかった。このような情報価値に対しての先見の明が、今日の発信力につながっている。

 これと同様のリロケーション事例には「函館駅前店」も挙げられる。同店は函館のランドマークとして150年間親しまれた百貨店「棒二森屋」の中で営業していたが、その取り壊しに伴い、函館朝市の目の前の物件に移動してこの10月末にオープンする。こちらは旧30席に対して70席となる。

 このようにラッピでは、新規出店およびリロケーションに際して店舗の大型化を推進している。これはフードコートとファミリーレストランを融合した形のオペレーションを考え出して可能になった。お客さまはカウンターで注文をして座席の番号を伝える。配膳の担当者が出来上がった商品をお客さまのテーブルに持ってくる。食事を終えたお客さまはセルフで下げ膳のコーナーに持っていく。このような仕組みだ。

 現状、駐車場のない店舗は、駐車場のスペースが取れる場所にリロケーションして店を大型化し、観光客にさらに広域の店舗で利用してもらうことを想定している。

「観光客が函館にやってくると、一食は海の幸、もう一食はラッピというパターンが定着してきました。函館市民も友人が函館を訪ねてやってくると、ラッピに連れて行こうと思うようになってきているようです」(王未来社長)

 GLAYのJIRO氏はラッピを「俺たちのソウルフード」と例えたが、今や「函館のアイデンティティ」と言って過言ではないだろう。

オリジナルの土産品を育てて客単価アップ

「ラッキーガラナ」からスタートした土産品は今や100アイテムとなり、ラッピの客単価を上昇させている

 店舗の大型化に伴って実績を上げてきているのは「土産品」である。これは12年に商品化した炭酸飲料「ラッキーガラナ」に始まるが、5年前あたりより実績がついてきた。現在は100アイテムになっていて、通販でも販売している。

 ラッピは函館以外に出店しないことを信条としているが、北海道の物産展にも出店しない方針である。しかしながら、その主催者の方でラッピの土産品を扱うようになった。このメーカーのほとんどが北海道の企業である。

 王未来社長はこう語る。

「お土産品を開発するようになったのは、観光のお客さまはラッピのハンバーガーを持って帰ることができない、ということがポイントとなりました。それが今、受け入れられるようになって客単価アップをもたらしています」

 これらの中からヒット商品が生まれている。小学生向けに開発したメモ帳やクリアファイルがよく売れていて、マスキングテープは昨年1万4000個を販売した。

 Tシャツも人気商品で、定番は白、黒、緑の3種類。これに加えて夏に限定2色を新しく加える。これによって通販や電話で購入の申し込みが入ってくる。こうして昨年は1万7000着を販売した。地元のアパレル関係者から「ラッピさんは、おそらく函館で一番Tシャツを売っている」といわれている。

 先に述べたラッピの大型店には、広いスペースの土産品コーナーが併設されている。ラッピの中でも特に観光客の多い店では土産品の売上構成比が高くなっている。

ラッピの人気ナンバーワンは「チャイニーズチキンバーガー」350円

 ハンバーガーの包み紙をはじめ、土産品の裏側には全て函館の歴史や魅力を伝える文言が掲載されている。ラッピが「函館以外に出店しない」ことで、これらの商品に掲載された函館の情報がより深くお客さまに伝わることになる。

 ラッピはハンバーガーレストランと紹介されるが、実際に売られている商品はハンバーガーだけではない。人気ナンバーワンは「チャイニーズチキンバーガー」350円(税別、以下同)だが、「カレー」420円、「オムライス」630円、「かつ丼」490円、「ハンバーグステーキ」470円、「ダブルチーズピザ」680円、そして「焼きそば」390円もある。これらにトッピングが施されてメニューは140アイテムとなっている。

「トンカツカレー」750円。ご飯が290gであるからルーのボリュームがお分かりいただけるだろう

 この数は膨大であるが、ハンバーガー以外にはトッピングとしてハンバーガーと同じフードが使用されることからオペレーションには支障がない。また単品のボリュームが大きい。カレーのライスは290gでルーはそれを完食しても余りあるほどだ。原価率は30%を優に超えていると思われるが、このお値打ち感と豊富なバラエティがリピーター獲得をもたらす。

地元の生産者との交流を深めている

 食材の85%は地元産である。主要食材の鶏肉は屠畜してから4時間以内のものを使用している。これらの1次加工は本部1階のセントラルキッチン(=カリナリー)で行われ、ハンバーグは手ごね、チキンは手切りという具合に手づくりにこだわっている。大手が行わない部分を行うことで差別化をしている。