大手小売企業の店舗閉鎖やリストラが相次いで発表されています。セブン&アイ・ホールディングスではコンビニの「セブン-イレブン」を約1000店舗閉店・移転、百貨店のそごう・西武では5店舗の閉店と2店舗の売場面積の縮小を発表しています。またアパレルのオンワードホールディングスでは、ハイブランドのセレクトショップ「オープニングセレモニー」など不採算事業からの撤退や約600店舗の閉鎖が決まっています。

 直接の関係者はもちろん不安でしょうし、同じ業界で働く人も明日はわが身かと戦々恐々としている人は多いと思います。今回は、そういった人たちに向けて似たような経験をした私の実体験と考えていることを書きます。

ネガティブニュースは、突然やってくる

 

 私は代休を使って自宅で休んでいる際に、自分が当時勤めていた会社が倒産したことをニュースで知りました。倒産することは、私の所属部署の部門長も知らなかったそうです。

 リストラなどのネガティブな話は、一部の上層部間で進められることがほとんどです。責任者である部門長ですらそうなのですから、ましてや一般社員は決定後に外部から知らされることも少なくありません。

 さすがに会社の倒産に立ち会う経験のある人は少数派でしょうが、リストラや事業縮小は本当に何の前触れもなく、突然やってきます。そもそも永劫続く会社はほんの一握りです。だからといって全員がフリーランス転向や複業を考えるのではなく、もし万が一会社に何かあっても、すぐに別の会社で働けるくらいのスキルを持つべきだと私は思っています。

 人生で働く期間が長くなり、定年の概念も崩れてきている今、将来がどうなるのか不安になっている人はたくさんいると思います。でも、会社がどうなるのかなんて先のことは誰にも分かりません。この連載のタイトルのように「先の見えない不安」に怯えるのではなく、「今の自分」にスポットを当ててほしいと思っています。

仕事で求められる2つのスキル

 

 過去に創業100年を超える老舗企業と設立10年程度のベンチャー企業の2社で働いたことがありますが、両社で求められるスキルは全く違いました。老舗企業では会議で十分に議論を重ね、一番良いとされる方針に取り組むのが基本でしたが、ベンチャー企業では自分で良いと思った案はすぐにどんどん始めていいという形でした。どちらが良い悪いではなく、カルチャーが違ったのです。

 その上で気付いたのですが、会社には求められるスキルの種類が2つあります。会社内でだけ通用する仕事と、会社外でも通用する仕事です。

 例えば各種手続きの仕方や社内用語などは「会社内でだけ通用する仕事」に当たります。新卒からずっと同じ会社で働いている人には分かりにくいかもしれませんが、会社内でだけ通用する仕事は想像以上にたくさんあります。業界内での仕事自体は同じでも、用語や社内都合で独特の手続きがあることは珍しくありません。

 また上司を呼ぶときに役職で呼ぶか「さん」付けか、コミュニケーションツールが直接会話かメールかチャットかなど、会社によって仕事の進め方は驚くほど違います。ツールが違えば、当然仕事に求められるスピードや基準も異なってくることは知っておいた方がいいと思います。

 逆に、業界のニュース取得方法やコミュニケーション能力を高めることは後者に当たります。他社でも通用するスキルというと何だかすごく高度な技術を身につけなければいけない気がしますが、身近なところでいえばあいさつや報告ができることも立派なスキルだと私は思っています。普通に働いているだけでも、他社でも生かせる能力はたくさん身につきます。

会社外で通用するスキルは意識的に伸ばす

 

 もちろんどちらのスキルも会社にいる間は、働き続ける上では必要です。ただ、普通に働いていると前者のスキルを伸ばすことだけに気を取られてしまいがちです。「これは他社でも通用する仕事かな?」「転職の面接で語れるエピソードかな?」というのは、時折自問してもいいように思います。

 1社が存在し続けるよりも個人が働く期間の方がずっと長いと考えれば、必要なのは他社でも通用するスキルを働きながら身につけていくことです。勤務歴の長さ自体は、あまり関係ないと思っています。勤務歴が短くても目の前の仕事に真剣に、主体的に取り組んでいれば、たとえ数字や結果があまり思わしいものではなかったとしても、身につく成果はたくさんあるはずだからです。

 1社しか経験のない人は、友人の働き方に目を向けるなどして情報交換しながら「どこでも求められるスキル」にも敏感になっていた方が良いです。自分の働く会社で今強く求められているスキルが、他社でも同様に求められているとは限りません。

 流通・小売業は成熟産業で、今まさに変革期にあります。でも今までがそうであったように、今後も新しいビジネスが次々生まれていくはずです。そうなったとき、今の職場が続くのか悩むのではなく、自分が働き続けるためにどんな風に働いていけばいいのかに、もっと重きを置いてほしいと願っています。