新宿歌舞伎町の「磯丸水産」は外国人観光客でごった返す。

 居酒屋を取り巻く環境は厳しさを増している。少子高齢化(客数減)、人手不足(人件費の高騰)、若者のアルコール離れ(客単価減)など、業界の風はアゲインストだ。

 かつて一世を風靡したチェーン居酒屋は影を潜め、市場はコンビニなど他業態に侵食されて縮小傾向にある。今回は、そうしたマイナス要因を跳ね返し、成長を続けるチェーンに焦点を定め、居酒屋業界の「今」を、解説したい。

チェーンストアの原理原則は健在

 “ターゲットを明確にせよ” とか “こだわりの一品をつくれ” とか、尖がったコンセプトを指南する開業コンサルタントも中にはいる。けれど、“都心に集まる高感度な女性客”とか、 “高級食材を用いたサプライズ料理” とか言っているうちは、居酒屋を事業展開する道は遠い。日本の人口が減っているのだから、老若男女問わず楽しめる店にする。客層を選ばず、年金生活者も懐の寂しいおじさんも、ターゲットにして取り込んでいく。今、成長している居酒屋チェーンは、客層が広く、価格帯は(低価格寄りに)狭いのだ。

 次に人手不足。技術を持つ職人さんは不足し、元気で気の利く学生は減った。そもそも人が集まらない。「人手に頼らない」店づくりを意識したところが生き残っている。

 最後に、若者のアルコール離れ。新入社員とコミュニケーションを取りたい上司は、“今日、ご飯でも食べて帰らない?” と誘うが、“今日、ちょっと飲んで帰らない?”  とは、もう言わない。居酒屋とはいえ、酒をメインとし、つまみは酒を邪魔しない程度では、集客はできないのだ。

無店エリアで成長競う「串カツ」

初期投資を2500万円に抑えて投資回収を早める。

「串カツ田中」は、首都圏中心に160店舗(直営69、FC 91、2017年10月末)。1号店は2008年12月。成長著しいチェーンである。

 客単価2600円(推定)。1串100円、120円をボリュームに上は150円、200円、他に一品メニュー、締めはうどんだ。

左からカキ(200円)、玉ネギ(100円)、レンコン(100円)、紅ショウガ(120円)。いずれも税抜き。

 同社の決算説明資料によると、住宅立地の中心客層は「近隣のお子様連れのご家族(食堂利用)」、オフィス街は「仕事帰りの方や学生(居酒屋利用)」、地方のロードサイドは「お子様連れのご家族(ファミレス)」と説明する。お子様から仕事帰りのおじさんまで、間口の広さをアピールする。

 1串の価格が低く絞られているので、回転寿司の皿数と同様、ファミリーにとって安心して利用できる。食堂やファミレスのような利用動機に拡大していく戦略である。

 オペレーションも簡素化されている、あらかじめ串打ちされた食材に、衣を付けて揚げるだけ。メニューの大半は串カツなので熟練した職人は不要である。FC展開が主体なので短期間の教育により「誰でもできる」が前提である。

 同時期にスタートした「串カツでんがな」(FC主体に86店舗、経営は宅配ピザのピザーラを運営するフォーシーズ)。1串115円を中心に客単価は2400円(推定)。一時は「串カツ田中」より店舗数で優位に立っていたが、今はダブルスコアで引き離されている(ただし、出店の速度はチェーン本部の方針によるもので勝敗を競うものではない)。

 ちなみに、筆者が「串カツでんがな」でお客として店の従業員に聞いたところ、「野菜は店内で切って串打ちしている。だから、みずみずしくて、おいしい」と胸を張っていた。その手間暇が出店速度に影響を与えているのかもしれない。

 串カツが本場の関西地方を除けば、同業種の出店余地は広大である。大阪で修業した職人による生業店は全国にあるが、近代的なチェーン展開は始まったばかりである。「串カツ田中」にとって、「串カツでんがな」は今後、激しく競合する局面が見られるかもしれない。