ネットショップには、たくさんの商品が並んでいます。その一方でリアル店舗はスペースの関係上、厳選された商品ばかりが並んでいる……はずですが、私は最近、リアル店舗で商品に魅力を感じにくくなっている自分に気付きました。

 これまでは、「現場の人手不足故に商品の魅力を伝えられる人が減った」ことが大きな原因だと考えていましたが、他にも弱い点が思い当たりました。リアル店舗は売場が完成させられているが故に、商品の背景が見えにくいのです。

途中の工程も商品の一部

 

 私がこの重要性に初めて気付いたのは、料理のレシピ本を探していた時でした。当時の私は、自炊をこれから本格的に始めようという立場。インターネット動画では料理中にぬれた手で電子機器の操作がしにくいため、開いたままにできる紙の本が欲しかったのです。

 ところが買ってきた初心者向けのレシピ本を見ていざ作ろうとすると、「難易度が高い……!」と感じてしまいました。3工程で作れる分かりやすいレシピ本を選んだつもりだったのですが、写真が使われているのは出来上がりの写真のみ。材料や手順は全て文字で書いてありました。

 いざ作る際に「いちょう切り」「ささがき」と文字で書いてあるだけでは、どんな切り方なのか毎回調べなければ分かりません。「〇〇適量」と書いてあっても、料理初心者ではいったいどれくらいが適切なのか分かりにくかったのです。

 また以前、雑誌でかわいいストールの巻き方の撮影に立ち会ったことがあります。無意識に普段やっている巻き方を複数の工程に分けてカットを撮影するのは難しく、撮影角度などとても苦労しました。しかし出来上がったページを見ると、文字だけで解説されたものより断然再現しやすかったのです。

商品単体では、魅力は伝わりにくい

 

 商品は、美しい状態で見せることが最も大切だと考えられています。だから私たちは売場の商品をきれいにディスプレーするし、メニューの写真にはできるだけ良く盛り付けた写真を使います。

 しかし初めてその商品を知ったお客さまは、完成形を目にしただけで商品の素晴らしさを全て理解できるでしょうか? 作られた背景、試行錯誤した回数、携わった職人など、商品の背景を知ることで、その商品の見方が変わり、良く思えてくることも少なくないのではないでしょうか。

「おいしそう」「欲しい」「私にもできそう」など感情を動かすのは、本来ならばとても大変なことです。体験を価値とする「コト消費」の存在感が増し、モノの購入にも意味を求めるようになってきた消費者たちの心を動かすには、モノ自身の魅力をあらゆる角度から伝えていく必要があります。そうしたひと手間、ひと工夫を惜しまない姿勢こそがお客さまに信頼され、ひいては売上げにつながっていくのだと私は思います。

初心者目線はお客さまにも優しい

 

 ただ商品を並べているだけでも購入できるのはその商品に詳しい人、いわばリピーターだけです。お店は、リピーターだけのものではありません。一定数の新規客が来なければ、店は閉ざされた空間になり、やがて衰退します。

 新規客を取り入れるには、できるだけかみ砕いて商品に興味を持たせる工夫が大切です。「人による説明=接客」がしにくいのなら、それ以外の部分で情報を補っていく必要があります。

 例えば飲食店で、素材にこだわりがある店なら原産地の情報を表記する、単なる「サラダ」ではなく「店長の気まぐれサラダ」と興味が持てる表現に変えるなど、お金をかけなくてもすぐにできることはたくさんあります。

 アパレルなら「このトップスはいろいろと着こなせます」と言う前に実際の着こなしパターンを何種類か掲示しておく、オフィスやフェスなど着ていくシーンを提案する、色で季節を感じさせてあげるなど、商品を手に取りやすくするのです。

 人手不足で来店者全員に思うように接客ができなければ、人以外の商品やメニューに接客してもらうのです。実際に売れている店ほどこうした気配りは顕著で、声掛けや接客もスムーズに行われているように感じます。

 ネットショッピングはとても便利で、商品も価格帯も豊富に用意されています。ただ初心者にとっては、豊富な情報量の中からお気に入りの商品を見つけ出すのは至難の技です。全体の商品数が限られているリアル店舗だからこそできる見せ方は、本当はもっともっとたくさんあるはずです。

 業界歴が長くなればなるほど、私たちは初めての頃の気持ちを忘れてしまいます。皆さんが働き始めた際に違和感を感じたことは、初めて来店するお客さまも違和感を感じることです。初心の気持ちを忘れず、今一度自分の店内を見回してみてください。