1回目は、「オムニチャネル」です。皆さん、「オムニチャネル」という言葉を一度は聞いたことがありますか?

 この言葉は、2001年に米国の老舗百貨店のメイシーズが提唱した新しい流通概念です。米国では、メイシーズに追随し、GMSのウォルマート、ドラッグストアのウォルグリーン、ネット流通企業のアマゾン等がオムニチャネル化に果敢に挑戦しています。先日、アマゾンがスーパーマーケットのホールフーズ・マーケットを買収したのも、オムニチャネル化の一連の流れだと推察されます。

 日本でも、専門店の良品計画、東急ハンズ、ヨドバシカメラ、カメラのキタムラ等がオムニチャネル化に積極的です。日本を代表する流通コングロマリットのセブン&アイ・ホールディングス(HD)も2015年11月にセブン-イレブン・ジャパンを核とし、イトーヨーカ堂、そごう・西武、ヨークベニマル、ロフト、赤ちゃん本舗等のグループ企業(多業態)の力を結集し、「Omni7」をスタートさせました。Omni7をスタートさせる2年前からオムニチャネルの概念、お客さまにとってのメリット等を店舗従業員が理解するために、トレーニングを繰り返し実施してきたそうです。前CEOの鈴木敏文氏は、「次の小売イノベーションは、オムニチャネルである。」と述べていました。オムニチャネルは、まさに今後の社運を賭けた戦いの位置付けでした。今もセブン&アイ・HDにおいては、その本質的位置付けは変わっていないとのことです。

「リアルとネットの融合」では、十分には理解できない!

 ここで、オムニチャネルを理解する上で、オムニチャネルの定義を理解しましょう。日本のオムニチャネル研究の第一人者、小樽商科大学の近藤公彦教授は、「オムニチャネルとは、全て(オムニ)のチャネルを統合し、消費者にシームレスな買物を提供する顧客戦略である」と定義付けています。最近、「オムニチャネル=リアル(店舗)とネットの融合」と書いている新聞、雑誌記事等をよく見掛けますが、その理解だけでは不十分です。

 オムニチャネルを理解するための第一歩は、「顧客視点」を持つことなのです。スマートフォンの普及により、消費者は既にオムニチャネラー化しています。その点を踏まえ、企業は顧客視点に基づき、自社のマーケティング戦略、組織をオムニチャネル化に対応しなければいけないのです。

 その際、重要なことが4つあります。それは、①「仕組み(SCM)」、②「(顧客価値を共創する)店頭マーケティング」、③「場(コミュニティ)概念」、④「デジタル(スマートフォン、アプリ、SNS)」を統合的に捉える視点(IMC)です。

 もう一つ、オムニチャネル化を図る上で、忘れてはいけない視点があります。それは、「従業員の意識を企業視点から顧客視点に変える」ことです。このような取り組みは、マーケティング研究上、「インターナルマーケティング」と呼びます。このインターナルマーケティングの巧拙が、オムニチャネル戦略の成否に大きく関わると言われています。

 

(近藤2017を中見2017、一部修正)

 最後に、オムニチャネルは、日本型と米国型では異なる点も紹介しておきましょう(図1)。また、企業の出自(リアル店舗かネットか、業態の違い、本部主導型か価値共創型か等)によっても違います。自社にとって、どのようなオムニチャネル化を目指すかは、それぞれの企業によって違うのです。故に、オムニチャネルを実現する際には、マーケティングにおける「ポジショニング=企業のマーケティング戦略上の立ち位置」の概念が重要なのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)