「イメージサーチ」は中国のアリババグループが独自に開発した画像検索エンジン(写真右の「淘宝」などで使われている)で、日本の小売企業ではニトリホールディングスが最初に導入した(写真左)。写真中央がSBクラウドの三苫周平氏。

 撮影した写真などから同一商品や類似商品を画像検索できる「Image Search(イメージサーチ)」。これは中国のアリババグループが独自に開発した画像検索エンジンで、中国最大級のBtoCオンラインショッピングモール「天猫(Tmall)」やCtoCマーケットプレイス「淘宝(タオバオ)」などで使われているもの。

 中国ではアリババクラウド(アリババグループのECサービスを支えるクラウドコンピューティングサービス部門)が展開するが、日本ではSBクラウド(2016年設立のソフトバンクとアリババグループの合弁会社)がサービスを担っている。

 19年7月から日本での提供を開始した「イメージサーチ」。ニトリホールディングスが先陣を切って導入に踏み切ったわけだが、その活用を見ると、多くの小売企業が悩む課題解決につながる取り組みになっている。

「多過ぎて検索し切れない」の解決から開発

「イメージサーチ」には優れた点が幾つかあるが、その中で特筆すべきは「精度の高い画像検索」と「検索リクエストに対するレスポンスの速さ」。それは、この開発のきっかけと関係している。

 アリババグループのECモールなどは出店する店舗も、そこで紹介される商品も膨大で、消費者が欲しい商品を検索し切れないという状況があったが、それを改善するため、「イメージサーチ」は開発された。その際、テキスト検索ではなく、画像で欲しい商品を簡単に検索できるものにし、中国では2014年に運用をスタートしている。

 

「日本では新しい技術やシステムは、しっかり作り込んでから実用化しますが、中国はある程度、出来上がった段階で使い始め、使いながら改善していきます。イメージサーチも、そうして完成度を高めてきました」と、SBクラウド 営業技術統括部 パートナー推進室 室長補佐の三苫周平氏。

 類似の検索機能は他社でも展開しているが、精度でもスピードでもアリババグループが群を抜いている。それはアリババクラウドはクラウドプロバイダーのシェアでは世界第3位※1だが、そのスケールが驚異的だからだ。

 中国のイベントである11月11日の「独身の日」は、アリババグループがオンラインショップで買物をする日としてバーゲンを実施して盛り上げたことから、中国では皆、こぞってECで買物をする日になったが、2018年の「独身の日」の「天猫」の取扱高は1日で2135億元(日本円で3.5兆円)。楽天グループの日本国内における2018年の年間取扱高が3.4兆円なので、1日でこの金額を上回る。

 この日のピーク時のトランザクション(検索から始まる一連の処理)は1秒間で149.1万回、総数では10.42億件になる※2。アリババグループの情報インフラは、このスピードと容量に対応するように構築され、桁外れの処理能力を持っているのだ。

※1ガートナー(Gartner)の2018年6月のレポートより。※2中国の人口は約14億人。その中でアリババグループの小売プラットフォームは7億人前後のアクティブユーザーを持ち、平常時でのトランザクションも桁外れに多い。

機械学習とディープラーニングでどんどん進化

「イメージサーチ」の使い方は簡単だ。

 スマホで「イメージサーチ」のアプリを起動し、そのカメラ機能で欲しいものを撮影、アップロードすればよい。自分や知人の所持品、店舗や街で見付けた商品等を撮影した画像の他、スマホ等のホルダー内に保存された画像やスクリーンショットでも検索可能だ。

 写真にさまざまなものが写っていても、特定のものにカーソルを合わせて切り取るクロッピング機能があるので、欲しいものだけにフォーカスをし、検索することもできる。

 こうした画像をアップロードすると、「イメージサーチ」が瞬時に、同一商品や類似の商品をモール内から見付け出して表示するわけだが、そこからさらに色や柄、形状などをキーワードに、カテゴリーを横断した検索も可能(例えば、同じ柄の別カテゴリーの商品もすぐに検索してくれる)。そして、気に入った商品が見つかれば、そのまま購入できる。

 実際に三苫氏が、「淘宝」のアプリを使って、パソコンのマウスを撮影して検索してみせてくれたが、中国の「淘宝」のサイトにアクセスしているにもかかわらず、間髪を入れず類似の商品が幾つも表示された。

 

 それを可能にしているのが、AIの機械学習とディープラーニングだ。「AIが画像を認識するには、2つのフィルターがあります。1つは、画像のカテゴリーを認識するフィルター、もう1つは色や形状を認識するフィルターです。カテゴリーの識別にはデータサイエンス等も使って、人間が定義付けをしてラベルを付与していきます。AIはそれをもとに自動的に学習を繰り返します。アリババにはサービスを開始してからの5年間の学習で蓄積されたアルゴリズムがあり、精度もスピードもどんどん高まり、画像に近い商品を瞬時に判断して、膨大な商品の中から選び出せるのです」と三苫氏。

「淘宝」では、「イメージサーチ」導入後、コンバージョン率(オンラインストアの訪問者で取引に至った人の割合)が15%向上するという実績を上げている。