パルグループでは、希望する従業員に向けの効果的なインスタグラムの使い方講座(原稿執筆、撮影)を開講、フォロワーの多いインスタグラマーを社内で表彰するなどその戦力化に積極化だ。店頭の支持も強い。

読者モデルはなぜ集団で登場するか

「読モ」はメディアの研究者にとっても興味深い対象だった。女性ファッション誌の学術研究からは、「人物を設定し学生やOLの生活になぞらえた着こなし企画(通勤着、買物、旅行)が主流であること」「読モはグループでの誌面登場が多いこと」が指摘されている。

 前者については、読モの方が圧倒的にリアリティのある誌面を構成できることは十分予想できる。仮に「日本女子大のファッション」「三井物産OLのコーディネート」など具体性を帯びた誌面企画だと、有名な専業モデルでは逆に説得力に欠ける。後者については、読者の選択肢を増やすメリットがある。読者の体型が多様であり、選択肢が多ければ当然自分に近い体型の読モを探す出せる確率も上がる。

図表① 各メディアが日経新聞各紙で報道された件数の推移

「読モ」が雑誌に登場し始めた時期は、明確ではない。図表①では、初出はカリスマ販売員よりも古い。「カリスマ販売員」「インスタグラマー」がある時期、突然登場したのは大きく異なる。「読モ」と呼ばないが、ファッション感度の高い通行人を撮影した「街角スナップ」も意味的には読モに近いと解釈できる。

 読モは、ファッション購入に必要な3種の情報のうち、C:マッチングについては、販売員ほど有益な情報をもたらさない。自分と似た体型の読モから類推するといっても、従来の「雑誌を見て買う行為」の範疇を出ない。

 この頃から、接客で得られるさまざまな情報やリアル店舗での購入自体に、従来ほど価値が認められなくなったように思う。例えば、ECのファッションモール「ZOZOTOWN」がオープンしたのは2004年である。04年3月期に12億円4000万円だった売上高は、早くも10年3月期は171億6000万円と10倍以上に伸びた(ちなみに19年3月期は3231億2900万円)。接客が不要なら、便利なネット通販に移行するのは必然である。

インスタグラマーは情報の受け手兼送り手

 周知のように、SNSによって情報を発信し、消費などさまざまな面で影響を及ぼす人をインフルエンサーと呼ぶ。複数のSNSが運営されているが、ファッションのメディアとしては、写真を中心に情報発信できる「インスタグラム」が最も多用されている。「インスタグラム」の年齢別ユーザー推移を見れば、ファッションに関心の高い若年層の伸びが著しく、これは図表①の「インスタグラマー」の伸びと近い動きを見せる。

「インフルエンサー」のうち「インスタグラム」を活用する層を「インスタグラマー」と呼ぶ。カリスマ販売員、読モと決定的に異なるのは、自らコンテンツとなり情報発信できる点にある。カリスマ販売員、読モともにメディアであるが、雑誌などマスメディアなしでは、情報発信、拡散できなかった。情報自体も、作り手(メーカー)や売り手(店舗)など企業の意思である。これに対してインスタグラマーは、個人のあるがままの体(服装、メイク、髪型)を、個人の判断のみによって発信できる(後述のように企業従業者の販促業務としての発信もある)。

売り手からの情報よりお客同志の情報交換

 さらに、インフルエンサーは情報の送り手であると同時で受け手でもある。インフルエンサーの多くが一般消費者であることを想起すれば、理解は容易だろう。購買に必要な情報を、消費者同士で交換するイメージはSNSの真骨頂ともいえる。

 ここに至ってファッション雑誌の役割は消滅する。発信する本人にオリジナルの意識はなく、閲覧する方もその意識はなく情報は無造作に拡散される。オリジナルとコピーの区別は存在しない「シュミラクル」な状態である。数万人のフォロワーを集めるインスタグラマーでさえ、憧れの対象ではあっても金銭授受や情報授受など上下関係を伴わない。

 昨今では、企業もインスタグラマーの活用に覚醒した。具体的には、フォロワーの多いインスタグラマーを社員として積極的に採用する、社員にインスタグラムの教育を施し情報発信を促す、ファロワー数に応じて給与に手当を上乗せする、表彰する、報奨金を出す例も見られる。それでも、大多数は一般消費者である。

新たなメディアだけでなく、既存メディアにもヒント

 以上、わずか20年の間に、若年層婦人服の購買に影響を及ぼすメデイアが大きく変容した様子を概観した。

 ところで、メディア研究では人類のメディアの歴史を、大きく3ないしは4段階に分類する(図表②)。第一段階は対面状態、口述による意味の伝達、第二段階は時間や距離のある状態での文字による意味の伝達(「文字」と「印刷」を区別すると、合計4段階)、最初の絵文字発明は紀元前約3200年といわれる。文字があれば記憶に頼らず、伝達できる情報量が増える。活字印刷による聖書の大量配布がなければ、15世紀の宗教改革もなかった。第四段階、インスタグラマーは19世紀末の電信、20世紀のテレビやインターネットの開発に相当する。

図表② メディアの変容との照合

 ここで、これまで紹介したファッションメディアの変遷を、メディアの4段階(3段階)の変遷と照会してみたい。カリスマ販売員は音声伝達、読モは雑誌すなわち文字と印刷による伝達、インスタグラムは電子メディアと置き変えてみる。すると人類有史以来のメディアの変遷と酷似していることが読み取れよう。

 ただ、カリスマ販売員、インスタグラマーは「メディアの開発」だが、読モは既存メディアの延長と解釈できる。ならば、既存メディアでも、筆者はそれを特定できないが、その見直しや採用によって大きな効果が十分に期待できることは十分考えられよう。

 例えば、人でないため本稿では取り上げなかった「東京ガールズコレクション」。イベントという伝統的なメディアながら、「会場で商品発注できる」など新機軸を打ち出し、地方会場へも拡散している(さすがに昨今は一時期ほどの経済効果は期待できない)。

 もっとも、令和に入ってからも電子のメディアによる交換の第4段階は現在なお進行中である。ファッションが電子メディアを続く人類の第5段階のメディアを開発するか。それが分かるまで、今しばらく観察時間が必要だろう。