札幌ドーム内の様子

 ラグビーワールドカップ(RWC)2019が9月20日、開幕。11月2日までの44日間、世界ナンバーワン・チームを決める戦いが行われている。筆者は、9月21日のオーストラリア対フィジーと22日のイングランド対トンガの試合を札幌で観戦した。

RWCはインバウンドに直結

 筆者が香港に初めて住んだのは2001年。香港は7人制ラグビーの聖地で「香港セブンズ」という大会は世界中から人々が集まる。たぶん、その取材回数では日本人メディアの中で筆者が1番だろう。また、15人制の日本代表も結構、香港で取材をした。ラグビーの原体験は新日鉄釜石の7連覇目を見たことが大きい。1980年~90年代の大学ラグビーを中心としたブームも、神戸製鋼の7連覇も覚えている。

 今回のRWCはプライベートでチケットが当選し、仕事ではなく久々に純粋にプライベートで試合を楽しむ予定だった。ところがありがたいことに、「商業界オンライン」で観戦記を書く機会が与えられ、半分仕事になった(笑)。

オーストラリアの攻撃

 19年9月25日付で「商業界オンライン」にインバウンドについての記事を書いたが、RWCはインバウンド直結と言っていい。ラグビーではイングランドやフランス、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカが強く、大会中は日本人がイメージするステレオタイプ的な外国人が多く来日する。

 新千歳国際空港到着後、早々にイングランドのユニホームを発見。早速のRWC効果を感じる。「試合は少し先だが、もうユニホーム着ている。競馬でいうなら『かかりぎみだなぁ』」と思いながら札幌市街に向かった。

札幌だけで計9カ所、全国でパブリックビューイング

 RWCではパブリックビューイングができるファンゾーンを全国各地に設置している。札幌駅前と大通公園の2カ所に設置された他、札幌市が独自に7カ所もパブリックビューイングを設置したと聞いて、ちょっとビックリする。

 開幕当日は、大通会場のファンゾーンでオープニングセレモニーが行われた。まずは秋元克弘札幌市長が登場する。続いて、元明治大学ラグビー部監督で、北海道ラグビーフットボール協会 ラグビーワールドカップ2019準備委員会の丹羽政彦委員長があいさつしている。この様子を、香港在住の山田英樹さんにSNSで送る。氏は中学の先輩に当たる。すぐ「オール北海道時代の同期!」とメッセージが。山田さんは香港で飲食店を運営しており、ラグビーの日本代表が香港を訪れると、しばしばメンバーのお世話していた。今回のRWCも、開幕戦と決勝戦の他、計5試合を香港と日本を往復して観戦するツワモノだ。

外国人が大勢詰め掛けたファンゾーン

 外国人がぞくぞくとファンゾーンに集結し、「日本人と外国人の数がほぼ同じでは」と思うほどだ。六本木よりも外国人の密度が濃い!! 筆者はビールを我慢してインタビューに入る。

 オーストラリアのブリスベンから家族5人で来たジョンソン一家。「16日間の滞在予定です。太鼓のパフォーマンスはすごい。ブリスベンにも日本人社会があるけど、あれは見たことがない。とにかく日本を楽しみたい」とのこと。日本の印象について「つかみはOK」といったところだ。

 続いてイングランドのユニホームを着ていた4人組に話を聞いた。札幌の印象から聞くとルーシーさんは「Love it!」とありがたい一言。アンドリューさんは「人々はフレンドリーだし、街の雰囲気がいいね」。ミックスゾーンではハイネケン(大会の公式スポンサー)しか飲めないが、「サッポロビールって知っている?」と尋ねた。するとルーシーさんは「サッポロビールはベスト」と言う。リップサービスはあったとしても、ありがたいオコトバ。さすがパブの国出身、分かっている(笑)。トムさんは「日本には12日間滞在の予定で、東京でもイングランド戦を観戦する」と語る。

(左から)ルーシーさん、トムさん、アンドリューさん、クリフさん

 結局のところ、約2000人が集まり、入場規制がかかるほどだった。「商業界オンライン」としてはビールの売り切れが心配なので、担当者に話を聞く。「今日は大通会場だけで400樽(「1樽は15リットル)持ってきています。2会場分で総計3000樽を用意しています。『売り切れの心配はないんですか?』と聞くと『大丈夫です』」と力強い答えが返ってきた。担当者様、失礼しました(苦笑)。「3000樽なら4万5000リットルも用意したのか」と後で筆者は1人驚愕した。

業務用ハイネケンがずらり

 試合後の深夜1時ごろ外人が集まる有名なバーに行った。予想通り、赤いジャケットを着たイングランドのファンでごった返し、テーブルの上では“お立ち台”状態で踊っていた。余談だが、基本的に欧米にはホスト、ホステスが隣につく飲食店の文化がない。西洋人は年を重ねても、食後にバーやクラブに繰り出すことがある。たださすがにお立ち台は上がらないが、音楽を楽しむ。筆者はオッサンだが、カナダや香港の経験から自身を“外国モード”にすれば何とか頑張れる。だが、筆者と合流していた同世代の友人らがその光景に驚いていたが、モードを切り替えられず……。

踊りまくるイングランドサポーター

親切な巨大スクリーン、音楽に工夫の余地あり

 9月21日と22日の試合当日は、札幌ドームに向う大勢の人で地下鉄はいっぱいだった。札幌市交通局も列車を増発し、プラットホームの時刻表にもその旨の張り紙が貼られていた。地下鉄車内ではイングランドのサポーターによるニール・ダイヤモンドの『スウィート・キャロライン』の大合唱が始まる。英語圏の人たちにとっては懐メロで、ラグビーの試合やボストン・レッドソックスの試合でも流れる。日本人にはあまり知られていない歌でもあり、「列車内は静粛」が常識である日本人は目を白黒させていた……苦笑。

 最寄りの福住駅から札幌ドームへの途中にあるファミマ(ファミリーマート)は、大きな駐車場を備えている。ビールを買い立ち飲みしている外国人たちで駐車場はいっぱいになり、試合前に“出来上がっている人たち”がちらほら。ドームまでの道中には日本ハムファイターズのオフィシャルショップもあり、小さなブースを出してチームグッズなどを売っていのに対し、チョコレートで有名なRoyceは何もなし。「もっと商売っ気を出してもいいのに」と思いながらドームに向かった。

札幌ドームに向かう観客

 日ハムの試合などで慣れているせいか、ドーム内は大勢の観客でいっぱいだが特に大きな混乱もなく何事もスムーズ。また、ボランティアが何だか底抜けに明るく、雰囲気を盛り上げるのに一役買っていた。

 試合内容については割愛するが、反則ごとに巨大スクリーンに「何の反則か」を表示していたのは良かった。表示がないと試合展開が分かりにくく、観客には大きなサポートになったと思う。イングランド対トンガはイギリス連邦同士の戦いである。だが、筆者の後ろにいたもう1つの英連邦国家のオーストラリア人が着ぐるみをまとってトンガを必死に応援していたので、写真を1枚。

“親”のイングランドではなく、“兄弟”のトンガを応援していたオージー

 筆者はラグビーの他にも、さまざまなスポーツイベントを見たり取材したりしているが、香港セブンズの雰囲気が一番でこれが各会場で再現されたらRWCは大成功だと思っている。鍵は試合以外のエンターテインメント性で、特に音楽である。試合前はCMが巨大スクリーンに映し出され、大会公式ソングである『World in Union』が流れた。また、ハーフタイムには前述の『スイートキャロライン』が流れ、英語圏のファンは一斉に歌っていたが、香港セブンズで一番盛り上がる曲でDJ Otziによる『Oh Baby』を流すともっと盛り上がったのに……と感じた(インターネットなどで検索して視聴してください)。

飲料とフードの不自由、帰り道の案内も外国語で

 また、ニュースにもなった飲料と食べ物の件と帰り道も気になった点だ。前者については、RWC、五輪、サッカーW杯は全て大会スポンサーがつく。その商品しか買えない上に、競争がなく価格も高めになる。ビールはハイネケン・キリンのいわゆる「グリーンボトル」というラガービール一択だ。「ダーク」や「ボック」という別な味も販売すればいいと思った。日本での販売を担当するハイネケン・キリンさん、どうにかなりませんかね? フードについては、売り切れ続出した結果、後日、持ち込み可能となったので文句は言わない(笑)。

 後者については、初日の入場者数が3万6482人、2日目が3万5923人。試合終了後に3万5000人以上が一気に地下鉄駅などに向かうので、ドーム出口は人、人、人。これは仕方ない。ただ、地下鉄駅への道は複数あり、ボランティアの人たちがお客に説明していたが日本語のみ。あるオーストラリア人が「何の説明か分からない」と困っていた。筆者が状況を説明すると理解を得られたが、ここは改善の余地がありそうだ。観客が同時に帰るのは他会場も同じ。ちょっと心配ではある。

 2020年の東京五輪だと基本的に東京に観光客が集中するだろう。だが、RWCは代表を追って観光客が日本中を移動するので、地方のインバウンドにより貢献することは間違いない。このような機会は、サッカーのW杯かもう1度RWCを呼ばない限り、無理。RWCの日本大会のキャッチコピーは「4年に一度じゃない。一生に一度だ。-ONCE IN A LIFETIME-」だが、一生に一度とは言わず20年後あたりにRWCが再び来ることを期待している。