(左)ユニクロの有明倉庫

 ユニクロや無印からH&Mなど外資まで、SPAといわれる企業の在庫回転は結構怪しいものがある。売上げを原価在庫で割って回転を水増しするのはご愛嬌として、在庫の計上方法そのものが恣意的となると「怪しい」では済まされなくなるが、そこには小売業の商品開発の実態が垣間見える。

SPAの在庫計上は怪しい

 在庫回転の実態は期間の売上原価を期初期末平均の棚卸資産(在庫原価)で除して捉えるべきだが、利幅が厚く売上売価と売上原価が倍以上も違うSPAでは売上売価を在庫原価で除して回転を高く見せようとすることがある。決算説明会などで使われ、決算報道記事でも発表をうのみにして掲載されるのはどうかと思う。実務が分かっている玄人目にはご愛嬌だが、素人投資家などは惑わされるのではないか。

 そんな目眩しは問題外だが、国内ユニクロの18年8月期在庫回転が計上基準の変更で5.2回から2.17回に急落したのはもちろん、良品計画の19年2月期商品回転が単体では4.95回転なのに連結では2.44回に落ちるのは玄人でも実態が見え難い。ユニクロの場合は商社に管理させていた国内倉庫在庫を自社計上に改めたという事情、良品計画の場合はソーシングを担う連結子会社が補給在庫を倉庫に積み上げている事情(海外店舗の在庫なども絡んでいるかもしれない)だと推察される。

2018年8月期の決算説明会にて

 どちらも小売業としての「販売在庫」と製造業としての「製品在庫」をどう計上するかの課題で、製造業なら「仕掛り在庫」や「原材料」もBSに計上されてしかるべきだが、どこの決算報告書(有価証券報告書)も在庫計上の基準や詳細分類は明記していない。ファーストリテイリングとて「棚卸資産」と一括表記しているだけだ。SPAといわれる企業でBSに「仕掛り在庫」や「原材料」を計上しているのは私が知る限りINDITEXだけだ。

INDITEXの決算書に見る在庫項目

SPAは小売業か製造業か

 SPAの商品調達方法はさまざまだが、大きくは「製品仕入れ」「工賃払い調達」「自社工場生産」に分けられる。「製品仕入れ」ならBSには製品在庫しか計上されないが、「工賃払い調達」や「自社工場生産」なら「仕掛り在庫」や「原材料」が計上されるはずだ。「仕掛り在庫」や「原材料」が計上されないSPAは「製品仕入れ」に依存している“小売業”ということになる。

 ひと昔以上前から生産地の工場に「匠」を張り付けて品質と工程を管理させ「情報製造小売業」を標榜するユニクロが「製品仕入れ」というのは納得しにくいが、おそらくは工場から国内倉庫までの物流と在庫負担を商社に依存しているからなのだろう。店頭では年間に5.2回転していても製品在庫は2.17回転しかしていないのは、物流段階や倉庫にある在庫は商社の管理下にあったとしか説明できない。

 ユニクロは素材から開発して工場に供給しているのだから、本来なら「工賃払い調達」でBSには「仕掛り在庫」や「原材料」を計上すべきだが、小売業として販売在庫の最適補給に徹したいゆえ、商社に補給在庫を抱えさせ販売進行に応じて「製品仕入れ」していると思われる。実際、ユニクロは18年8月期決算の説明会資料で『低コストな生産国の倉庫に商品を留め置き、販売国倉庫には販売に必要な商品のみ保管』と明記しており、18年8月期第4四半期から国内倉庫在庫はユニクロの資産に計上したが、生産国倉庫の在庫は商社に抱えさせたままということになる。

 それ自体は小売りチェーンの商品開発では一般的なことで非難すべきものではないが、商社など外部に依存したプロセスについては目が届かなくなり、サプライチェーンの分断を招きかねない。実際、『素材備蓄による短リードタイム生産』をうたっていても生産地倉庫には店頭投入の半年以上も前から製品在庫が積み上がっているし、有明プロジェクトでは商社が管轄する生産地からの店舗物流とEC物流の一元化を果たせず、有明自動倉庫がC&Cの足かせとなる事態を招いている。

ファーストリテイリングの決算説明会資料

 ユニクロは「情報製造物流小売業」を標榜しながらも、生産工場から国内倉庫までの物流と在庫管理を外部依存して「ものづくりにも踏み込む小売業」という枠にとどまり、生産〜物流〜販売のサプライチェーンを一貫するマネジメントには眼をつむっている。