2019年10月1日より、消費税の軽減税率制度が始まりました。新聞や飲食料品など一部の商品は税率8%を維持するものの、多くの商品は10%になり、税率が混在することで店頭や消費者の間では混乱が生じています。

 日本では初めての対応ですが、各店頭では消費者に向けてたくさんの工夫がされていました。私が見た範囲内で、店頭での工夫についてまとめます。

外食は10月からの再来店を促す、ドラッグストアは10%値札を事前表記

 

 外食は10%になるため、9月中に訪れた飲食店では10月からも使えるクーポンや割引券を配布されることが多かったように感じました。外食自体を敬遠されないために、リピーターを呼び込もうとする工夫も感じられました。

 9月に来店したドラッグストアや雑貨店では、「軽減税率対応のため一部値札が10%表記になっている商品もありますが、9月30日分までは8%の税率で対応いたします。ご不明な点はスタッフにお尋ねください」という旨の告知表記をよく目にしました。

 もし10月以降に「一部値札は8%のままですが、レジでは10%になります」と逆の告知表記があれば、感覚的に高くなったと感じられてしまいます。スタッフの作業負担を考える上でも、事前に告知して作業を進めるのはとても良いと思いました。

 飲食品を多く取り扱うネットスーパーのサイトでは、多くの商品が税率8%となるため、逆に10%となる対象商品を事前に告知していました。またネット通販サイトでは、出荷の混乱を避けるため、数日前からあえてサイト自体をクローズして準備に当てる姿も見受けられました。

 

 9月30日の夕方に駅ビルをぐるっと1周して見たところ、前日だったからか、大きなショッパーを抱えている人はあまり見られませんでした。代わりに小物を複数買う人が多く見られたのが印象的でした。化粧品カウンターで普段使用していると思われる基礎化粧品を2本手にする女性、行列のできた雑貨店でペンをまとめ買いする学生など、消耗品を購入する層が目立ちました。

 イートインもテイクアウトも実施しているマクドナルドは、一部商品の値上げに踏み切る代わりに、店内飲食もテイクアウトも商品価格を統一すると発表して話題になりました。商品の税抜き価格を調整することで、消費者にとっての混乱を防ぎ、買いやすくすることが狙いです。

 今回導入される軽減税率は、かなり複雑で一般には理解しにくい構造となっています。加えて決済金額の一部がポイント還元されるキャッシュレス・消費者還元事業も始まるため、会計時の決済手段も多様化し、煩雑になってくるでしょう。こうした中で対応も手探りの中、各企業や店頭が独自に考えて動いている印象を受けました。

まずは自分にできることを

 

 今回の軽減税率については、店頭だけでなく消費者側も混乱しているように感じられます。増税の空気にのまれて軽減税率対象品目である飲食品をもまとめ買いする人、日付が変わってからの買物で増税を実感する声、あえて同じ商品を9月30日と10月1日で購入してレシートを確認する人など、あらゆる反応が見受けられます。

 どんなに事前告知をしても、伝わらないお客さまが一定数出てくることは仕方のないことだと思います。誰もがHPやメニューを入念に下調べしてから来店するわけではないので、店頭のスタッフがお客さまに詳しい説明を求められる場面も増えると推察されます。

 店頭はお客さまの声を直接聞ける現場である一方、お客さまの不満もダイレクトに受ける場所です。ただ価格の決定権や基本ルールは、本部など現場にいない人から通達されることも多いでしょう。

 企業や店の間で情報共有が遅くなれば、それだけ店頭で問題が起きやすくなります。店頭で働くスタッフは不明点があれば必ず責任者に判断を仰ぎ、逆に本部側は対応策や決定事項をしっかり店頭まで周知していくべきです。

 各店舗ともレジや値札などは大半が対応済だとは思いますが、イレギュラー品や値札の漏れがないかの確認、短期間しかレジに入らないスタッフへの情報共有、告知などはしっかりと行っていくべきです。店内商品が全て一律8%、10%となっている店は比較的オペレーションは分かりやすいと思いますが、税率が混在している店舗はできればスタッフだけでなくお客さまにも商品税率が伝わるようにしておいた方がベターです。

二次、三次クレームを防ぐ

 

 また、今後営業していく上で対応を迫られる出来事が起こる可能性は高いです。例えば私が10月1日にSNS上で目にした中では、店内飲食のためカフェで10%の商品を購入した(と宣言する)人から、テイクアウトと称して8%で購入した商品をそのまま店内で飲む人に対して違和感を感じる投稿を目にしました。

 こうしたことが実際に起きた場合、店舗側はどういった対応をするかスタッフ全員で共通認識を持つ必要があります。もし他のお客さまから直接意見を寄せられた場合どう対応するのか、指摘するならどういった形で声掛けしていくのか、そもそも店頭での告知が分かりにくくないかなど、考えるポイントはたくさんあります。

 こうした判断に悩む事例は、これから営業していく上でますます増えていくでしょう。クレームは、初期対応も大切ですがその後の二次、三次対応が問題視されるケースが多いです。スタッフ側の無知や情報不足によって案内が二転三転すれば、当然お客さまは不安・不快に思います。同様の問い合わせで異なった意見を伝えることのないように、しっかりと話し合っておくことが大切です。

 軽減税率導入にあたって多くの店頭にて工夫が見られたように、これからも制度を分かりやすくするための工夫があちこちで見られると思います。変化対応業とも呼ばれる小売業界の現場でどんな形のサービスが見られるのか、注視していきたいと思っています。