閉店セールを行う意味とは

 “閉店セールを効率的に行う”というと、その必要性をすぐに感じる方はきっと少ないものと推測できるが、今後の日本マーケットでは必ずこの”効率化”は必要になるものと考えられる。

 閉店セールが行われる理由は、言わずもがな店舗がそのマーケットに合っていないから行われるものである。マーケットからの撤退か、もしくは近隣での出店場所の変更を行うこと意味する。

 しかしながら、ひとたび閉店セールとなればこれまで少々足が遠のいていた顧客が再来店し、さらには一度もその店舗に来たことがないエンドユーザーも来店し、たちまち繁盛店になる。当然、閉店セールだからこその値引きやたたき売りがあるからであるが、結局のところ売上げは取れるが利益を出しにくいセールであることも一つの側面として捉えられる。

 日本市場では多くの消費財が供給過剰となっていることは周知の事実である。そしてそれは、事業会社の収益力を低下させ、ひいては在庫過剰に陥らせる。多店舗展開をしている小売業の多くは、昨今の人件費の高騰や輸送コストの増加により、店舗展開を開始した時点から大きく収益構造が変化している。

 その結果、マーケットの供給過剰状態と相まって出店を継続できない店舗が各所に出始めている。一言に退店といっても、閉店セールのための従業員の確保や在庫の確保、什器や備品の処分や残った在庫の搬出、移送先等業務の分量は非常に多くなる。これらの退店を計画的に確実に行うことができなければ無駄にコストもリソースも割くことになり、事業運営にまた一つ課題を抱えることになる。

外部の専門家に依頼することは有益?

 

 では、これらの業務を外部に委託したらどうか?

 日本では2000年代の中頃からサービスが開始されているが、米国では盛んに行われている「閉店セールのプロ」によるアドバイザリーサービスがある。アメリカでは企業の構造改革を目的としたリストラクチャリングのための閉店を積極的に、かつ大規模に実施する傾向にある。

 日本と比べて国土が広く、店舗数が多いということもあり、ドミナント店舗網といっても日本のものよりも密度は低いため近隣の自社店舗を気にせずに一定期間内に数十・数百店舗レベルの閉店を行うことは珍しくない。数十・数百店舗レベルの閉店セールとなればそのリソースは多分に必要となり自社では経験ががないので、このような”閉店セールのプロ”を必要とするわけである。

 一方、日本では1社が持つ店舗数はアメリカほど多くなくドミナント店舗網の密度も高いため、なかなか大掛かりな店舗閉鎖が行われることは少ないが、ここ数年のリソース不足と閉店店舗の増加によりこのような「閉店セールのプロ」は求められている。

「閉店セールのプロ」が提供するサービスはさまざまである。販売戦略や販促戦略、商品投入計画と売場レイアウトの変更計画等、その業務内容は多岐にわたる。閉店セールばかりを扱うプロは、そこに閉店のノウハウがあるからこそ必要とされるわけだが、中でも値引きを最小限としながらも最後は“売り切る”ことのノウハウが評価されているといわれている。

 米国は国土が広いために他の店舗に売れ残り在庫を移動することを良しとせず、そもそも売れ残り在庫を他店で完売することの確からしさを認めていない。

 他方、日本では値引きの拡大やたたき売りを行ってはいるものの計画的に”売り切る”という閉店セールはあまりなく、多くのケースでは売上げ好調だからといって、在庫を入れるだけ入れて、残った在庫を従業員が梱包し輸送便に載せて他店か倉庫に戻し、それらの拠点のオペレーション量を増加させながら、確実に付帯コストを増加させている。

 また、まだ十分に売れる在庫も一塊となって値引きされているケースが多く見受けられ、顧客にとってはこの上なくお買い得ではあるが、事業会社にとっては収益という側面で好ましくない状況を加速させている。

 閉店セールにおいて重要な点は、どの在庫を売り切り、どの在庫は売り切らないのか、スタート前の計画が非常に重要となる。例えば、前シーズン商品や去年物の在庫は必ず売り切るべきであるが、今期の当シーズン在庫はやはりまだまだ収益の源泉となるため、これらの投入在庫の分量バランスが重要となる。事業会社の経営層から見ればこれらの計画は非常に重要となり、またその計画へのコミット具合も重要となるのは明白であろう。

 しかしながら、多くの事業会社では閉店セールを専門に取り扱う部署など存在せず、各部署が他の業務と並行して閉店セールを運営しており、当初閉店セールで計画した数値にコミットすることやこれらの閉店セールで培ったノウハウをため込むのも難しい状況と考えられる。

 小売業が新陳代謝を早く行い、将来にわたりマーケットに合致したビジネスを展開するには、店舗の退出店を効率的に正確に行う必要がある。閉店セールの効率化は事業会社が次のステップに進むために必要な要素であると同時に、現在の在庫過多なマーケット状況ではそれらを効率的に換金する重要なツールともいえる。もはや日本においてもこれらのノウハウを蓄積するために一度、外部のプロフェッショナルと協業することが有益と考えられる。