有効求人倍率はここ数カ月1.5倍程度で推移、非正規雇用を中心に依然として人手不足の状態が続いている。スーパーマーケットやコンビニをはじめとし、とりわけパートタイマーやアルバイト比率の高い小売業は深刻な問題だ。地域的には求人広告を出しても一人も応募者がいないといったケースも見られる。

 しかし、こうした状況は今に限ったことではない。「土日が休めない」「立ち仕事がつらい」「職場の人間関係が煩わしい」、そして「時給が安い」といった理由で、小売業は敬遠され、絶えず人員確保に悩まされてきた。

 正社員においても人気職種とは言えず、企業側は小売りが好きな人、小売りに向いている人を前提に、「小売業は社会に欠かせない存在」「やったことに対してすぐ反応が出て、結果が分かる」など、やりがいを強調し、志望する側も「接客が好きだ」「消費者と一番近いところで仕事ができる」といった理由で選択する傾向があった。

 しかし、こうしたことは多かれ少なかれ、どの業種にも言えることで、決定的な要因とはなり得ず、「長時間労働」「仕事がきつい」「低賃金」などのマイナスイメージをカバーするまでには至っていない。

人手不足は構造改革の好機である!

 このような構造的な問題を抱えていた中で、店舗では自動発注システム、セルフレジの導入を進め、業務効率の改善にも取り組んできたが、近年の人手不足が追い打ちをかける形で問題が深刻化した。

 人手不足を解消するには、「時給を上げ、職場環境を改善する」「外国人雇用」などの方策があるが、そうしたことは根本的な解決に結び付かない。

 不足しているのは人手である。作業を人の手で行うのではなく、AIの活用を進めて機械に置き換える。セルフレジは既に人手が機械に置き換わり、中国では無人のコンビニも登場している。

 高齢化が進む中で労働人口は減少する。人手を要しない産業への転換が求められ、そのことは生産性の向上にもつながり、低収益の小売業の構造を変えることにもなる。人手不足は構造改革の好機である。

 自動運転が可能になればドライバーは不要になる。小売業だけではなく、人手がいらなくなる時代になろうとしている。そうなると必要になるのは「人手」ではなく「人材」である。

一点突破できるオタク的人間が求められている!

 小売業は果たして人材が足りているのだろうか。とりわけ、次代を担う若い有能な人たちがいるのだろうか。周知のように就職企業ランキングで小売業の人気は決して高くない。

 既に大手企業では頭脳明晰な優秀な人材がいることも確かだが、必要なのはエリートではない。小売業を取り巻く環境が激変する可能性がある中で、変化に対応し、型破りな発想ができる、バイタリティあふれた人材だ。

 筆者はかつて1970年代後半から1980年代のスーパーの高度成長期に西友に在籍していた。とにかく出店で人手が足りず、大卒が大量採用され、高卒も多く中途採用もおり、有能な人もたくさんいた。筆者を含めて世間でいうエリートではなく、有象無象の人間が蝟集する集団で活気があった。

 果たして、今の小売業は次代を切り拓く人材がいるだろうか。何事もそつなくこなす優等生のサラリーマンではなく、一点突破できるオタク的人間が必要でないか。小売業のダイナミズムはそうした人間によって創られてきた。ダイエーの中内功、ユニクロの柳井正、創業者も同じである。

 中長期的に見れば人手不足より深刻な問題は人材不足である。待遇や職場環境の改善を進めながら、若手や女性を活用し、外国人も採り入れて新たな発想で事業に取り組み、業界全体で働く場としての小売業の魅力を発信していかなければならない。そのためにも革新的な新たなビジネスモデルが求められている。

 そのビジネスモデルを創り出す新たな若い担い手は、徳川300年の安定の時代に必要とされる人材ではなく、下剋上の戦乱の世に活躍する人材である。