懐かしい「駄菓子屋のおばちゃん」のムード漂う淑子さん

新幹線駅そばに広がる「水のリゾート」

 ブランド地域、それは全国区の知名度を誇り、多くの人に「一度は行きたい! できれば住んでみたい!!」と思わしめる人気エリアのこと。

 現時点でそれが存在しない湘南と富士山の間(神奈川県小田原市~静岡県沼津市)にクリエイターの力で新ブランド地域を創ろうと画策する不敵な男が私です。

 今回は、「この取り組み、イケるかも!?」と私に思わせてくれた「JR三島駅南口エリア」を紹介しましょう。

 三島駅は東海道新幹線の停車駅ですが、南口の駅前は商業の中心地ではありません。

 駅を出たところにあるのは「楽寿園」という広大な市立公園です。

小さな動物園や遊園地もあり、家族で楽しめる「楽寿園」

 楽寿園を抜けてすぐの場所にあるのが、その名も「源兵衛川」。

 室町時代に「寺尾源兵衛」という地元豪族が作った農業用水路なんですが、現在では南口エリアきっての観光資源となっています。

 そう、この源兵衛川の心癒される眺めが、私にプロジェクトの勝機を予感させてくれたんです。

 百聞は一見に如かずということで、まずはその「水のリゾート」ぶりをご覧ください。

「景色に感動する」ということを筆者に教えてくれた絶景

 どうですか、日本の大動脈から少し歩いたところに、こんな高級避暑地みたいな光景が広がっているんですよ!

 源兵衛川の目と鼻の先には伊豆箱根鉄道の「三島広小路駅」があり、そこから源頼朝・北条政子ゆかりの神社「三嶋大社」に至る道が三島市のメインストリートとなっています。

境内には春日大社から来た鹿もいる「三嶋大社」

 商業の中心地がこんな絶景と融合しているなんて、私には奇跡としか思えません。

「生きたまま行ける天国」を体現する店

 せせらぎの中に配置された飛び石を使って水上散歩も楽しめる源兵衛川。

延々と続き、どこまでも歩きたくなる飛び石

 私が特に気に入っているのが、ウッドデッキ(縁台?)の置かれた木蔭です。

 こちらでは夏場、多くの人たちがデッキに腰をおろして清流に素足を浸します。

清流はきんと冷えていて、浸せばすぐに涼しくなります

 私が浸していたら目の前をトンボとチョウが戯れながら飛んでいきました。

 川面を見れば鴨がのんびり泳いでおり、私は本気で「……ここは本当にこの世なんだろうか?」と思ってしまいましたね。

名が付けられ固定ファンもついてる水鳥もいるそうです

 そのとき脳裏に浮かんだ三島駅南口のキャッチフレーズが「生きたまま行ける天国」。

 まさに「現世離れしたユルさ」が辺り一帯を支配しているんです。

 そのムードを体現しているのがこちらのお店。

水辺の木蔭から道路に上がってすぐの場所にあります

 看板には「せせらぎ源兵衛」とありますが、なんとこれは屋号ではないんですよ!

 ある時、お店の公式Twitterにこのような旨の書き込みがありました。

「看板にあるのは以前に入っていたお店の屋号で、『わざわざ変えなくてもいいかな』と思ったのでそのまま使ってます」

 ……な、なんというユルさ! でもそのユルさが場のユルさとベストマッチで、いつしかこちらは私の中で「三島駅南口エリアに最もふさわしいお店」となったです。

 ちなみに、正式な店名は「駄菓子カフェせせらぎ」。

 今回ご登場いただくのは、そのオーナー店主である樋口淑子さん(79)。

 淑子さんは、娘で「Twitterの中の人」でもある樋口かおるさんと2人でお店を切り盛りしておられます。

70代と40代の名コンビぶりもお店の魅力です

 そんな仲良し母娘に、一番人気だという「氷いちご牛乳」を頂きながらお話を伺いました。

適度にユルくて文化度が高い「三島市」

 屋号の示す通りメイン商品は駄菓子で、その売場にミニマムなカフェスペースと雑貨コーナーが併設されています。

センスが良くて、つい手に取りたくなる雑貨たち

 来店者は外部からの観光客が多いそうですが、王道の駄菓子屋ユーザーである近隣の小学生たちも放課後に訪れるそうです。

「地産地消メニュー」にも力を入れていて、地元ゆかりの「三島湧水ブレンド」というコーヒーも提供されています。

富士山の湧き水に恵まれた街のコーヒーはおいしそう

 かおるさんは出版系のフリーランスクリエイターでもあり、そのご主人は三島市在住の落語家・笑福亭羽光師匠。

 師匠は市内で落語会も定期開催しており、実は三島はさりげなく文化度の高い土地柄なのです。

 カフェで出すストローも昨今の「マイクロプラスチックごみ問題」に配慮して紙製で、「……む、なかなかヤルな」という感じです。

紙ストローは優しい触感で、心が穏やかになりました

「駄菓子カフェせせらぎ」のオープンは2017年の6月で、淑子さんは当初、フードメニューを提供するお店にしたかったそうです。

 しかし「十分な厨房スペースをとれない」「フード販売はリスクが高い」「スタッフを雇う余裕がない」等々の理由によって断念し、現在の業態になったといいます。

「親子2人で無理なくやっていける程度がいい」と語るかおるさんは「いつも開けてるわけじゃないので『幻の店』なんて言う人もいるんですよ」と笑います。

 実際、私も「寄ろうと思って来たが休みだった」ということが何度かありました。

 しかし全く腹は立たず、むしろ「このくらいユルいほうが三島らしくて良いや」と思ったのでした。

70代で「起業セミナー」を最高齢受講!

 話を店主の淑子さんに戻しましょう。

 2年前にお店を開いたということは、現在79歳の淑子さんはいわゆる「後期高齢者」になってから起業した計算になります。

 それだけでも驚きなんですが、特筆すべきは「開店にあたり、大学生らに混じって最高齢で起業セミナーを受講した」という点!

 周囲の誰もが「無理だからやめた方がいい」といさめたといいます。

 しかし淑子さんは「いくつになったって挑戦することはできる!」という信念のもと初志を貫徹したというのですから、イヤハヤ頭が下がります。

 ドラマ化でもされそうな稀有なる体験を経てきた淑子さんですが、しかしそのキャラクターはあくまでも「ユルい」のです。

 彼女のお店が無事2周年を迎えられたのは「ユルいビジネス」だったからに他なりません。

 もしも「飲食起業=大金をかけて広いテナントを借りて従業員を雇って……」という「ユルくない思い込み」にとらわれていたら、これほど心地よいスポットは生まれてなかったでしょう。

「固い意思」と「ユルい思考」が程よく融合した結果が「駄菓子カフェせせらぎ」なのだと私は思います。

「高齢起業志望者」の希望たる淑子さん

 平均寿命が右肩上がり中のわが国ですから「定年後/還暦後にビジネスを起ち上げたい!」と望む方も増えるのは必至です。

 淑子さんは、そういう方にとって「心強いモデルケース」となり得るでしょう。

 興味が湧いたら是非一度、お店へ遊びにいらしてください。

 東京の方には「遠い」と思われがちな三島市ですが、新幹線ひかり号を使えば品川駅からわずか35分で来られるんですよ。

「心洗われる」という表現がピッタリの源兵衛川

 ……え? 「のぞみ以外になんか乗ったことない」と!?

 そういう方にこそ「駄菓子カフェせせらぎ」がオススメです。

 淑子さん、かおるさんとユルい時間を過ごし、「効率性ファースト」な日々で疲れた心をどうぞ癒してください。