オープニングセレモニーの参加者

「ファッション業界の活性化」を目的とした「Vogue Fashion’s Night Out 2019」(FNO)が9月14日、表参道ヒルズを中心に行われた。オープニングセレモニーではSEKAI NO OWARIがライブを行い、会場を盛り上げた。

ファッションにお金をかける人が減った

 IT、音楽、電気、車など世の中にはさまざまな産業があるが、ファッション業界は人間が服を着だした時からあるともいえるので、ある意味、最古の産業の1つといってもいいだろう。

 古代において毛皮は、権力と富の象徴ですらあった。バッグもそうだ。“モノを持ち運ぶためにはどうしたらいいか?……”から“袋”が誕生し、どんどん進化してきた。

 つまり、ITといったデジタル産業とは異なりファッションは完全に成熟産業で、ファッションデザイナーには「進化系」なものは作れるだろうが、革命的なものを作る余地は少ない。事実、最近のファッションは過去のスタイルを取り入れて現代風にアレンジするというのが少なくないということがそれを証明しているだろう。

 また、「革をなめす」「型を作る」「糸で縫製する」などやっていること自体は非常に「アナログ」な産業でもある。

 一方で、ファッションは自己表現するためのツールという役割もある。シャネルの服を着たり、エルメスのバッグを持ったり、トム・フォードのスーツを来て街に繰り出せば、その人は鎧を身に着けた感じになり、自信を持って歩けるはずだ。

 これはファッションが人に与えるポジティブな効果だが、そういう役割がある以上、技術はアナログ的かもしれないが、常に時代の先端を走り続けなければならない。

 それ故にファッション産業はSNSなどの「デジタル」を他産業よりも駆使してプロモーションを行うというユニークな状況にも置かれている。実際、ファッションとデジタルはプロモーションにおいて非常に親和性が高い。

 ファッション業界を引っ張ってきた先進国の給与は伸び悩み、アマゾンなどECサイトの台頭で店に行かなくてもファッションアイテムを購入できるようになった。

 アメリカでは購入どころかレンタルで済ませるという人すら増え、ファッションにお金を費やす人が明らかに減った。ファッション誌『ヴォーグ』のアメリカ版の編集長であるアナ・ウィンターが10年前に呼び掛けて始まった「FNO」は、そうした危機感を予兆したからこそ企画されたといっていいだろう。

 BtoBにおいては既存の顧客の購入促進などの他、BtoCではファッションの持つ力や楽しさを体感してもらうのが目的だ。FNOは世界最大のショッピングイベントで、2019年はオーストラリア、ロシア、スペイン、台湾、日本で開催されるグローバルなイベントだが、日本は東京のみならず、神戸、名古屋、大坂と4都市で行われ、他の国・地域と比べて段違いの規模を誇る。

業界喫緊の課題サステイナブルがテーマ

 9月14日17時から表参道ヒルズで行われたオープニングセレモニーはSEKAI NO OWARIによるオープニングでスタート。3曲を披露したが、会場中が熱気に包まれたことは言うまでもない。

 その後、MCのクリス・ペプラーが冨永愛、森星、福士リナ、シシドカフカ、柴咲コウ、デザイナーのフィリップ・リムといった登壇者を紹介。あいさつに立った『ヴォーグ ジャパン』の渡辺三津子編集長は「今年で『ヴォーグ ジャパン』は20周年を迎えた。今年のテーマは『サステイナブル』で、現在、ファッション業界では一丸となって取り組もうとしている。オシャレをしつつ、環境問題への意識を高めていくこともファッションで可能だと思う」と呼び掛けた。

 サステイナブルは多くの業界が取り組まなくてはいけないことで、この『商業界オンライン』の2018年9月18日の小島健輔氏の記事でもアパレルで2018年は15億5000万枚が売れ残る計算と書かれていた。もうサステイナブルはファッション業界にとって喫緊の問題というより、解決をほぼ義務付けられた課題に近い。

 オープニングでも登場した女優の柴咲コウさんをゲストに招いたトークショーでは、彼女が2018年に『MES VACANCES(ミヴァコンス)』というファッションブランドを立ち上げたが「長く使える服、サステイナブルを意識したモノづくりをしている」と語っていた。大勢の人が話を聞こうと集まっていたが、彼女のような影響力が高い人がこうしたことを訴えるのはやはり大きな意義があるといえよう。

 東京のFNOは、表参道ヒルズを中心に周辺の560店舗が参加しているが、地下鉄の表参道駅からJR原宿駅までの表参道は完全にファッション好きな人、人、人で、ファッションにこだわりを持っている人で埋め尽くされた。店によっては限定品が販売されることもあって、行列ができる店もあった。

行列ができる店
BMWの車両も展示
表参道は大勢の人でにぎわった

 以前、ある旅行代理店の部長クラスと話した時、「業界のライバルはスマホ」と語っていた。それは「携帯に毎月使う通話料金などが旅行するための貯金に回らないから」だそう。社会が成熟すると関心事は分散し、情報があふれてくる。

 ファッションに関心を持ってもらうだけでも大変だ。ファッション業界側が自ら積極的にSNSで発信するだけではなく、イベントなど「何かを仕掛ける」必要がある。FNOはそれを実践しているイベントであることは間違いない。1日限りのお祭りとはいえ参加者の顔が楽しそうであったことが印象的だった。