有効求人倍率が高止まりした状態が続いている。直近の2019年6月の有効求人倍率(パートを含む)は1.51。求職者2人に3件の求人がある計算である。

 最低賃金も一部で1000円を超える都道府県が出るなど、多くの中小企業は人材苦に見舞われている。

 10月5日に新刊『小さな惣菜チェーンの社長さんが「募集費1/2 採用数2倍」でやったこと』を上梓した(株)はなまるフードサービス代表取締役の川名勝経氏は、「ターゲットや広告媒体、応募者への素早いレスポンスにより、採用数は改善する」という。川名氏の実体験に基づく、募集・採用の成功術を提案する。

求める人材をはっきりさせる

 はなまるフードサービスは、惣菜専門店など18店を展開する中小の惣菜チェーンです。今でこそ、ショッピングセンターやエキナカからお誘いをいただき、出店する機会も増えましたが、13年当時、神奈川の商業施設の開店当日にも人の手配がつかないなど、「このまま人を集められなければ会社がつぶれてしまう」ような状態でした。

 こうした人材苦の危機の転機となったのが、17年からの募集・採用の仕組みの一新です。それまでは、毎年2000万円もの募集費を注ぎ込んでも、ほとんど人が採れない状態が続いていました。

 まず手を付けたのは、自社が求めるターゲットをはっきりさせることでした。幹部社員を集め、人が集まらない原因を巡って議論を交わし、リクルート活動や受け入れ態勢などの問題点が幾つもあがってきましたが、どの問題点も結局、求める人材像がはっきりしていないことに原因があることに気付いたのです。

・明朗で素直な人。「はい」という返事ができる人

・謙虚で誠実な人。慎ましく正直な人

・笑顔がすてきな人。すてきな笑顔で元気なあいさつ

 たくさんの想いが皆の口からあふれ出ました。はなまるはおかず屋です。言い換えれば「家庭料理代行業」です。ですから、料理が好きな人、人と接することが好きな人。例えば、お子さんのいるママさん、調理や接客に興味があるフリーターといった女性……。

 こうして自社が求める人材の輪郭を一つ一つはっきりさせていったのです。

告知媒体の性格を見極める

 これだけで人が集まるはずがありません。伝えるツールである告知媒体も見直しました。正直なところ、募集媒体がどこであろうと、原稿の中身がどうであろうと、採用は“運”だと思っていました。

 集まるときは集まるし、集まらないときは集まらない。実際、最高の出来と思った広告を出しても1人も集まらないことや、求人誌の営業担当者に電話で指示しただけで応募が増えることもありました。

 ただ、こんな運任せでは会社が成り立ちません。出店自体、ままならなくなってしまいます。そこで、告知媒体の性格を精査し、先ほどのターゲットとなる人を集めるのに最も適した媒体を選んでいったのです。

 募集媒体の会社のホームページや比較サイトから、求職者の会員年齢や、掲載職種の構成比など必要なデータを調べました。比較サイトは、複数のサイトから、より実態に近い情報を入手するようにしました。

 募集媒体への関心が強くなると、周りの競合店も意識するようになりました。ショッピングセンターに出店する場合には当然、テナント同士で人の取り合いになります。どこのテナントがいつ募集を掛けていて、いつだったら比較的競合しないか、丹念に調べるようになりました。

 もう一つ、「掲載価値」にも注意を払いました。掲載価値というのは、登録会員数と募集案件数から求めた1件当たりの会員数です。単に見掛けの会員数の多さではなく、実質的な会員数に目を向け、応募数を増やす努力をしました。

クイックレスポンスで応募を増やす

 採用者を増やすためには、分母となる応募者を増やすことが重要です。そのためには、クイックレスポンスが重要です。

・求人広告を見ていない会員に対して、見てもらうように仕向けるメールの配信

・求人広告を見て関心を示した会員のマスキングされた情報を、リアルタイムで受信できるサービス

 はなまるは求人会社が行っているサービスでこの2つに取り組みました。

 前者については、1カ月で約1500通のメールを配信し、約2%に当たる30人ほどの方から応募をいただいたことがあります。後者については、会員情報を受信したら、直ちに面接のお誘いのメールを配信しました。「当社もすぐにあなたに会いたいです、ぜひ求人応募してください」と、メールを送信するわけです。

 このときに、どれだけ短時間でメールを送れるかがポイントになります。素早く返信するためには、求人募集期間中は日中はもちろんのこと、朝から深夜に至るまで対応する必要がありました。

 はなまるでは以前、このクイックレスポンスを行っていませんでした。なぜなら、逆に早く返信することが、企業のイメージを損ねると思っていたからです。特に深夜の返信は控えていました。

 ですが、それは間違いでした。現在の応募者はスマートフォンを使って応募してきますから、こちらが素早く対応できれば、応募者もその場で判断してくれます。クイックレスポンスを意識するかしないかで、採用の明暗が大きく分かれるのです。

 これらの2つの機能を十分に利用し、はなまるでは応募数を増加させることに成功しました。内容は前者が4割、後者が6割といった内訳でした。

面接は応募者からされている

 採用の面接はリクルート活動において、とても重要な役割を担っています。人手を確保するだけでなく、「将来、人財になる人との出会い」になるからです。ですから、採用面接では、パートやアルバイトを含めて、全ての応募者に誠意を持って応対してきました。

 また、私たちは応募者から面接を受けています。応募者は面接担当者から情報を得ながら、その会社を評価しています。面接担当者はその会社を代表する人として見られているわけですから、言葉遣いや態度についても気を付けなくてはいけません。面接の良し悪しは内定者の辞退率にも影響します。

 まず、内定者の気持ちを自社に向かせるためには、自分たちの事業にかける思いを伝えておく必要があります。応募者から尊敬されるほどの素晴らしい面接をできれば、入社後も会社の考え方に共感して、幸先の良いスタートが切れます。

 また、不採用になった応募者にも、自社のファンになってもらうことが大切です。応募される方は店舗の近くに住んでいる人たちなので、職場としてご縁がなくても、買物をしていただく機会があります。

 ですから、面接の中でも、はなまるの営業活動を分かりやすくPRし、事業に対する目的や理念を伝え、理解してもらおうと努力しています。私たちこそ、応募者から面接を受けていると思って、常に真剣に臨んでいるのです。

面接で見るべきポイント

 担当者が面接のときに注意していることは、応募者の方の「人となり」「労働観」、そして「労働条件」の3つです。

 どの会社の面接でもこうしたことを応募者に聞きますが、大切なことは、限られた時間の中でできるだけ応募者の本当の姿が分かるように質問をするということです。そのためには、イエス、ノーで簡単に返答できる質問は避けなければいけません。

 例えば、「笑顔で仕事ができますか」「料理は好きですか」「日曜・祝日も勤務できますか」という質問はどうでしょうか。もし応募者の方が本当に入社したいと思ったならば、「大丈夫です」「大好きです」「頑張ります」といった感じの返事をすることでしょう。

 しかし、これでは相手が考えていることを十分に引き出したとはいえません。はなまるでは、こんなことがありました。

「接客、料理の経験がありますか?」「日曜・祝日の勤務は大丈夫ですか?」という質問に「はい」と答えていた人が、入社して働き始めたら、笑顔もなく、料理は知らない。

 これだけなら徐々に慣れてもらえば済みますが、揚げ句には毎週日曜を公休にしたいと言い出し始めました。

 こうしたことを何度か経験し、私たちは学習してきました。今は「はい」「いいえ」「頑張ります」だけでは答えられない質問を、意識的に投げ掛けるようにしています。人となりや労働観、本当の労働条件が分かるようにしています。

 また万一、面接の最中に採用が難しいと感じたならば、その時点でそれとなくエクスキューズを伝えておくとよいと思います。例えば、「ありがたいことに、今回は応募者が大変多くて……」といった感じです。こうしておけば、応募者の方も「そんなに倍率が高ければ仕方がない」と諦めがつきやすくなります。

 お店に応募される方は、その地域の生活者と重なります。はなまるを長くご利用いただくためには、一人一人の応募者に丁寧に対応することが大切です。

少しでも早く合否を伝える

 面接が済んだら、できるだけ早く合否を決定し、それを本人に伝えることが採用率を高めるポイントになります。

 はなまるでは、質問や適性などの結果から優秀さで上から3割くらいの人に対して、すぐに合格の連絡をしています。優秀な方は他の会社でも欲しいはずですから、もたもたしていると他社の採用が決まってしまいます。

 残りの7割については、採用決定会議をもち、面接の記録などを振り返りながら、採用する人を決めていきます。ここで大切なことは、面接で上手に話せなかった人をもう一度見直し、適性に優れている応募者が埋もれていないか、検討してみることです。

 せっかく応募していただいた方たちですから、将来の人財として期待できる人は、一人でも多く採用したいものです。

 合否の連絡は面接から2日以内に行っています。面接を終えた応募者は自分が採用されたのか、あるいは落ちたのか、不安な気持ちで待っています。ですから、少しでも早く合否の連絡をすべきです。

 

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