「人の印象の専門家」の吉武利恵です。

「ドレスコードの緩和」や「脱スーツ」「Tシャツ、ジーンズ、スニーカーOK」など、服装の自由化にかじを切った企業が増えてきているのをご存じでしょうか?

 長年、男性のビジネススタイルはスタイル数も少なく保守的な領域でしたが、とうとう変化の時期を迎えたように感じます。

変わり始めたビジネスでのドレスコード

 先日、三井住友銀行が「服装自由化」に踏み出しました。お堅い職業の代表であったメガバンクのドレスコード変更は、大きくニュースに取り上げられました。三井住友銀行本店の一部行員に対して、原則スーツ着用のルールを見直し、服装を自由にし、Tシャツやジーンズでの業務を認めました。今後は直接、個人顧客と接する支店でも試行を始めていくようです。

 米金融大手のゴールドマン・サックスでもフォーマルなビジネススーツが主流でしたが、3月にドレスコードを緩めると発表しました。発表内容に「柔軟なドレスコードに会社全体が移行する適切な時期が訪れたと考える……。」と時代の変化を感じるコメントと、「顧客の期待に沿った服装を心掛けて」という言葉も添えられていたようです。

 パナソニックでは4月に本社など内勤の従業員を対象に服装の自由化を始めました。しかし、全て自由なわけではなく、「清潔感があり清楚」「相手を不快にさせない」「安全面に配慮」などの規定が設けられています。

 富士通も8月に服装自由化を決めました。社長の時田隆仁氏は「就職活動もスーツではなく、自由な服装で」と言っています。

 保守的で固いとされていた企業が続々とドレスコード(服装規定)を変化させる背景の一つに、これからの労働人口のメインが1981年以降に生まれたミレニアル世代や90年代半ば以降生まれのZ世代たちになりつつあるからかもしれません。

 ミレニアル世代やZ世代が憧れる、成功しているビジネスマンの服装は、カジュアルな服装のイメージが強いのが特徴です。

 例えば、Googleの共同創設者のセルゲイ・ブリン氏やFacebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、TeslaのCEOのイーロン・マスク氏など、フォーマルなパーティではタキシードをビシッと着こなしていますが、ビジネスの場面ではとてもカジュアルな服装です。この流れは、今は亡きAppleの創業者スティーブ・ジョブズ氏が作ったものかもしれません。

 そして、ミレニアル世代やZ世代を見て育つ次の世代は、よりカジュアル傾向が強くなることでしょう。企業がこれから優秀な人材を獲得するために、スーツ着用というドレスコードは企業にとってプラスな服装の規定といえなくなってきたのかもしれませんね。

 少しずつ世の中の流れがカジュアルスタイルに変化してきていることは事実です。今回は、変化が始まったこれからのビジネススタイルについて取り上げてまいります。

 では、「ドレスコード」とは何かから、おさらいしていきましょう。

 ドレスコードはフォーマルな服装の規定ではなく、その場面にふさわしいとされる服装を指定することです。それは相手に不快感を与えず、周りに配慮した服装をきちんとする「エチケット」です。

 フォーマルな服装が多い中で、自分だけカジュアルな服で行ってしまったことや、カジュアルな服装が多い中で、フォーマルな服で行ってしまったことはないでしょうか?

 そんなとき、恥ずかしさや場違いな気持ち、疎外感など、気まずく嫌な気持ちになりますよね。もし、ドレスコードがあれば何を着ていけば良いか事前に分かるため、嫌な気持ちになることを回避できます。

フォーマル服とカジュアル服の違いとは

〔フォーマル服の素材の特徴〕

 多く動く(働く)ことが考えられていない素材。働かない人の服。

・美しい光沢。繊維が細く薄く滑らか。肌触りの良い柔らかいなど、美的重視の素材

・布帛(ふはく)の織物なので伸縮性なし

〔カジュアル服の素材の特徴〕

 多く動く(働く)ことが考えられている素材。働く人の服。

・厚地で耐久性がある経済性が良い素材(チノパン、デニムなど)

・ニットなどの編地は伸縮性があり動きやすい素材(Tシャツ、ジャージなど)​

 その場にふさわしい服装をすることは、周囲と調和し、親近感や同族意識を示すことができます。服装は人と人の心の距離を縮めたり、離したりできる非言語コミュニケーションの一つです。

【服装の種類による心の距離感】

似ている服装:心の距離が近い。親近感。同属意識。調和

異なる服装:心の距離が遠い。ユニーク。異質。注目される

 ビジネスでのドレスコードは主に企業が決めてきました。細かく指定する企業もあれば、幾つかのキーワードを定めて、社員に考えさせ、判断させる場合もあります。

 日本のビジネスカジュアルといえば、クールビスなどの「ノーネクタイ」「ノージャケット」「ジャケパン」などは定着したように思います。

 しかし、今後、どれだけ服装が自由になっても、忘れてはならないのはビジネスの場であるということ。ビジネスで求められる服装は「きちんと感がある服」「清潔感のある服」「きれいめに見える服」です。

 カジュアルなアイテムのTシャツやスニーカーでも、普段使いでくたびれた、汚れたのものは合いません。そして、間違えてはいけないのが、「服装自由」は「カジュアルデイ」とは目的が違います。

「カジュアルデイ」:みんなでカジュアルな服装をする日のこと

「服装自由」:自分が働きやすい服装、仕事のパフォーマンスを出せる服装を自分で選ぶこと

 これから求められるビジネススタイルには、スーツに限らず、「働きやすさ」の合理性と「相手が不快にならない」エチケットとしての配慮の両立が必要です。

 ビジネスで成功するためのアイテム(服装)を選ぶという本質は昔も今も変わりません。ただ、今は個性を上手に演出するセルフブランディングが問われる時代に突入したとはいえ、ビジネススーツを長年着用してきた方にとって、急にカジュアルな服装をすることに違和や戸惑いを感じるのは普通のことです。

 もし、自分のパーソナリティと仕事の内容やお客さまの属性が、カジュアルな服装は向かず、スーツが最適な方は今後の選択もビジネススーツで良いのです。無理して、Tシャツやジーンズ、スニーカーを履く必要はありません。

 しかし、かたくなにビジネススーツを着続けることが最適であると断言はしにくいですね。若手と心の距離が縮まらない、古臭い人という印象を持たれてしまうなど、プラスに働かない場面が今後は考えられます。

 そして、マネージャー以上の役職者や経営層は企業イメージとつながっています。多少なりとも変化が必要で、服装のカジュアル化を実践することは、内外含め若手へのアピールにつながります。

ビジネスカジュアルで失敗しないポイント

 そこで、これからのビジネスカジュアルスタイルについて、男性のスタイリングを得意としているイメージコンサルタントの坂井二朗氏に「これからのビジネスカジュアルで失敗しないポイント」を聞いてみました。

イメージコンサルタント坂井 二朗(Jiro Sakai)30代~50代の男性を中心に、ビジネススタイル、休日カジュアルのスタイリング提案やショッピング同行、代行を行う。多くのビジネスマンにアドバイスを行っている。

吉武:「ビジネスでの服装がよりカジュアル化してきたことで、今までNGとされていたTシャツやジーンズ、スニーカーをOKにする企業が増えてきました。これからのビジネスカジュアルスタイルのポイントを一言で表現できますか?」

坂井:「はい、そうですね。“自分にとって、周囲にとって心地よく”ですね」

吉武:「今回は、若手から経営層まで、“この一着からスタートすれば、間違いない”」というカジュアルスタイルをご紹介いただけるのですよね?」

坂井:「はい、企業のトップも含め、全てのビジネスマンにお薦めできるのが、最近多くのブランドがこぞって出しているカジュアルセットアップです」

吉武:「カジュアルセットアップを薦める理由を教えていただけますか?」

坂井:「スーツに慣れている人がきちんと感を残しながら、一番簡単で誰にでも似合い、周りからもスッキリ、さっぱり見えるスタイルです。生地がニット素材なので伸縮性があり動きやすいので体も楽です。価格的にも手が出しやすく、コーディネート次第で幾通りにもアレンジできるのでコストパフォーマンス抜群です」

 

吉武:「見た目はスーツに見えるのに、ストレッチが利いているんですね。一度着心地を気に入ってしまったら、ウールスーツに戻れないくらい動きやすそうです。では、サイズはどう選べばいいのでしょうか?」

坂井:「通常のスーツと同じです。肩、着丈、袖丈、胴回りの適度なゆとり、パンツ丈のバランス等、ジャストサイズを心掛けてください。ただ、かなりストレッチが利くので、パターンオーダーであっても、ウールスーツほど、採寸に気を遣わなくて大丈夫です。パンツは若干短めの方がカジュアル感が出ますね」

吉武:「コーディネートの幅が広いとのことですが、幾つか例を教えてもらえますか?」

坂井:「まずポロシャツと合わせると、無難なクールビズスタイルがすぐにできます。足元はシンプルなレザースニーカーを合わせてはいかがでしょう」

坂井:「また、ドレスシャツでタイドアップすることも可能です。そんなときはローファーが良いですね」

 
 

吉武:「シャツにニットタイを締めて革靴を履けば、きちんと見えます。インナーや靴の種類を変えることで、確かに幾通りものスタイリングが可能ですね。もし、インナーをTシャツにする場合の失敗しないポイントはありますか?」

坂井:「奇をてらうことなく、シンプル・ジャストサイズ・ベーシックカラーを心掛けてください。色違いのTシャツを重ね着すると、ニュアンスが出ます」

吉武:「ビジネスで着用するスニーカーで失敗しないポイントはありますか?」

坂井:「基本はレザー素材がお薦めです。革なのできちんと感もあり、簡単なメンテナンスさえすれば清潔感、きれいめ感が出ます。ワントーンで、色は黒、白、ネイビー、グレーあたりなら間違いありません。ポロシャツコーデではネイビーのバックスキンタイプを合わせました。Tシャツコーデのときはあえてアースカラーのランニングシューズにしましたが、その際はチーフでその色を拾っています。要するに、コーディネート全体で色数を抑えることが大切です。私は素足感覚が好きですが、抵抗感のある方はパンツかシューズの色に合わせたソックスを用意していただければ結構です」

吉武:「最後に、カジュアルスタイルをすっきり見せるポイントはありますか?」

坂井:「そうですね。男性の場合、やはり髪型が大きいのではないでしょうか。あまりカッチリさせる必要はありませんが、額を出すのが良いと思います。多少前髪が長めの方でも、眉間の辺りを大きく出すことで、クリエイティブな中にも、全体的な印象がすっきり清々しい感じにまとまります」

 今回坂井氏にご紹介いただいたカジュアルセットアップは、見た目はスーツで、実際はカジュアルなストレッチ素材。ジャケットにチーフを入れれば、よりきちんと感が出ます。ジャケットにパットが入っていないので、家庭でお洗濯しても型崩れせず、経済性もバッチリの便利スーツです。

 まさに、どの年代のビジネスマンにも抵抗なく着用いただけるのではないかと思います。女性目線、若手目線からも好印象間違いなし、初めの一着にはピッタリです。

 これからは、ルールで決まった服を考えずに着る時代が終わり、自分で考えて選ぶ主体性が求められる時代に突入したといえます。より印象マネジメントが必要な時代になってきました。ビジネスでの服装選びも非言語コミュニケーションです。服装を味方にして、印象マネジメントに取り組んでください。

 最後まで、お読みくださいまして、誠にありがとうございました。日々の振る舞い、発言、行動の積み重ねが、あなたの印象をつくります。本来のあなたのポテンシャルに近づくために、印象で損しないために、ぜひ、印象のセルフマネジメントを一緒に意識し続けていきませんか?