大勢の観光関係者が詰め掛けたフォーラム

 日本政府観光局(JNTO)は2019年9月12日、13日、東京の品川プリンスホテルで「第22回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開催した。このフォーラムは、世界各地にあるJNTOの事務所長らが旅行関係者を相手に現地での取り組みを説明し、インバウンド対策に活用してもらおうというものだ。

想像以上に異なる「国による特徴」

 JNTOは、シドニー、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワ、バンコク、香港、北京、デリーなど世界22都市にある。フォーラムでは、各事務所長らとビジネストラベルの1形態である地域連携プロモーション、MICE(ビジネストラベルの一つ)などの担当者がそれぞれ講演を行った。毎年2月と9月に開催されることが多く、自治体、民間事業者など約600団体が参加している。また、参加者は関心のある国・地域や都市の各事業所長らとの個別相談も可能になっている。

 2018年は152万人が来日したアメリカを見ると、東京と京都が圧倒的な存在感があるとし、平均消費額も全体では17万円だが、アメリカ人は19万円と2万円多く消費することが明らかになった。

 ロサンゼルス事務所は裕福層市場の拡大に取り組みについて紹介したが、裕福層、超裕福層は877万世帯あるがぜいたくの考え方が変化しているとした。例えば、これまでは「高価=価値がある」という考え方だったが、現在はその意味や価値を重視するようになったという。利用する施設も大規模、豪勢なものではなく、ローカルを感じられる小さくて親しみのあるものを好むと語り、こうした変化を捉えた商品の販売が必要だと訴えた。

中国人で訪日したのは全体のたった1%

 日本には2018年に約3100万人の外国人が来日したが、そのうちの約27%、838万人が中国本土からの観光客だ。ただ、2018年のアウトバウンドの人数は中国の人口約14億のうちわずか5%の7342万人で、訪日者数でみればわずか全人口の1%。まだまだ開拓の余地があるとした。

 団体と個人旅行の比率は4:6だったが、個人旅行化が急速に増えるだろうと見ている。

 世界最大の観光大国であるフランスからは年間30万人が訪れているが前年比13.5%増と2桁の伸びを見せた。日本のアニメ、柔道、映画などは大勢のフランス人に親しまれていることから将来性も高い。

 フランス人の特徴として、紙媒体を好み、質問リストや工程表を片手に窓口で話に来る人もいるなど意外にアナログで、自分の手で何でもアレンジしたがると分析。パンフレットなどに「少しでもフランス語を」と担当者が訴えていたが、自分の手でしたがるフランス人の国民性を考えると唯一の障壁かもしれないと語っていた。

オーストラリア人旅行客の83.4%が大変満足

 オーストラリアは1人当たりの消費額が24万円と全市場の中で最も高く、滞在期間も13.3泊とほぼ2週間滞在。66.4%が日本初訪問だが、98%が再び訪問したいと考えている。日本旅行の満足度は大変満足と答えた人が83.4%と……まさに上客だ。和食、伝統文化、歴史的建造物という日本の王道ともいえる観光素材に関心が高く、スキーであれば1年前から計画するなど、決定の時期が早いことも念頭に置くべきと話していた。
 地域連携プロモーションでは、コンテンツを造成する時に「その地域の根ざしたストーリー性やテーマ性」「地元の人々の触れ合いや地域資源の活用」「ユニークさや非日常体験の提供」「希少性、限定感、エクスクルーシブな体験」のいずれかが必要で、さらに日本人向けのコンテンツの流用ではなく外国人向けにカスタマイズするのがキーとなるとした。

海外相手にビジネスをする日系企業も増えている

BtoBデスクの様子

 このフォーラムでは会場のすぐ外に「BtoBデスク」と題した小さなブースを設け、参加企業10社が展示会のように自社商品を紹介していた。

 中文圏からの訪日旅客向け媒体「導遊図シリーズ」、ウェブコンテンツの企画・製作、現地旅行メディアへの広告などを行っている「インフィニティ・コミュニケーションズ」の担当者は「当社では世界11カ国の人々が働いているので、多くの国で対応が可能です。やはり香港、韓国、台湾からの引き合いが多いです」と語る。

 現在はラグビーワールドカップ、来年は東京五輪・パラリンピックが控えており観光客数についてはあまり心配ないが、それ以後の状況について聞いてみると「2025年には大阪万博も控えていますし、大きな天災がなければ、日本のインバウンドは基本的に大丈夫ではないかと思います」と明るい見通しを示した。

インフィニティ・コミュニケーションズが各国で携わっている媒体

 人口9500万を抱えるベトナムは経済成長に伴い、旅行者数も拡大している。2018年は前年比26%増の38万9000人が日本を訪れたが、そのベトナム人向けのウェブメディアを製作している「Loco:Bee」は月間80万ページビューを達成。「ユニークテーブル」という会社は、観光の現場にその時に必要なプロの人材を送るという面白いビジネスモデルだ。観光産業は、最初から外国人をターゲットにビジネスをしている数少ない産業ともいえ、こうした企業は日本の国際化という意味でも重要な役割を果たしそうだ。

 日本は2003年に『Visit Japan』という観光客促進のキャンペーンを始めてから15年以上過ぎており、外国人の大まかなニーズは把握できている。今後は、細かなニーズをどれだけ拾い上げるかがインバウンド拡大のポイントになりそうだ。