見返りを求めない「寄付型」、新製品や新サービスをリワードとして受け取る「購入型」、出資金に応じて金銭的リターンを得られる「投資型」に大きく分類できるクラウドファンディング。企業が活用するには、Kickstarter(アメリカ)やMakuake(日本)などプラットフォームが整っている購入型が最もハードルが低いだろうが、この購入型は比較的簡単に利用できるものの、注意すべき点も多い。

パルコは2014年12月に「BOOSTER」を立ち上げた

 矢野経済研究所によると、国内における2017年度の購入型クラウドファンディングの市場規模(新規プロジェクト支援額ベース)は前年比27.4%増の約80億円に拡大する見込みだ。アメリカでは購入型の市場規模が既に1000億円規模あることを考えると、日本市場の成長余地は大きく、実際、国内では約70社がサービスを展開するなど、クラウドファンディングを活用できる環境は整いつつある。

 ただ、Kickstarterは新しい製品やサービスの創造に焦点をあてているため、その趣旨に沿ったプロジェクトを立ち上げるハードルが高いかもしれないが、日本のクラウドファンディングはキャンペーンやイベント性の高いプロジェクトも対象になるので、柔軟な考えでプロジェクトを企画できる。現時点では小売業者の活用例は少ないものの、面白い活用事例の誕生をきっかけに、一気に浸透する可能性もある。

 オリジナル製品の開発が事業ドメインから外れると考えるなら、クラウドファンディングサイトを魅力的な新製品を探す情報源として活用する手もある。資金調達に成功して新製品を開発できた体験談を聞くと、プロジェクトの成立直後から卸売業者や小売業者による「完成した新製品をぜひ取り扱わせて欲しい」との打診があったことを副次的成果として挙げる企業が多い。リワードとして引き渡す分だけを少量生産したのではコスト高になるが、製造開始前に販売ルートがある程度、読めれば量産のめども立てやすいので、製造業者にとってもありがたい引き合いであろう。

 そう考えれば、当初から製造業者と小売業者がコラボしてプロジェクトを企画するやり方は互いにメリットが大きいと思われる。完成した製品が店舗で販売されることも決まっているなら、プロジェクトが途中で頓挫するリスクも少ないと支援者に安心感を与える効果も期待できる。

 クラウドファンディングサイトの運営側になるビジネスモデルを採用したのが、2014年12月に「BOOSTER(ブースター)」を立ち上げたパルコである。人気の高かった製品をPARCO店舗で展示・販売するなど、小売業者の立場からのモノ作り支援として注目されている。

まずはアイデアを思いつくままに書き出してみよう!

 クラウドファンディングのプロジェクトを企画する第一歩は、アイデアを思いつくままに書き出してみることだ。直接的な目的は資金調達だが、もう少し広くクラウドファンディングの社会的意義に目を向ければ、さまざまな活用アイデアが浮かんでくるはずだ。忘れてはならないのは、クラウドファンディングサイトは、人や情報やアイデアなどが数多く集まる一種のSNSであるという点だ。

 情報収集の方法としては、主要クラウドファンディングサイトを訪問して、プロジェクトの成功・失敗事例を見て回るのがお勧めだ。日本のサイトでは、クラウドファンディングで資金調達したい企業やクリエーターの相談に無料で応じているところも多い。Kickstarterでは、過去にプロジェクトを主宰したクリエーターに自由に質問ができるコミュニティを運営しており、経験者からアドバイスをもらうことも大いに参考になる。

 構想が固まればどのサイトでプロジェクトを立ち上げるかを決める必要があるので、それぞれのサイトの特徴の調査を兼ねると効率的だ。もし、国内のクラウドファンディングサイトだけでも候補が多過ぎて迷う場合は、地元の自治体や商工会議所などと提携しているサイトを優先候補にすればいい。例えば、東京都では一定の条件を満たせばクラウドファンディング利用手数料の半額(最大30万円)を助成する制度を2017年10月から実施しているが、その対象になっているのは、「Readyfor」「Makuake」「FAAVO(ファーボ)」「GREEN FUNDING」「ジャパンギビング」「MotionGallery」の6サイト。プロジェクトの立ち上げには、本人確認書類の提出や銀行口座の登録などの手続きが必要になるので、会員登録に続いて本人確認を早めに済ませておこう。

 最近では金融機関と提携するクラウドファンディングも増えているので、取引のある金融機関に活用の相談をしてみるのも有効だ。提携するクラウドファンディングでのプロジェクトが成功すると、将来の借り入れ条件などが優遇される可能性もある。

アイデアの盗用、契約不履行で訴えられるリスクあり

 プロジェクトシートには、プロジェクトの趣旨から主宰者の理念などのストーリーを記載するが、開発しようとする製品やサービスについて、どこまでアイデアを公開すべきか悩むかもしれない。サイトに掲載されたプロジェクトは、基本的に誰でも閲覧できるので、仕様を詳細に掲載すると、アイデアだけを同業者に盗まれるのではと心配する人もいるだろう。失敗に終わったプロジェクトについても、クラウドファンディングサイト上で一定の期間は掲載されたままになる。

 アイデアレベルでは著作権保護の対象にならない可能性が高いので、アイデアの盗用を防ぎたいなら、プロジェクト公開前に特許や実用新案を申請するなどの自衛手段を講じておくしかない。クラウドファンディングはアイデアの斬新性に対して賛同、支援してもらう一面もあるため、ある程度のリスクを承知の上で情報を開示することは避けて通れないと思っておいた方がいいかもしれない。

 クラウドファンディングを通じた資金提供は支援的な意味もあるが、リワードの提供についてはれっきとした契約であり、リワードが約束通りに提供されないと、支援者から契約不履行で訴えられる可能性もゼロではない。リワードの提供が何らかの理由で遅れる場合は、事前に遅延理由を説明して了解してもらわなければならない。そのやりとりにはクラウドファンディングサイト内に用意された専用コミュニティが使われるが、コミュニティでの不誠実な対応によって「炎上」して、騒ぎが他のSNSに飛び火した例もある。この種の騒動は、ネット上のニュースサイトはもちろん、最近ではテレビや新聞などのマスコミで取り上げられるケースも増えている。ちょっとしたことが発端となって企業イメージが大きく損なわれる恐れもあるので注意したい。

 もっとも、リスクばかり恐れていては、クラウドファンディング活用で遅れを取ってしまうことになりかねない。まずは支援者としていくつかのプロジェクトに参加してみて、クラウドファンディングの仕組みやメリットを体感した上で、最初のプロジェクトにチャレンジしてみてはどうだろうか。