資生堂のアーカイブを見たいとき、静岡・掛川に足を運ぶしかないと思っていた。掛川にある資生堂企業資料館にいけば、資生堂の歩みを知ることができる。静岡はちょっと遠いなと思う私にとって、その一部を東京で見られる機会がやってきた。今、日本橋髙島屋で開催中の「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展は、日本女性の美の変遷を知ることができる。

同じ「美」を提供する企業として髙島屋から誘い

 資生堂の創業は、明治5(1872)年にさかのぼる。

 銀座で日本初の民間洋風調剤薬局として誕生し、明治30(1897)年には、資生堂初の化粧品「赤い水」と呼ばれる「オイデルミン」が発売された。美しいボトルと、赤い色、そして当時最先端の西洋薬学処方に基づく科学的な化粧水で、人気を博したという。その「オイデルミン」は、新化粧液となって今も現役だというから驚きだ。

 以来約150年間、美と健康を追求し続けている。「暮らしの美」を提案する髙島屋から、同じ「美」を提供する企業として誘いがあり、今回、展覧会を開催することになった。

 さて、会場内は、その赤い水「オイデルミン」をはじめ、昔懐かしいボトルや、時代を感じるモデルのポスターなどをじっくりと見ることができる。

 見ていると、「そうそう、そういえばこの頃、こんなメイクをしてた」「眉はこんなに細かった」と一気にその時代の自分に引き戻される。

展示会場の中はこうなっています

 展覧会場の中を歩いてみよう。まず1の部屋は、歴代の「オイデルミン」の展示。

 

 2の部屋は、ご存じ資生堂の雑誌「花椿」が並び、圧巻だ。

 

 3の部屋は、懐かしいモデルたちのポスターが張られている。ポスターを見ていると、その時のCMの音楽まで聞こえてくるような気がする。時代を先取りし、女性たちの美をけん引してきた企業の矜持が見られる。

 

 4の部屋はロングセラー商品をメインに、美しい商品の数々が並ぶ。あれもこれも見たことがあるものばかり。「おばあちゃんの鏡台に置いてあったな」とか、「高級せっけんはよくお歳暮などで頂いた。球のせっけんは転がって使いにくかった(苦笑)」など懐かしい。

 
贈答に使われた高級せっけん

 5の部屋は資生堂の歴史を時代の変遷とともに紹介。

 6は資生堂意匠部デザイナーの山名文夫氏のデザインや原画が見られる。

 7のセルジュ・ルタンスは、資生堂のメイクアップクリエーションを長く手掛けるフランスのアーティストでイメージクリエーターである。セルジュ・ルタンスの世界は、まさにアートそのものだ。

 8、そして香水瓶。美しい香水瓶を見るだけで、貴婦人になったような極上の気分。

 

 9、「美の未来」の部屋は、ロボットが描き出す女性の顔や椿などのインスタレーション。

初日には5人のモデルがお出迎え

 オープニング初日には5人のモデルが、お客さまを出迎えた。

 

 左から、まず大正ロマンのモダンガールが登場したのは、第一次世界大戦後の1920年代。細く下がった眉、目尻にシャドーが入り、唇は薄くおちょぼ口、資生堂が提案した「耳かくし」という髪型が大流行。1923年には関東大震災が起きた。

 映画が最大の娯楽だった頃、銀幕のスターが憧れの的。角のある太い眉、アイラインでキリっと目元を上げ、さながらエリザベス・テーラーのよう。1939年、第二次世界大戦が始まり、45年の終戦まで続く。53年にはテレビ放送がスタートし、58年に東京タワーが完成。日本人は戦後が終ったと、明るい未来を思い描いた。

 1960年代。高度経済成長期にはバービー人形のようなメイクに。上まぶたに二重のライン、大きなつけまつげ、目を大きく見せるためのアイメイク、それまでは色白が「七難隠す」と言われていたが、この頃、日本史上で初めて小麦色の肌が流行した。ビートルズが来日し、ツイッギーが登場したのもこの頃。

 ヒッピースタイルの1970年代。70年には大阪万博があった。ベトナム戦争や公害問題など経済成長の負の側面が見え始めた時代。反戦運動からヒッピーが登場した。シャドーはぼかし、細く薄い眉、退廃的な雰囲気でフォークロア調のカーリーヘア。

 そして、日本人デザイナーやモデルがパリコレなど世界を舞台に活躍し、日本人独特の美しさが見直された。切れ長な目元をアピールしたアイライン、赤い唇、黒髪のボブ、パリコレにデビューしたばかりの山口小夜子が登場したのは1973年。76年にはロッキード事件が起きる。

IoTパーソナライズ・スキンケアブランドの体験コーナーも

 また、この展覧会ではIoTパーソナライズ・スキンケアブランド「Optune(オプチューン)」の体験コーナーもある。

 

 一人一人、毎日変わる女性の肌と肌環境に合わせるスキンケアで、2019年7月に登場したばかり。スマートフォンにダウンロードしたアプリで肌測定をし、そのデータや睡眠情報、温湿度などの環境データをもとに8万パターンの中から、その時々に合わせたスキンケアを、専用のIoTマシンから提供するというもの。時代は変わったものだ。

 まずは、自分の肌をスマホのカメラで撮影し、水分量、皮脂量、毛穴の目立ちなど肌状態を測定する。次に今の気分を選び、その他の温湿度や紫外線などの外部環境データと睡眠の質がチェックされ、クラウドに集められたデータから、その日の肌に必要なスキンケアが抽出される。どのカートリッジから、どのぐらいの量が必要かマシンに送信されるので、マシンに手を入れるだけで必要な分が出てくる。

 私も体験してみたら、3種類の化粧水や乳液、美容液などが出てきた。まずそれを手の甲に塗ってみた。次に手を差し込むと出てくるのは、下地クリームのようなもの。紫外線に応じてUVの強さなどが自動的に変化して抽出される。それも手の甲に乗せて1日いたが、実に肌の調子がいい。

 こんなことなら、顔に塗りたかった……。

 月額1万円(税別)で、マシンにセットされた5本のカートリッジの残量は自動で管理され、なくなる前に送られてくる仕組み。料金に全て含まれている。対象は子育て中や仕事で忙しい世代を想定。私自身、とても興味があるが、月に1万円、化粧品は買わないから悩みどころ。

 この他、オリジナルグッズ販売や、髙島屋のマスコットキャラクター「ローズちゃん」のスタンプラリーなど、楽しめる内容になっている。

 

「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展日本橋髙島屋で9月29日まで開催中。その後、大阪、名古屋、京都、横浜へと巡回。