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 国内ユニクロの坪当たり在庫が18年8月期末で唐突に2.4倍に膨らんだ時は驚いたが、これは在庫計上基準の変更によるもので、それにより店舗在庫の1.5倍も国内倉庫に積み上げていることが分かった。「ダム型サプライ」のユニクロならさもありなんという備蓄率だが、他の大手チェーンではどうなのか。ECも絡んで在庫はどこにどんなバランスで持つのが正解なのだろうか。

国内ユニクロの在庫急増事件

 ファーストリテイリングは18年8月期末から国内ユニクロ/ジーユーの在庫計上基準を変更したが、SPAの在庫会計としては耳を疑うものだった。

 同社決算説明会資料によれば、『従来は国内倉庫から店舗へ商品を出荷した時点で在庫としてBSに計上していたが、18年8月期末より商社との契約の一部変更に伴い、海外から国内倉庫に到着した時点でBSに計上するように変更した』と説明されているが、これでは物流過程の在庫管理を商社に依存していたと受け取れる。事実、大和ハウス工業と組んだ有明倉庫プロジェクトが混乱の果てに行き詰まった時、ユニクロの担当執行役員は『物流パートナー企業に業務を丸投げしていたため、現場の状況もサプライチェーンの全体像もつかめてなかった』と吐露している。

 アパレル生産のプロたる“匠”を海外の工場に張り付けてもの作りのプロセスを極めているユニクロが工場から店舗までの物流を外部に丸投げしていたとは信じ難いが、同社がそう言っているのだから間違いあるまい。リードタイムの長い大ロット海外生産ゆえ、店頭投入の数カ月も前に製品が到着して国内倉庫に積み上げられるケースも少なくなかったようだ。

 海外生産品物流の似たような外部依存は量販店業界では一般的だし、SPAといわれるアパレル事業者でも物流の商社依存は珍しくないが、まさかユニクロがまだ脱却できていなかったというのは驚きを持って受け取られたに違いない。

 この計上基準変更により、ユニクロで813億円、ジーユーで110億円、計923億円も期末在庫が増え、ユニクロの坪当たり在庫は81.5万円と一気に2.4倍にも膨れ上がった。旧基準では5.2回だった商品回転も2.17回に急落したが、これが補給在庫を消費地倉庫に積み上げる「ダム型サプライ」の実態値と思われる。

 同様な「ダム型サプライ」が指摘される良品計画(19年2月期)の商品回転も単体では4.95回転だが連結では2.44回に落ちるから、ソーシング系連結子会社が補給在庫を倉庫に積み上げていると推察される。良品計画でソーシング系連結子会社が担う役割をユニクロでは外部の商社が担っているのだろう。

 とまれ、基準変更によって2つのことが露見した。1つは物流の外部依存とサプライチェーンからの乖離、1つは在庫の配備バランスだ。

EC拡大で後退配備(倉庫シフト)

 戦争でも物販のロジスティクスでも前進配備か後退配備か、配備のバランスが勝敗を分ける。前進配備するほど正面戦力は充実するが状況対応の補給力や二次展開力が落ちるから、地上戦では前進配備率は3分の1ほどに抑えて後方配備を厚くするのが定石とされる。店舗小売業でも売場に商品を積み上げるほど売上げは伸びるが、在庫が偏在してロスが肥大し多店舗の販売消化に対応する補給も手薄になるから、前進配備には限界がある。

 アパレルチェーンの場合でも、スルー物流で100%前進配備(店舗在庫)というZARAのようなケースは極めて稀で、店舗在庫と倉庫(DC)在庫の比率はトレンドを追うタイプで80対20、補給する定番比率の高いタイプでも60対40ほどだったが、近年はECの拡大で倉庫在庫比率が高まっていた。『高まっていた』と記したのは、それも過去形になろうとしているからだ。

 C&C(クリック&コレクト)以前、EC受注商品は出品社やECプラットフォーマーの倉庫から出荷されていたから、商品政策がトレンド型か補給型かを問わず、EC比率が高まる分、倉庫在庫比率が高まるのが実態だった。店舗販売だけのときに店舗在庫が80/倉庫在庫が20だったチェーンのEC比率が15%になれば、倉庫在庫が35に増えて店舗在庫は65に減るというのがそのパターンで、もとより倉庫備蓄比率が高かったユニクロなど直近では倉庫在庫が60まで肥大していたのは前述した通りだ。

 

C&Cで店舗の在庫も売上げ回復

 ECが増える分、在庫が後退配備になっていくと売場への商品供給が薄くなって機会ロスが広がり、店舗の売上げは落ちていく。多数のブランドに需要が拡散しているアパレルの場合、ECに顧客が流れるというより商品供給が細って売上げが落ちるので、EC向けに在庫を積んでも店舗向け在庫を減らさなければ売上げは減少しないが、売れ筋がECに抜かれると影響が及ぶ。EC比率が10%ぐらいまではECサイトのウェブルーミング効果(店舗へ誘導する広告効果)もあって売上げは減少しないが、それを超えると減少が始まるようだ。

 ECと店舗販売の狭間に立たされた小売りチェーンの結論が店舗をECの物流と顧客サービスの拠点とするC&Cで、とりわけ店在庫をEC受注に引き当てて店で渡したり店から出荷すれば店舗への在庫配分が回復して機会ロスも減り、店受け取りに訪れるEC顧客が店舗の顧客となれば売上げも増える。

 SPACメンバーの平均では、店舗だけで購入する顧客/ECだけで購入する顧客/どちらでも購入する顧客の比率は7対2対1、年間の購入金額は100対67対220だったから、ECだけで購入する顧客が受け取りに訪れて店舗でも購入するようになると、店舗の売上げは最大28.3%も増える。皮算用ではあるが、C&Cがいかに店売上げに貢献するか理解されよう。

 C&Cには低コストな店舗物流(B2B)で高コストな宅配物流(B2C)を削減する効果もあり、ウォルマートなど店受け取りが無料になるばかりかかさ張る商品は値引きまでしてくれる。C&Cは顧客にとってもメリットが大きく、送料無料や値引きに加えて受け取りが早くなり、お試しやフィッティング、お直しのサービスも受けられる。そんなC&Cに特化したお取り寄せお試し・受け取り専門ウェブルーミングサロン「ノードストロム・ローカル」が注目される所以だ。