8月27日、HLコーポレーションで開催された記者発表会で。写真右が石黒崇社長

 慢性疲労や睡眠不足に悩む日本人が年々増える昨今、ウエルネスをキーワードに新規事業に参入する繊維・アパレル企業も増えている。婦人服の重衣料で国内トップを誇る縫製会社、小島衣料(岐阜県)もその一つ。ヘルスケアビジネスを手掛ける子会社のHLコーポレーションが、着るだけで疲労回復や安眠効果を促すリカバリーウェアを開発し、機能性ウェア市場に本格参入した。

 9月3日からオリジナルの機能性ウェアブランド「リフランス」の販売開始、販路は自社ECショップや東急ハンズ新宿店などだ。「リフランス」は7種類の天然鉱石の混合体「プラウシオン」をコーティングした特殊な繊維や生地を使用しているのが特徴。プラウシオンは遠赤外線を放出して副交感神経に作用することで筋肉の緊張をほぐし、血流を改善する。その結果、疲労回復や安眠効果が得られるというもの。効果は学術的な立証データがあり、一般医療機器として申請することで、他社との差別化を図るという。

首こり、肩こりに特化した一般医療機器ストール「ミネラルストール」1万2000円。素材はコットンリネン

第2次ブームを迎えるリカバリーウェア市場

 機能性ウェア市場に新規参入した理由について、同社の石黒崇社長は、市場の拡大と自社製品の優位性を挙げる。「日本人の睡眠不足を背景にスリープテック市場が今、活況を呈している。その一つがリカバリーウェア。アスリートのみならず、ビジネスパーソンや主婦層、高齢者まで裾野が広がり、潜在顧客が非常に多い。にもかかわらず、先行企業でも売上高は10億円未満で、新規参入の余地があると判断した」。民間シンクタンクの矢野経済研究所によると、リカバリー・コンディショニング市場を含むスポーツウエルネス関連市場は、2020年に1兆円を突破する見通しだ。

 従来のリカバリーウェアはコンプレッション(着圧)タイプが大半で、締め付け感があり寝るときには着用しづらかった。一方、アンダーアーマーやスキンズのリカバリーウェアは運動後の疲労感軽減を目的としているため、一般層向けではなかった。

 昨今増えているのが、素材の力で疲労回復や睡眠を促すタイプだ。大手スポーツメーカーのゴールドウインやアンダーアーマーの他、イオンも参入し、市場には続々と新商品が登場。また、東急ハンズ新宿店の寝具売場や大手百貨店でリカバリーウエアコーナーが設置されるなど、第2次リカバリーウェアブームが到来している。

 この状況下、同社も特殊素材「プラウシオン」の効果を生かしたリカバリーウェアを開発。「スポーツ後の疲労回復から睡眠まで対応している。しかも、合繊だけでなく、綿など天然繊維に加工できるのが大きな強みになっている」(石黒社長)

社長自身が効果を実感、リスクの低いパジャマで参入

 石黒社長がプラウシオンに着目したのは、2017年3月のプラウシオンテックスの展示会がきっかけ。プラウシオンをコーティングした生地を腕に掛けただけで、血流測定器の数値が良くなった。次に枕カバーを購入して使ってみたが、そのときは効果を実感できなかった。そこで、プラウシオンを加工した生地を買い取り、パジャマの試作品を製作。「早速、身に着けて寝てみると、ぐっすり熟睡でき、悩みだった不眠が解消された」と石黒社長は振り返る。

 自信を強めた石黒社長は、同年10月にHLコーポレーションを設立。「企業は永遠ではない」という考えから、新規事業を模索していた時期でもあり、失敗も覚悟の上での事業化だったという。翌18年1月には、「リフランス」ブランドを立ち上げ、スリープテックウェアのパジャマを商品化。パジャマにしたのは、流行に左右されず、在庫リスクが少ないからだ。

 ミャンマーの自社工場で2000枚を製造し、自社サイトでテスト販売したところ、2万円の高価格帯ながら、1年間で1000枚程度の販売実績を上げた。購入者の中には、肩こりや冷え性などの悩みを抱える人が多く、まとめ買いも多い。しかもリフランスの返品率はゼロ。「このパジャマでないともう寝られないという熱狂的なファンもいる」と石黒社長は胸を張る。

 今年5月には、ストールの商品化に向けてクラウドファンディングも実施。30万円の目標金額を大幅に上回る100万円強の調達に成功した。リカバリーウェアの市場性と自社ブランドの優位性に確信を得たことから、商品ラインアップを拡充し、本格展開となったわけだ。

今秋よりファッション性も兼ね備えた新商品5アイテムを順次発売。商品ラインアップを増やし、幅広い顧客を取り込む狙

ワンマイルウェアをコンセプトに新規顧客を獲得

  今秋発売する新商品はパジャマとルームウェア、目の疲れを軽減するアイマスクの計5型。既に展開しているパジャマ、ストールと合わせて商品ラインアップを8型に拡充し、就寝時から休養時まで着用シーンを広げることで新規顧客の獲得を狙う。

 スポーツウェア発のリカバリーウェアが多い中、同社では「ワンマイルウェア」をコンセプトに、ファッション性も兼ね備えた商品を展開する。

 中でも注目は、島精機製作所の無縫製技術で編み上げた「ホールガーメント」のラウンジニットだ。1着丸ごと編み上げるので縫い目が一切なく、肌へのストレスがないのが特徴。シルエットがすっきりしている上、寝返りしやすいように脇スリットが入っている他、脇下をメッシュ状に編み、汗や熱を逃す。

「肌ざわりがよく、普通のセーターとは違う感覚なので、素肌に着てほしい」と石黒社長。綿100%の長袖トップスとパンツの展開で、いずれも税別1万8000円。10月上旬の発売を予定している。

ホールガーメントをリカバリーウェアに採用。縫い目がなく、着心地抜群の無縫製ラウンジニットはルームウェアやワンマイルウェアにお薦め。トップス、パンツともに1万8000円

 最もニーズがありそうなTシャツは、ユニセックスのクルーネック半袖Tシャツと、レディス向け7分袖ボートネックTシャツの2型。いずれも綿100%で税別1万円。

パジャマの代わりにTシャツやジャージを着用して就寝する人には、綿100%の天竺編みTシャツを提案。半袖、7分袖ともに1万円

 パジャマの新商品「ふんわり3重ガーゼパジャマ」には、ウールのような軽くソフトな着心地と滑らかな肌触りを兼ね備えた綿糸「ラブリーゼ」を使用した。ナイロンを芯に綿を巻き付けた構造の糸で、空気層を多く含むため、保温性が高く、冷えに悩む人にお薦め。ナイロン入りなので吸水速乾性、通気性に優れ、シワにもなりにくい。レディス2万2000円、メンズ2万3000円。

ふんわり3重ガーゼパジャマは、生地にウールのような軽くソフトな着心地と滑らかな肌触りを兼ね備えた綿糸を採用。レディス2万2000円

 さらに、プラウシオンの効果を気軽に体感できるアイテムとして、目の疲れを軽減する快眠アイマスクも発売。価格は4500円だ。

目の周りを覆う内側に、疲労回復や血流を促す特殊繊維を使用したスリープマスク4500円

 同社は、自社ECショップに加え、19年4月から実店舗での販売も強化している。東急ハンズ新宿店(東京)やイオンモール名取(宮城県)をはじめ、今後も販路を拡大し、顧客との接点を増やす。さらに、HLコーポレーションが独占的に扱う布帛製品は、要望に応じてOEMにも対応する。以上の目論見から、2020年2月期売上高は、HLコーポレーション単体で1億円を目指す。

  • 企業名/株式会社小島衣料  
  • 代表者/代表取締役 石黒崇
  • 所在地/岐阜県岐阜市粟野西5-684
  • 資本金/1億3230万円
  • 従業員数/61人(19年4月・パート、アルバイト含む)