『食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が成立し、2019年5月31日に公布された。これを受けて、チラシ・買物情報サービス「トクバイ」を運営するロコガイド(2019年8月、トクバイから社名変更)は、同社のサービスを利用する全国の小売業175社を対象に、食品ロス削減施策の実態調査を実施。「トクバイ」を利用している10代~70代の生活者1791人を対象にした食品ロスに対する意識調査も行った。

小売業者の61.2%が対策を実施と意識は高い

 調査の狙いについて、同社広報の杉田園佳さんは、「食品ロスは事業者、生活者双方から発生します。『トクバイ』というサービスは、事業者と生活者をつなぐ役割を担っており、『食品ロス削減推進法』の法案が通ったのを機に、双方の関心や意識を知る目的で調査を行いました」と話す。

 まず、小売業対象の調査から見てみよう。「『食品ロス』に対する現状について教えてください」の質問では、「食品ロスの量が多いので対策を行っている」(26.9%)、「食品ロスの量はあまり多くないが、対策も行っている」(26.3%)、「既に食品ロス削減のための対策を実施中で順調に廃棄量も減っている」(8.0%)と、食品ロス削減に向けた施策を実施しているところが61.2%。「食品ロスが多いので早急な対策が必要だと思っている」と、実施を前向きに考えているところの12.0%を合わせると、73.2%が食品ロス削減に高い意識を持っていた。

「2019年5月に成立した『食品ロス削減推進法』をきっかけに、これまで以上、または追加で行っている施策がありますか?」の質問には、24.6%があると答えている。

 この数字について、「法案が後押しになるかと思いましたが、大きな影響はなく、実施するところは前々からやっていたという実態が見えました」と、同社 広報・サポート室の齋藤慶子室長。

 現場との接点が多い、同社 ビジネス企画開発部の中村耕史部長は、「スーパーマーケットにとって、廃棄ロスは利益率に直結します。特にここ数年は中食が唯一伸ばせる分野で、利益率も高い。競合との差別化や、店舗での作りたて惣菜でコンビニのパウチ惣菜に対抗する意味でも、惣菜に力を入れています。その一方で、惣菜は消費期限までの期間が短いので、廃棄率が最も高い部門でもあります。中食の廃棄を減らせば利益が上がるわけで、今回の法案が成立する以前から、廃棄ロス削減対策に取り組んできたところが多いのでしょう」と分析する。

施策では段階的値引きが最多で、効果を実感する企業も

 前の質問で「施策あり」と答えた小売店には「具体的な施策を教えてください」(複数回答可)と聞いたところ、「段階的値引き」(74.4%)、「仕入れ量の調整」(62.8%)、「フードバンクなどへの寄付」(34.9)%、「タイムセールで大幅値引き」(18.6%)、「ダイナミック・プライシング」(18.6%)などが挙げられた。

※「段階的値引き」は惣菜や生鮮ではパックしてからの経過時間、日配品などでは消費期限までの残り日数によって、値引き率を変えていく方法。/「ダイナミック・プライシング」は同一商品やサービスの価格を需要と供給に合わせて変動させること。

「店舗は消費期限が近いものを手前に陳列しますが、日本は“鮮度信奉”が強く、売場の奥に手を突っ込んで消費期限までの残りが長い食品を購入する生活者が多い。その結果、消費期限までに販売できなかった食品がロスになってしまう」と中村部長。

 これに対して、斎藤室長は「生活者は新しいものがいいと刷り込まれている。段階的値引きで、こうした習慣が変われば、食品ロスも減ります」と話す。

 このアンケートではさらに「施策を実施したことで食品廃棄量に変化はありましたか」と聞いているが、段階的値引きを実施した店舗は効果を実感している。「お客さまは鮮度が落ちていることが見て取れる大幅に値下げした見切り品より、割引率が低くても品質に遜色のない段階で値引きした商品を買う方が抵抗感がない」と杉田さん。

 中村部長は、「できるだけ値引率が少ない段階で買っていただきたいというのが、小売業の本音で、それが時間を追って値引率を細かく変えていく理由でもあります。客層や営業時間によっても変わってくるのでしょうが、皆さん、どのタイミングでどの程度の値引率が効果的かを検証されているように思います。客数と在庫量の関係で値引率を変えたり、客足の伸びない雨の日は値引率を上げるところもありますが、そうなると、人材不足の中、オペレーションの負荷がかかる」と、課題も指摘する。

『食品ロス削減推進法』を知らない生活者が約半数

 生活者対象の調査では、「購入した食材を全て使い切っていますか?」の質問に対して54.4% が「使い切れていません」と回答。家庭における廃棄ロスの多さが、改めて浮き彫りになった。

 そして、「賞味期限間近な商品や、形が悪い商品でも、“通常より特価”であれば買いたいと思いますか?」という質問には、実に96.5%が「買いたいと思います」回答。「少しでも安く買いたいという心理が見て取れ、特価であれば、買う予定がないものも買ってしまうと推測されます」と杉田さん。

 だが、「『食品ロス削減推進法』について知っていますか?」の問いには、「知りません」が47.8%と約半数に及び、関心の低さが浮き彫りになった。

小売業者は「お得をフックに廃棄ロス削減を!」

 この2つの調査結果からは、「生活者は購入した後の廃棄ロスは減らしたいという意識はあるものの、店舗の食品ロス削減には無関心で、食品ロス削減と購買行動がセットになっていません。だから、社会問題にもなった恵方巻きが最後は半値になっても、廃棄ロス削減に協力するために買おうとは考えないのです」と斎藤室長。

「こうした意識を変えていくのも、事業者と消費者をつなぐ『トクバイ』を持つ弊社の使命の一つ」(杉田さん)との考えのもと、同社は、これまでも食品ロス削減への理解を深め、行動してもらうために、トクバイユーザーに向けたオウンドメディア「トクバイニュース」で、食品ロス削減レシピや、食材の保管や保存方法などの情報を発信してきた。「今後は、『食品ロス削減推進法』や食品廃棄ロス削減の重要性を、『トクバイニュース』でもっと伝えていきたい」と杉田さん。

 店舗の食品ロス削減に向けては、中村部長はトクバイ掲載の情報活用を進める。「生活者は、お得情報に敏感です。7月から『トクバイ』にタイムセールを掲載するようにしました。同様に、『トクバイ』を通じて、賞味期限が〇日を切ったら割引価格にしますよ、こういう条件の商品を購入するとお得ですよ、この時間は値引きするのでお得ですよ、といった情報を発信し、お得をフックに廃棄ロスを減らすのも一つの方法だと思います」と語る。

 今回の取材を通して、改めて次のことの必要性に思いを巡らせた。それは『生活者も、世界に目を向けると飢餓に苦しむ人たちが数多くいるのに、日本ではまだ食べられる食品が大量に破棄されている現実を直視する必要がある。そして、店舗の破棄ロス削減は私に関係ないと、消費期限の残りが長い食品を引っ張り出すことはやめるべきであろう』ということだ。