左:ヤフー(株) 代表取締役社長 CEO 川邉健太郎氏 中央:(株)ZOZO 代表取締役社長兼CEO 澤田宏太朗氏 右:(株)ZOZO ファウンダー 前澤友作氏

 ヤフーは9月12日、ファッション通販サイト 「ZOZOTOWN」を運営するZOZOを、株式公開買付けで子会社化すると発表した。買付予定数の上限を1億5295万2900株(50.1%)に設定、買収額は約4000億円になる見込みだ。同日に行われた記者会見では、ヤフーの川邉健太郎社長、ZOZOの澤田宏太郎代表取締役社長兼CEOと前社長の前澤友作氏が登場し、今後の展望を語った。

なぜ今、ヤフーが4000億円という大金を投じたのか?

 ヤフーがZOZOに約4000億円という大金を投じた理由として、現在注力しているeコマース事業の強化が挙げられる。ヤフーは広告事業をメインとしているが、これからはeコマース事業を大きな柱にしていきたいという思惑があり、今回の買収はその戦略に乗っ取ったものである。

 2013年10月に新戦略として「eコマース革命」と銘打って進めた、「Yahoo!ショッピング」のストア出店にかかる初期費用、月額費用、売上げロイヤルティを無料にする施策や、17年6月よりソフトバンクのスマートフォン利用者向けのキャンペーンとして行う、「Yahoo!ショッピング」での買物で、いつでもポイントを10倍獲得できる施策をはじめとした数々の取り組みが功を奏し、eコマース事業は15年度より、4年連続で前年度120%以上の成長をしている。

 そして今秋、PayPay、ヤフーのユーザー向けに「PayPayモール」という新たなユーザー体験を持ったeコマースサービスを立ち上げるが、そのファッションカテゴリーにZOZOTOWNを入れて、さらなる利用者の増加を狙っている。

 eコマース事業における「衣類・服装雑貨等」カテゴリーの市場規模は1兆7728億円(18年)と最も大きい市場規模であり、ヤフーのeコマース事業のさらなる成長のためには、ファッションカテゴリーで、より魅力的な商品を取りそろえる必要があると考えたのだ。 

 

 また、「ヤフーのメインユーザーは30~40代が中心、ZOZOTOWNは20~30代の女性が中心となっており、利用者属性が違うため両社ともに顧客基盤の拡大が見込める」と川邉氏は語った。

 川邉氏は続けて、「現在、両社ともにeコマースの取扱額は伸びており、合算で2兆円を超える。これにさまざまなシナジー効果を合わせて取扱額を大幅に増加させた結果、2020年代前半には国内eコマース取扱高ナンバーワンを達成させたい」と意気込んだ。

前澤氏は退任し、澤田氏が新社長に

 新しく代表取締役社長兼CEOとなる澤田氏は入社11年目。「これまでZOZOTOWNの事業責任者を務めて、マーケティングやデータの管理などの業務を行ってきた。ブランドとの窓口以外の業務の全容を把握しており、新社長という職にふさわしい人物です」と前澤氏は語る。

 澤田氏は2006年、スタートトゥデイ(現ZOZO)にコンサルタントという立場として関わったことから始まり、2008年には内部に所属してZOZOTOWNなどの事業を推進してきた。

 

 コンサルタントとしてキャリアをスタートしたこともあり、「リアリスト」「ニュートラル」「安定感」がモットー。ここまでの話を聞く限り前澤氏と真逆のタイプだと思うが、澤田氏自身も「前澤とは真逆だと思います。前澤は既成概念をぶっ壊してどんどん進んで行った結果、今のZOZOという会社があるのは紛れもない事実です」と語った。

 続けて、「しかしその一方で会社は大きくなり、業界や社会に与える影響も大きくなりました。ここから先の成長領域は安定感というものが重要になってきます。安定的な成長を実現させるためのパートナーとして、ヤフーさんがベストだという判断をしました」と語り、ヤフーと業務提携の理由を説明した。

 最後に澤田氏は「類まれなセンスやアイディアの持ち主である、前澤を失うということは会社にとっては言葉にできないほどの大きな損失です。これは素直に今後の課題であることを認めますが、幸いにも突拍子もないアイディアを持っている社員や、何かを挑戦したくてうずうずしている社員がZOZOにはたくさんいます。そのようなアイディアの種や挑戦心を経営者として大切にしながら、これまで以上に果敢に事業を推進していきます。このことから分かるように、トップダウン経営から社員一人一人の力を生かして組織の力へ生かす経営に移行していきます」と、今後の経営方針を発表した。

前澤氏の今後の夢とZOZOの未来は?

 

 12日の資本業務提携契約の締結と同時に前澤氏は代表取締役社長を辞任した。今回の買収について前澤氏は「ヤフーさんとZOZOでとても良いシナジー効果が生まれるのではないかと思い、今日まで進めてきました。これからどんな成長をできるのか、楽しみが多くあります。僕自身、21年間ZOZOの代表取締役を務めてきましたが、最後に大きな決断ができたことをうれしく思うと同時にヤフーさんとの成功を祈るばかりです」と語った。

 続けて「この21年、自分の好きなことを突き詰めてやっていたら社長になり、気付いたら大きな会社になっていた。ここにきてZOZOは、直面したいくつかの課題があったのだと思います。これから成長していくにあたって、ファッション好きの方だけではなく、あらゆる皆さまに届けるサービスにしてかなくてはいけない。そういった意味でヤフーさんとの提携によってZOZOの未来は大きく開かれるものだと思います」と述べて、ヤフーとの提携により、ZOZOのさらなる可能性を感じていた。

 また、前澤氏といえばZOZOの経営以外にもさまざまなことに挑戦してきたことで知られている。話題となっている宇宙への渡航については、2023年に月への渡航を計画しているが、それ以外にもう1回宇宙に行くと会見で発表した。また、新事業についても内容は決まっていないが、もう一度ゼロから作っていく構えだ。

 会見はこれで終わらなかった。何と前澤氏の紹介によりソフトバンクグループ代表取締役兼社長の孫正義氏が登場。そこで、孫氏から今回の買収の経緯が話された。

 以前から親交のある孫氏にZOZOの売却の相談をしたところからこの話は始まった。

左:ソフトバンクグループ(株) 代表取締役会長兼社長 孫正義氏 右:(株)ZOZO ファウンダー 前澤友作氏

 孫氏は、「資本業務提携するにあたって、前澤君が社長としてやった方がいいのではと言ったが、僕はスパッと新しい人生に行きたいんですと話していました。月に行くための訓練や彼女とも楽しく生きたいという自由奔放な生きざまがカッコよく映りました。会社起業前にロックバンドもやっていたこともあって、やっぱりロッカーなんですね。そういう意味では、月に飛んでいく人と、足が地に付いている人(澤田氏)という役割分担だったと思います。ヤフーもZOZOも両方でシナジー効果が生まれると思います。私は口出しはしないと川邉社長に伝えました。前澤君とはこれからも友人として関係を続けていきたいです」と語り、あくまでもヤフーとZOZOの両社で業務を進めていくことを強調した。