親戚から聞いた話です。新しくお墓を準備することになり、いろいろと資料を取り寄せたそうです。最近では核家族化の影響もあり、「家」単位で代々管理していく一般墓だけでなく、草花に囲まれた中に埋葬できる樹木葬、ロッカーや仏壇などに納骨する納骨堂など、お墓にもいろいろな種類が増えています。

 また墓地の場所も必ずしも自宅の近隣ではなく、故人の好きな土地に埋葬するケースも増えてきているそうです。

 親戚は、ペットと一緒に入れるタイプのお墓が絶対条件でした。当初は予算が少なくて済む樹木葬の墓地を考えていたとのこと。家から車なら数分の距離にあり、お墓参りもしやすい。きれいに整備されていてまるで公園のような自然な雰囲気にも引かれており、ほぼ確定していたそうです。

 ところが最終的に選んだのは、自宅から車で1時間弱かかる、いわゆる従来型のタイプの永代供養墓のある墓地でした。

条件よりも重視された「感情」

 

「納骨に立ち会うことはできない」と言われたことが、最有力候補として検討していた樹木葬の墓地を選択肢から外すきっかけになったそうです。その墓地は遺骨を預けた後は他の遺骨と同じタイミングで管理者が納骨するため、遺族は納骨の際はノータッチで全てお任せになると説明を受けたとのことでした。

 樹木葬の墓地は立地や金額、雰囲気と条件はほぼ親戚のニーズを満たしていました。ただその1点が心情的にどうしても引っ掛かり、結局はお墓の条件を見直し、全く別の墓地を選んだと話していました。

 これはあくまでも1ケースであり、どの形式の墓石が最適かは人によって異なると思います。逆に時間を取られず、納骨の立ち会いが不要な方が楽だという考えの人もいるでしょう。ただ、新しくて見た目のきれいなものが必ずしも選ばれるわけではない、そして立地よりも感情が重視されることもあるのだと感じられた出来事でした。

人間の選択は合理的なものばかりではない

 

 お墓は年に何回も行くことはありませんが、基本的には毎年通い、末永く付き合っていく場所です。アクセス良好であるに越したことはないのでしょうが、今回のように定期的に利用する場所が遠いというのは、往々にして起こり得ます。

 私たちの日常生活を考えても、近くに同系列のお店はあってもついつい少し離れた店にまで行ってしまう、決済手段は現金のみで特に割引もないけれど利用頻度が高いといった店があるのではないでしょうか?

 何より今回話を聞いていて興味深かったのは、当初はあまり考慮していなかった・気付いてもいなかった点が、比較検討して詳しく明らかになるうちに新たなニーズとなった点でした。

 機械は合理的な判断を得意としますが、人間の感情はとても複雑です。気に入った商品が見つかったことで当初の購入予算が大幅に上がってしまった、詳細な説明を受けることで新たなニーズが生まれたという経験は、私にも何度もあります。条件がほぼ全て合致していても、たった1つの点が気になり、あまりに予想もしていない結果を導き出したりします。

 新しいショップや商品、技術はそれだけでも価値があり、いつも人の注目を引きます。しかし、ただ「目新しさ」を取り入れただけでは、多くの人の心はつかめないのかもしれないと私は考えています。人間が感じること、口には出さなくても考えていることを大切にしていれば、むしろ店やサービスに多少の不便や古さがあっても、選んでくださるお客さまは意外といるのではないでしょうか。

 もちろん価値を感じる「何か」は、人によって変わるので絶対の正解はありません。そこで働く人の魅力かもしれませんし、唯一無二の商品かもしれません。最新技術を取り入れる余裕がない店でも、いつも自分たちが当たり前だと思っていることに改めて目を向けてきちんと打ち出していけば、意外と大きな魅力につながるのかもしれません。