アスレジャー台頭によるダメージも違った

 米国ではアスレジャー市場が拡大してもジーンズ市場は大きくは落ち込まず、17年以降はローカル回帰やワークウエア人気で回復しているが、わが国のジーンズ市場は縮小が止まらず、17年以降もヴィンテージデニムやダメージデニムなど点の回復はあっても市場規模の回復は見られない。この差はどうして生じたのだろうか。

 SPAや量販チェーンのPBジーンズが大勢を占めるのは米国とて同様で、NBからPBへの交代はわが国よりはるかに早かった。全米ベースの統計はないが、73年まで「リーバイス」の全ライン/サイズをそろえていた「GAP」のジーンズPB比率が過半を超えたのは70年代末期、100%になったのは92年だから、「ユニクロ」が100%PBになった00年より10年近く先行している。

 米国でもPBジーンズは「リーバイス」などNBジーンズのトレードオフ(お値頃な焼き直し)から始まり、90年代後期からデザイナージーンズ、00年代はセレブジーンズの影響が強まったが、リーマンショック以降はアスレジャーが台頭してPBジーンズもストレッチデニムやジャージデニムなどアクティブフィットを取り入れていく。

 アスレジャーをリードしたルルレモン・アスレティカ社の売上高は08年1月期(71店舗)の2.7億ドルから急増して12年1月期(174店舗)には10億ドルに達し、全米アパレルチェーンの16位(前年は21位)に躍り出ている。直近の19年1月期(440店舗)も24.1%増の32.88億ドルを売り上げて同7位まで上昇しており、勢いに陰りは見られない。

 ジーニングが日常生活に定着した米国市場では、アスレジャーの台頭でPBジーンズはアクティブフィットなど機能性を追求する一方、NBジーンズはワークウエアやヴィンテージなど本来の味わいを訴求して独自のポジションを守るという二極化が進み、ジーンズ市場総体は日本のように萎縮することはなかった。日本でもPBジーンズは機能性追求が見られるが、ジャージや合繊クロスのトラックパンツが拡大した分、ジーンズ市場総体は萎縮を余儀なくされた。この差はなぜ、生じたのだろうか。

フィットの違いが明暗を分けた

 

 図は日米のアスレジャースタイルやドームスタイル、ジーニングの各スタイルのフィットと面感(テカテカからダメージまで)を大雑把に位置付けたものだ。

 同じアスレジャースタイルでも、米国のそれがエクササイズをイメージしてボディコンなのに対し、日本のアスレジャースタイルは米国のドームスタイル(学生寮風着たきりジャージスタイル)よりさらにフィットがイージーだ。PBジーンズにしても米国のストレッチジーンズがかなりボディコンなのに対し、日本のストレッチジーンズはウレタンを抑えてボディラインの露出が控えめだ。

 日本のPBジーンズを代表する「ユニクロ」はボディコンなウルトラストレッチジーンズからイージーなカーブジーンズやワークなクラシックフィットジーンズまで幅広くカバーしているが(男女でラインアップが異なる)、ダメージジーンズやストリートジーンズはラインアップしていない。グローバルブランド化した「ユニクロ」は日米欧亜のジーニングを幅広くカバーしており、ウルトラストレッチジーンズは欧米好みに位置付けられる。

 元々のジーニングはジャストフィットより少し抜け落ちたワークフィットで、洗い晒した加工感が自然だが、90年代末の「アバクロ」最盛期にはダメージ加工のルーズフィットを落とし履き、トランクスを露出するのがはやったりもした。

 生活と生計に追われてゆとりのない今日の日本では楽に着こなせてTPOレスに着回せる“汎用パーツカジュアル”が拡大しており、欧米や中国より格段に緩いフィットが好まれる。

 アスレジャーにしても米国のエクササイズ・フィットとは異次元のイージーフィットが主流で、ヤンキーな着たきりジャージスタイルが国民服的に定着した感がある。

 そんな日本市場ではスキニーフィットのジーンズは主流とはなり得ず、緩い着たきりアスレジャースタイルが広がってジャージや合繊クロスのイージーなトラックパンツがジーンズを駆逐する結果となった。

ジーンズはカジュアルの本流に復帰できるか

 米国のようにライフスタイルに定着し切れず浮き沈みの大きいファッションという性格が付きまとい、ブームの後の低迷から立ち直れないまま、楽チンなフィットとTPOレスな着回しを求めて広がった“日本的アスレジャー”に駆逐された日本のジーンズだが、このままカジュアルの本流から外れてしまうのだろうか。

 米国のジーンズ市場が安定しているのはファッションやライフスタイルのトレンドに左右されない“ワークウエア”という土台が大きいからで、その延長にヴィンテージジーンズもプレミアムジーンズも位置付けられる。わが国のジーニングは“ワークウエア”という土台がほとんど存在せず、その時々のトレンドに乗って“お洒落”を売り、盛衰を繰り返してきた。

 それではジーンズはライフスタイルに定着しない。ジャージのトラックパンツが“日本的アスレジャー”のTPOレス着たきり楽チンアイテムとしてすっかり定着したのと比べれば、ジーンズは日常の必須アイテムになり切れないでいる。

 日米のジーンズ市場推移を比較すれば、ジーンズがファッション屋の博打アイテムとして翻弄されるのが良いことか疑問を抱かざるを得ない。ファッションアイテムとして仕掛ければしばらくは上向くだろうが、トレンドの熱が冷めれば元に戻ってしまうし、下手をすれば元より落ち込んでしまう。そんな繰り返しを脱して日常の“汎用ワークアイテム”として生活に定着させることが先決ではなかろうか。

 今日のわが国においては2方向が考えられる。1つは米国と同じくカントリーやアウトドアにおける“汎用ワークアイテム”、1つは都市生活の普段着からカジビジまでカバーする“汎用ワークアイテム”だ。そんな両面コンセプトで大成功を収めた「ノースフェイス」の事例が参考になるかもしれない。