連載「共働き生活のリアル」では取材を通して、共働き生活のリアルな声を計44ケース取り上げてきました。

>第46話 主体的に家事をこなす妻・千佳の目線

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 話を伺っていく中で、いろいろな声が寄せられました。夫からは「早く帰って育児も手伝いたいと思っているけれど、物理的に無理」「環境は自分で変えていくものだと思う」「ペットに合わせた生活になっている」。その一方で妻からは「仕事も家庭も自分がやらねばと思ってしまう」「夫の帰りが遅くて大変」「体力的につらい」。

「共働き」といっても、その働き方や環境はさまざまです。夫婦の働き方、住んでいる地域、子供の有無や人数、祖父母の存在……。

 一人一人全てが異なる環境でしたが、共通するのは「誰もが忙しい」という点でした。

忙しいけど単なる「時短」は求めていない

 

 連載でも取り上げた漫画『本当の頑張らない育児』には、育児休業中の妻のこんなエピソードが描かれています。

「育児の息抜きのために子供のご飯にレトルト食品を使ったら、子供はニコニコ食べる。楽で早くできたはずなのに、なぜか罪悪感を感じる。帰宅後の夫から言われたのは『子供にこれ食わせてんの?』」

 市販のレトルト食品やサービスをフル活用すれば、もちろん時間は短縮できます。でも消費者が商品を購入したりサービスを利用する際には、単なる「時短」だけではなく、心理的な面も深く関わってきます。

 ものを購入するとき、私たちは単に「ものが欲しい」という理由だけで購入を決めるケースばかりではありません。むしろ「『もの』を持っている自分になりたい」「『もの』を取り入れることで豊かな生活を送りたい」といったように、「変化」を期待して購入することも多いのではないでしょうか?

 ものやサービスを販売する店はたくさんありますが、一歩踏み込んで「その『もの』や『サービス』を購入したら、どんな生活になるのか」まで提案できている店は、まだ少数派であるように感じます。

ニーズに合ったものを提供するのは小売業の使命

 

 内閣府男女共同参画局の「共働き等世帯数の推移」によれば、2017(平成29)年時点で専業主婦世帯は641万世帯、共働き世帯はその約2倍の1188万世帯と発表されています。共働き世帯は、今後もどんどん増えていくでしょう。

 忙しい彼らの生活を少しでも良いものにしていくために、店や商品・サービスで、小売業がサポートできることはまだまだあると私は思っています。そうした手助けは店の売上げにもなり、ひいては単身世帯など他の利用者にとっても優しくて便利な社会につながると私は考えています。

 先述した通り、共働き生活を送る人は忙しく時間がありません。特に子育て中であれば、家庭でのミッションが膨大に増えます。成長期の子供をできるだけ早く寝かせてあげたい。市販の惣菜は大人向けの味付けだから、そのままあげるのはちょっと気がひける。トイレトレーニング、学校の夏休みの間の働き方、保育園の預かり時間から短くなる学童の預かり時間、親の手助けが必須な宿題や習い事……。

 そうした人が罪悪感や後ろめたさを持って仕方なく使うのではなく、むしろ選んで使う商品やサービスは、もっと増えてもいいはずです。

 一方で、単身世帯も時間に余裕がある人ばかりではありません。忙しければ生活よりも仕事を優先するのは当然、という風潮も職場によってはまだあります。従来のように「とにかく安くて良い商品を探す」といった買物の仕方は、大きく変わってきています。

 社会の変化によって利用者の消費スタイルに変化が起きたならば、店や商品・サービスも大きく変わっていく必要があります。消費者の表層には出ないリアルな気持ちを感じて汲み取ることは、まずその第一歩だと考えています。

 夫と妻の視点を交互に取り上げる『共働き生活のリアル』の連載は、今回で一区切りします。取材に協力していただいた方、読者の方にこの場を借りて心からのお礼と感謝を申し上げます。問い合わせフォームに、ぜひご意見・ご感想をお聞かせください。

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 来週9月12日からは、新連載を始めます。客数減に悩んでいるけれど、お客さまが何を求めているのか分からない店に対して、より具体的でリアルなヒントを伝えていければと思います。