先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員であるカーディーラーの店長からご報告を頂いた。この夏のあるイベントに関するものだ。

 それは「七夕イベント」。内容は、来店したお客さんに、願い事を短冊に書いて笹の葉に飾ってもらう、オーソドックスなもの。

 工夫した点は2点。1つは、まだほとんど短冊の付いていないところに初日のお客さんが参加する心理的なハードルを下げるため、前日に自分たちが書いたものを飾り付けてスタートした点。

 もう1つは、「ご自由にお書きください」とお知らせするだけでは躊躇するお客さんもいるだろうと、飲み物を出すタイミングで全てのお客さんに声を掛け、テーブルごとに短冊とペンを用意した点だった。

 当初はお子さん連れのご家族の参加をメインに 想定していたが、始めてみると予想以上の大好評。大人のお客さんも「うれしい」「これ好きなの」と積極的に参加してくれ、七夕を迎える頃には、枝一杯に短冊が付けられて、重みで枝が下がってきてしまうほどの勢いだった。

 また、期間中に驚いたことは、あるお客さんから「今日、これを楽しみにして来たの。友人が先週ここへ来ていて、『短冊のイベントをやってて楽しかったよー』って聞いて来たから」と言われたことだ。

 さて、ここで考えてみてほしい。あなたなら地元のカーディーラーがこのようなイベントをやっていて、わざわざそれを楽しみに行くだろうか?

 また、七夕の時期、同様のイベントを行う店は少なくないが、どれほど積極的に参加するだろうか?

 そして、積極的に参加もするし、楽しみにわざわざ行くだろうと思ったなら、それはあなたにとってどのような店だろうか?

大切なのは「何がウケるか」ではない

 同店は常に、来てよかった、また来たいと思ってもらえる店作りを志向し、トイレットペーパーの端を三角に折っておくことからさまざまなイベントまで、1年中、何かをやっている。

 また、来店のない既存客とのコミュニケーションも絶やさない。そういうことが積もると、既存客とは絆ができ、店には温かいムードができる。

 その証拠というわけでもないが、先ほどまずは彼らスタッフたちが先に書いて飾っておいたと言ったが、それをお客さんに告げたところ、「本当ですか!」と、彼らが書いた短冊を楽しそうに探す姿も見られたという。

 ここで大切なことは、どんなイベントがウケるかではない。どんなイベントでもウケるような商いの土壌を、日頃からどう耕していくかということなのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください