先日、大型のショッピングセンターにて一人で買物した時の話です。スーパーマーケット、アパレルショップ、雑貨店と異なる3店舗を回り、それぞれの店で買物をしたのですが、一度もスタッフから声を掛けられませんでした。

 試着室を借りるときに「試着お願いします」と私からスタッフに声を掛ける、レジでの値段やサイズ確認など、スタッフと最低限の会話のやり取りは行いました。ただ、いわゆる「商品をオススメ」する接客は、入退店時のあいさつも含め、全く行われなかったのです。

 今までなら店内に入ると一度は、「いらっしゃいませ」という来店時のあいさつや「それ、今日入ってきたばかりの新作なんです」「商品の色違いもございます」といったアプローチは受けたように思います。どの店内も他のお客さまがいて混雑していたということではなく、店舗によっては私一人で店内にいた時間帯もありました。正直、レジ対応だけなら、無人店舗とあまり変わらないように感じたのです。

「接客されたくない」の可視化で起こった変化

 

 あらゆるメディアで「接客はされたくない」という消費者の声が取り上げられるようになりました。ただ私自身は、この発言は「『不要な』接客はされたくない」という意味だと思っています。

 的外れな声掛けや後ろに付きまとうような押し売り接客で嫌な経験をした。そして、本当に気持ちのいい接客を受けた経験のあるお客さまが少ないからこそ、「接客はされたくない」と考える人が多いのだと思います。

 それに加えて、お客さまに声を掛けても無視された、心ない反応に傷付いたという販売員側の意見をSNS上で目にすることも増えました。何度も接客で嫌な思いをすることで「接客は怖い」と恐怖感を覚え、「私は接客したくない。お客さまも接客を受けたくないようだからあえて接客しない」と考える販売員も目立つようになったのです。

 そもそもショップでは接客以外の仕事もたくさんあります。品出しや検品、レジや書類対応、店舗のSNS更新、取り置きや返品対応など、店頭での最低限の仕事を人員の少ない中で行っている現状もあります。もしかしたら本部からも「特にお客さまが希望される場合以外は、無理に声掛けをしなくていい」という指示が出ている店もあるのかなと感じました。

 

 一方で、買物に数時間付き合ってもらって自分に似合うコーディネートを考えてもらうパーソナルスタイリストの認知や需要は高まってきています。私の周りだけでも、実際に体験した人や興味のある人は増えています。

 またネット通販の商品サイトでは、情報の充実度はどんどん増しています。商品写真のみが掲載されているサイトはまれで、大抵は豊富なアングルから撮影した写真と丁寧な商品解説・提案がされています。もはや確かめられないのは実物と色・質感だけで、中には自分の顔写真を読み込んで顔色に合った商品を選べる、部屋の間取り図を設定して家具をシミュレーションできるサイトもあります。

 お客さま自身、「接客は無料で店頭スタッフから受けるものではない。必要があれば選んで受けるもの、場合によっては買うもの」という考えが、徐々にですが生まれてきているように思います。

接客が行われる店舗の特徴とは?

 

 これは私の肌感覚ですが、大体客単価が数万円を超える買物であれば店頭でも対人接客が行われるように感じています。

 単価が高い商品や買物は、それだけ商品のケア方法や細かい説明が必要となってくることが多いです。高単価商品になればなるほど、長く使われる、記念品という特別な意味を持ってきます。

 私は、接客をとても難しい技術だと考えています。性格や趣味・嗜好、悩みが異なるお客さまを相手にする接客は、本来とても高度な技術で、習得するまでに時間もかかります。今まで当たり前に接客を無料で受けられていた方が貴重だったのかもしれません。

 そうであれば店舗で働く人員確保すら難しい現在、これからは店頭でいわゆる「対人接客」を重視する企業は一部となり、その他の大半の企業は別の分野を強化していくのかもしれません。例えば、Web上ではなかなか得られない珍しい体験、ついつい手に取ってみたくなる陳列を、個人の力量が問われる接客よりも重視して投資する企業が増えてもおかしくありません。

 

 接客の本来の目的は、相手の気付いていない潜在ニーズの提案、また買物の肯定や決断の後押しだと思います。でも、こうした個人の力量に依存しがちな接客ではなく、今後は一定の効果が保たれる無人店舗化がさらに進んでいくのかもしれません。

 他人からの客観的なアドバイスをもらうには必ず予約や相応のお金が発生するとなると、今後は買物する前には消費者側が自分で調べ比較検討する時間が増えるのでしょう。それは一見公平で誰も傷付かず自由なようですが、意外と手間が掛かって不自由になるのかもしれないと感じました。