郊外型焼き肉店の食卓シーンに注目している

――「ステーキのあさくま」のFC展開の展望をどのように描いていますか。

 現状70店舗うち7店舗がFCです(2019年8月現在)。関東、東海、関西のエリアではほぼ直営主義ですが、それ以外のエリアで「ステーキのあさくま」を展開していただくことができる法人さまにはお願いをしていきたい。

「ステーキのあさくま」は2013年の当時39店舗体制だったものが5年を経て2018年にはその1.5倍の67店舗体制にしています。この過程で撤退したのは1店舗のみ。撤退店舗が少ない要因は初期投資が低いからです。

 店舗展開は居抜きで、初期投資1800万~2000万円で出店します。一般的に3000万~4000万円ほどかかり、決して同業他社が安易に実現できる数字ではありません。前テナントの人員も引き継いでいます。

 また、前テナントの撤退要因を分析しています。そして、あさくまの業態フォーマットとして成立するか検討する。さらに、商圏人口だけでなく勤労人口を見る。顧客よりも働く人の数を重視します。初期投資が低いことに加えて、このように市場環境について慎重に調査していることが撤退のリスクが低い要因です。

――今後、競合対策をどのように進めていきますか。

 私は牛肉を扱う業態はこれからも増えていくものと認識しています。これまで「ステーキ」と「焼き肉」がそれぞれ対極にあって価値を高める競争をしてきて、これからも展開されていくことでしょう。

 そこで、ステーキハウスのクオリティを磨き上げていくためには焼き肉店のベンチマークをしっかりと行う必要がある。

 具体的に挙げると、焼き肉店のメニュー構成の中にファミリーを意識したトレンドを感じることが増え、また、ぶ厚いロースをメニューに入れたり、サプライズの要素が増えてきました。食卓を囲むということがステーキハウスの本質の一片であるとすれば、この要素は焼き肉店も同様であるからこそ、導入されたメニューとそれをお客さまが召し上がるシーンはきちんと押さえておかなければならない。

 業態的には「ファストステーキ」に加えて「ひとり焼き肉」のチェーンが勢いを増しています。この場合、肉だけではなく、ご飯をセットにした形で食事を組み立てている。このように牛肉の業態は多様化していき、それぞれを求めるお客さまはとても楽しく過ごしている。このような競合する業態の状況を「ステーキのあさくま」にフィードバックすることはとても重要です。

ファンのお客さまと一緒に店をつくり上げる

――人手不足という現状においてどのような対策をとっていますか。

 これは「人材が取れない」ということと「人材が辞めていく」という2つの側面で考える必要があります。ですから、時給の多寡について論じるのではなく、「定着率」が重要。店長とのコミュニケーション、評価制度について深く考える必要があります。

 まず、「従業員満足」を図るべく2016年から「女性活躍パート大賞」を設けています。さらに「キッチンの匠」「ホールの匠」「日陰の花」という具合に、ざまざまな分野に賞を設けて表彰するようにしています。「日陰の花」とは、作業レベルでは高いものがなくても、その人が存在することで職場が明るくなるという人物です。このような視点を意識することで職場環境がより良いものになっていくと考えます。

 また、お客さまと従業員の関係をより近くする「カンタレス経営」に取り組んでいます。カンタレスとは「垣根を取り払う」という意味で、店長、従業員、お客さまが一体となって店を経営しようという発想です。店長、従業員にとって誰に褒められることがうれしいことかというと、それはお客さまからが一番うれしいのですね。

――ロードサイド立地にあっても地域密着を志向するということですね。

郊外ロードサイドにあることで空間デザインがゆったりとしている

「カンタレス経営」の発想は、2017年にあさくまのメール会員が90万人に達したことから、これらを店の運営の中に生かすことを考えました。

 例えば、5月に新規オープンした三河安城店(愛知県安城市)では、オープントレーニングを「お客さま係」として会員に実施してもらいました。外部に委託していた250項目に及ぶ覆面調査も会員に依頼しています。この他、商品開発に参画していただいたり、駐車場の植栽の管理をしていただくこともあります。

 会員の方は常連のお客さまであるからこそ、当店のコーンスープとかおなじみのメニューのクオリティの状態をとてもよくお分かりなのです。このようなお客さまと店の従業員と侃々諤々しながら店をつくっていくという発想です。

―子会社の(株)あさくまサクセションや新業態の動向、成長戦略についてどのように考えていますか。

 あさくまサクセッションは現状、ビュッフェレストラン「ファーマーズガーデン」、「モツ焼きエビス参」、「オランダ坂珈琲邸」、インドネシア料理「スバラヤ」の4業態20店舗を展開しています。これまでスクラップ&ビルドを行い、2年前から黒字化しました。今後は「モツ焼きエビス参」を中心に出店します。

 

 新業態の「やっぱりあさくま」は今期に出店を再開し、2店舗を出店します。駅前・繁華街の立地で、標準規模を20~30坪とし、省人・省力化を実現できる部門として重要な成長戦略と位置付けます。

 成長戦略の中で、新規出店や新業態開発は重要ですが、老朽化した店舗は年間3~5店舗をリニューアル改装し、バリアフリーや環境対策にも積極的に着手していきます。このように既存店が永続的に成長することが重要であると考えています。

食事するシーンの重要性と「あさくま」の今後

 牛肉を扱うフードサービス業は2013年以降、急速な成長を見せている。この間、さまざまなトレンドを表現する言葉が生まれてきた。上記でも述べたが「ファストステーキ」「ひとり焼き肉」、さらに「肉バル」とか「肉食女子」など。これは食材供給が安定してきている中で、業態の多様化が可能となったからであろう。

 このような状況の中で、横田社長も語るように「食事をするシーン」が重要になってきている。これらを充実させるための従業員の表彰制度や「カンタレス経営」をはじめとした店・会社の環境を向上させる活動が老舗ステーキハウスの存在感を持続可能なものとしていくものとして期待している。