(株)あさくま 代表取締役社長 横田優氏 〔人物撮影〕千葉太一

 (株)あさくま(本社/愛知県名古屋市天白区 代表/横田優)が、さる6月27日東証ジャスダック市場に上場した。同社は「ステーキのあさくま」をメインに郊外ロードサイドに展開、子会社を含めて87店舗を擁している。

 フードサービス記者歴三十数年の筆者にとって同社の存在感は格別である。同社の創業者は「近藤誠司」氏。「あさくま」の社名の由来は、仕事熱心で朝早くから市場に現れる大柄の近藤氏を例えての愛称「朝駆けの熊さん」を短縮したものである。

 1962年「ドライバーズコーナーあさくま」を創業して以来外食企業化の道を歩み、「ステーキのあさくま」の完成度が高まることによって日本に「ステーキハウス」の文化をもたらした。

 同社では創業以来30年間で101店舗に拡大したが、牛肉の輸入自由化やBSE問題で31店舗まで縮小。内部体制やマネジメントを見直し、自己資本比率70%、無借金経営を実現した。2006年に(株)テンポスホールディングスとの資本・業務提携を通じて再建を進め、再度成長ステージに突入している。そこで、同社代表取締役社長の横田優氏にこれからの展望について伺った。

肉の嗜好の変化に対応し、クオリティを高める

――今回の上場によって、どのような展望を描いていますか。

 上場については 創業オーナーの時代から目標にしていたことですが、本格的には黒字転換した2011年からです。

 今回の上場による公募増資した資金は、新店の準備に投じていきます。具体的には今期(2020年3月期)10店舗を出店しますが、このうちの5店舗は静岡に出店します。あさくまの店舗数は現状67店舗で、そのうちの半分が東海地方ですから、将来的に関東、関西を充実させていく上で、静岡は中部地方と関東を結ぶとても重要なエリアだと位置付けています。

「ステーキのあさくま」が展開している立地は現状、郊外ロードサイドですが、この業態はこの立地で築かれたものです。ですから、このエリアで展開していくことが基本です。客単価はランチ1550円、ディナー2250円程度で、全体で1800円というステーキハウスです。

――郊外立地には焼き肉の食べ放題とか、肉料理をメインにした飲食店がしのぎを削っていますが、このエリアでの競争力のつくり方についてどのように臨んでいますか。

 それは、まず肉のクオリティ。魚を扱うのであれば、旬の魚で季節感をアピールすることができますが、肉の場合はこのような訴求ができません。また、肉の焼き方も他店との差別化がつくりにくい。このようなことから、最も気を配るべきなのはここがポイントだと考えています。

 ステーキは、まず肉の「柔らかさ」「ぶ厚さ」、そして、変化するお客さまの嗜好を捉えることが重要です。かつては「ステーキは霜降りの肉」という感覚がありましたが、今では赤身肉のニーズが高くなりました。そこで、時流をきちんと捉えながら商品を変えていく必要があります。

 現状、「ステーキのあさくま」で使用している肉の80%がUS、15%がオージー、5%が国産という構成です。

 2003年12月よりUSビーフ輸入禁止になって以来、オージーを使用するようになったのですが、お客さまから肉の味が変わったという声をよく頂きました。2013年2月よりUSビーフの輸入規制が月齢30カ月以下に緩和され、骨付きも輸入できるようになり、ステーキをはじめとした牛肉を扱う市場が大きく広がったという印象があります。

高齢化するマーケットにどのように対応していくか

――「肉ブーム」という言葉に象徴されるように、実際に肉を求めるお客さまは増えていますが、マーケットは高齢化していきます。このような現実にどのように対応していきますか。

 あさくまのかつてのメインターゲットは25~35歳でした。そして「ステーキのあさくま」が登場してから50年たっているわけです。ということはこの時のメインターゲットは75~85歳になっているということです。ターゲットが高齢化しているという感覚になりますが、この方々たちのお子さん、お孫さんたちもお客さまとして育っていることで裾野が広がりました。

 このような客層の変化を捉えて、当社のメニューの存在感を述べると、「ヤングに人気のあるシニアメニュー」「シニアに人気のあるヤングメニュー」。このようなコンセプトでメニューが組み立てられています。

 当社の人気メニューに120gのハンバーグと赤身肉のステーキ120gのコンボの「あさくまグリル」(サラダバー付き2380円/税別)がありますが、このステーキは小ぶりであっても柔らかい。このような商品が人気になっているということが今日のニーズを象徴していると思います。

ステーキあさくまにとってサラダバーは定番のコーナー
人気商品の「あさくまコンボ」はさまざまなお客さまより支持されている

 肉もさることながらサラダバーのクオリティも重要。当然ですが、「新鮮」であること。「季節感」をアピールすること。お客さまの経験値が高まることで、この表現はとても重要です。

――ステーキ市場を見渡すと、「ファストステーキ」という名称をもたらした「いきなり!ステーキ」が急速に店舗展開を進め、今年500店舗体制になろうとしています。近年はアメリカから高級ステーキ店が日本に続々と上陸しています。このような動向の中で、「ステーキのあさくま」のポジションはどのようなものだと考えますか。

 まず、ステーキ市場の中で「ファストステーキ」が果たしている貢献度の高さには計り知れないものがあります。まさに老若男女、さまざまなお客さまをステーキの店に引き寄せました。

 また、これらの業態は、都心部において20~30坪という小さな店舗でも営業できるということを証明しています。これによって、オペレーションを省力化することが可能で人手不足にも対応できる。

2018年1月にオープンした「やっぱりあさくま」
「やっぱりあさくま」の2号店が駅前立地で検討されている

 このような路線を当社でも開拓するべく、「やっぱりあさくま」という店を2018年1月、九段下(東京都千代田区)にオープンしました。この店は実験的な要素があったことから初期投資もあまりかけずにスタートしました。その後、空調については追加工事を重ねましたが、厨房設備やレイアウトは変えていません。

 この業態は「ステーキのあさくま」を絞り込んで、利用動機がもっと気軽で、新しい来店動機と客層が開拓できるようにと考えています。この状態で1年半以上の時間をかけ見てきた結果、「荒利益がしっかりと出るようになった」という判断に至りました。客単価は2000円です。

 1号店は駅から離れていた既存店をモデルチェンジしたものですが、2号店は駅前立地を想定しています。新規にオープンしますから店舗開発は大きな役目となります。