アイリスオーヤマは収益性と将来性がありそうな分野を探し出し、「快適生活」を目指して需要を創造してきました。

 そのアイリスオーヤマがスポーツ施設事業に力を入れているらしい。スポーツ施設事業とは一体どういうものなのか。その秘密を探りに行ってきました。

「スピードやチャレンジ精神、チームワークを鍛えてほしい」

 アイリスオーヤマのスポーツ施設事業部が立ち上がったのは2019年3月のこと。法人事業の拡大を図るため、「スポーツ向け人工芝」(競技場向け、多目的グラウンド向け、ゴルフ練習場向け)、「LED照明」(スタジアム・アリーナ向け、LEDサイネージ)、「スタジアムチェア」を中心とする内装設備の3つの柱で、初年度売上高30億円を計画。5年後には100億円を目指しています。

 東京2020オリンピック・パラリンピックのちょうど1年前の2019年7月24日には、日本サッカー協会と「JFA Youth & Development Programme(JYD)」パートナーシップ契約を締結。オフィシャルパートナーとして環境整備や、普及・育成のサポートをしていくことを発表しました。

 JYDというのは、次世代の日本サッカーを担う人材を育てようというプログラムです。ユース年代のみならず大学生やシニアの年代など、日本サッカーの基盤を支える各領域でさらなる普及や次世代選手の育成を促進する目的で実施される各大会・事業のことをいいます。

 

 大山健太郎会長は「『快適生活』をキーワードに生活者の潜在的な不満を解消するソリューション型商品を提供してきましたが、東日本大震災を機に日本の課題を解決しようと、ものづくりをしています。『なるほど家電』は、日本の家電業界の立ち直りを図ってのことです。今の日本の一番の課題は人口減少です。それを解決するには若者が大活躍するしかない。サッカーを楽しんでスピードやチャレンジ精神、チームワークを鍛えてほしい。若者が元気になる育成事業をしようと思いました」と語ります。

 スポーツ施設事業部は、「施設整備の充実に貢献したい」とはじめました。

 2000年からアイリスオーヤマ本社のある宮城県仙台市のサッカーチームJ1「ベガルタ仙台」のオフィシャルスポンサーをしていて、東日本大震災の時に「彼らが復興に向けて大きな力を発揮してくれた」と語ります。そして「各地で同じような形で地域経済を元気にしていきたい」と考え、今回のJYDパートナーシップ契約の締結となりました。

 創立60周年の2018年には、福利厚生として宮城角田工場構内に、LED照明付きの人工芝サッカーグラウンドを新設し、社内でサッカー部IRIS.F.Cも立ち上げました。やってみると人工芝のニーズは大きく、事業の柱に育てたいと考えました。さらに、プロの選手たちのセカンドキャリアの場としても働ける環境を整えたいという想いもあります。

 実業団サッカーチームの監督でもありスポーツ事業を担当されている石田敬取締役に日本サッカー協会と提携することのメリットを伺うと「協会は自治体へのネットワークがあるので、ビジネスとして営業展開していくことができれば」と思惑を語られました。

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、「47都道府県に、フットボール専用の施設を1つはつくりたいんですが、今、1つもない県が2県あります。まだまだ施設が整備されておらず老朽化もしています。プレー環境を少しでも改善していきたい。それがサッカーの普及と選手育成の観点から必要不可欠です」と、構想を語りました。

施設の老朽化や未整備の問題に会社の強みを生かす

 アイリスオーヤマスポーツ事業の3本柱についてもう少し詳しく説明すると、まず人工芝事業は、人工芝のゴルフ練習用マットで国内トップシェアを占め、実績のある大分の会社をM&Aし「アイリスソーコー」(現在)として製造・販売を行っています。

 この人工芝はゴルフ練習場をはじめ、FIFAの品質基準をクリアした製品もあり、サッカー場や野球場、テニスコート向けなどラインアップも拡充し大きく発展。完成後の補修メンテナンスも請け負います。

 

 スタジアム照明については、高効率のLED照明(LED投光器HW-F)を採用することで既存照明と比べて電気代を一般的な水銀灯の投光器(1000W)より約7割削減。さらに、電圧も低いため工事用自家発電の電源で点灯可能になり、初期投資額も大幅に抑えられます。

 

 スタジアムチェアは、プラスチックのブロー成形技術のノウハウを生かすことでコスト削減だけでなく、快適性と機能性を実現できるとしています。

 消費者向けの商品に特化しているとばかり思っていたアイリスオーヤマは、実は2010年から法人向けLED照明事業に参入し、国内シェアを獲得していました。

 今までのビジネスは、消費者の生活の中での不満解決がテーマでしたが、不満があるのはビジネスでも同じ。法人向けLED照明を軸に強みを発揮していこうとBtoB市場でも積極的に事業展開を始めました。LED照明の延長線上にある建築内装資材マーケットにも参入し事業を拡大。

 そうした動きの中でできたのが、スポーツ施設事業部です。日本で世界規模のスポーツイベントが開催されるときに、大きな課題として立ちふさがっている施設の老朽化や未整備の問題。そこにLED照明以外の設備も総合的に取り扱い、会社の強みを生かしていこうと考えました。スポーツ施設事業の拡大に向けて、今後が楽しみです。

 

 最後におまけ!

 記者会見で、東京・お茶の水にある日本サッカーミュージアムに初めて入りました。見どころ満載。エレベーターに乗ると、階のボタンがこんなにかわいい。癒されました~。