バーチャルリアリティ(VR:仮想現実)という言葉を最近よく耳にするようになってきたと思いますが、ARと聞いて拡張現実と思う人は案外少ないかもしれません。オーグメンテッドリアリティの略ですが、そんな英語は聞いたことがないという人も結構いらっしゃるのではないでしょうか。ビジネスパーソンなら、ARと聞けば、売掛金(Accounts Receivable)を想定するかもしれません。

ARの歴史は意外にも古い

 実はARの歴史は意外にも古いのです。ARが実現できるデバイスと言われたヘッドマウントディスプレーは、50年以上も前の1966年ごろに発明されていました。しかし、ARという言葉自体は、VRに対して、1990年代初頭に作り出されたものです。

 要は、長年マーケティングされて来なかったわけです。世の中では、「良い製品だから、売れる」という勘違いをしばしば見受けるように思います。でも、いくら良い物であっても、その存在が知られていなければ、埋もれてしまうのです。

 その後、ARは一部のエンタテインメントやゲームを除けば、主に軍事産業、自動車産業、航空機産業などで使われて来た技術ですが、2000年代に入ると携帯端末が普及するにつれ、一般コンシューマー向けにも提供されるようになってきました。

 また、近年では体内の臓器を投影し手術する手法が盛んに開発されており、医療技術の進歩が大いに期待されています。

 日本では、2009年に一般コンシューマー向けに「セカイカメラ」がリリースされました。既にサービスは終了していますが、iPhoneやAndroidスマホ内蔵のカメラを使って画面上に映し出された目の前の景色の上に、その場所や対象物の付加情報(例えば、画像、音声、文字など)を重ねて表示できるというものです。

ブームが大きく後押しをした

 2013年にGoogleがGoogle Glassのベータテストを開始しました。Google自体が多くの人々に注目されていたので、Google Glassが出るというと、それ向けのARアプリケーションを多くのサードパーティーが開発するようになりました。今やウェアラブルデバイスの次世代の本命とさえも見なされる存在になりつつあります。

 そして、2016年には世界各地でポケモンGoが発表され、一大ブームになりました。スマホを持ちながらポケモンを探している人々が街中にも電車内にも氾濫しました。これは典型的なARです。

 ポケモンが自分の近くに現れると、スマホが振動で通知してくれ、現実のその場所に移動するとポケモンと遭遇できます。さらには、ARでカメラを起動させ、画面内に映る現実風景の上に現れたポケモンを捕獲することもできるのです。

「Lifeprint」で動く年賀状がつくれる

 先般2018年の年賀状デザインキットとして「Lifeprint」(ライフプリント)という技術を利用した物が発表されました。

 Lifeprintのスマホアプリケーションとプリンターがあれば、誰でも簡単にスマホで画像と動画を組み合わせたAR写真を作ることができます。この技術を活用して動く年賀状を作るというのです。

 正月に届いた年賀状をこのアプリケーションでのぞくと、それが動き出し、年始のあいさつや音楽などが聞けるので、もらった側は不思議な驚きと感銘を受けることになります。

 この製品はプレスリリース、テレビ番組、雑誌などいろいろなところで見掛けますが、このようにして存在をアピールしているのです。顧客のニーズに応えたというよりも、新たなバリューを創出していると言えます。こうした時は、まずそのバリューが提供されていること、および、どこで何によって提供されているのかを知ってもらう必要があります。

 そうすれば、誰かが見つけて、使ってみて、面白いということを知り合いに伝えてくれます。そうすると、その知り合いも試してみて、また口コミが広がっていくことになります。これが「バイラル効果」と呼ばれているものです。

 次回以降でもまた、他の先端技術がどのように世の中に広まり始めているかを考えてみたいと思います。