2000年1月に発売したガトーラスク「グーテ・デ・ロワ」をはじめとしたラスク類を看板商品に着々と成長を続ける原田・ガトーフェスタ ハラダ。群馬県高崎市を本拠とする同社は、07年の松屋銀座本店への出店を皮切りに東京進出を果たし、その後も大都市中心に全国展開を図っていった。今では北は北海道、西は福岡まで店舗は広がり、その数26店舗。しかし、それに満足することなく、現在でも年に2店舗程度は出店を続けている。

 同社は新たな商品開発にも意欲的。季節限定、地域限定商品といった形で、全国どこの人にも喜んでもらえる多数の商品を開発、提案し続けてもいる。その努力の甲斐あってか、10月から3月にかけての繁忙期には連日大行列ができるほどの一大パティスリーとなった。

2000年1月に発売した当時、ガトーラスク「グーテ・デ・ロワ」は買い求めるお客さまが百貨店などで長蛇の列を作るほど人気を博した。今でも一番人気

 同社では年々拡大する事業に合わせ、かつては中途採用がメインだった人材募集も、10年ほど前から新卒募集をかけるように。つまり、店舗の増加に合わせた確実な人員補充を行ってきたわけだが、ここで目を引くのが従業員離職率の低さ。ここ5年のデータを見ると、従業員の離職率は社員・パートを含め11%未満。「商品と同じように、人も大事にしている」という同社が、なぜここまで高い従業員定着率を実現・維持できているのか、取材をした。

原田・ガトーフェスタ ハラダの離職率 従業員数は4/1現在、退職者数は前年/2~4/1

「ガトーフェスタ ハラダが好き」を具体的な力に

 原田・ガトーフェスタ ハラダの採用基準は単純明快だ。

 他のどの企業でもなく、『ガトーフェスタ ハラダ』に入社したいとの強い熱意を持っていることが挙げられる。同社の商品を、職場環境を、そこで働く人を好きになってもらわなければ、仕事も長続きはしないだろうというのが同社の考え。

 そのため、採用試験以前に一度は店舗を訪れ、商品を賞味してもらうことを推奨している。そこで感じた同社の印象、自ら見つけた問題点などを面接の場などで提示することは、一つのポイントになるという。

「自身がこれから働くことになる『ガトーフェスタ ハラダ』を知るために、何かしらの行動を起こせる人。そんな人を私たちは歓迎しています」と人事本部の榊原勉副本部長は語る。

人事本部副本部長の榊原勉さん

 ここ数年の入社人数は、大卒で40人前後、高卒で30人前後の合計70人程度。内定が出た後は店舗でのアルバイト研修が行われるが、これは店舗の雰囲気や仕事の流れを経験させることで、入社前後の「ギャップ」を埋めることを目的としている。「アルバイトを機に内定辞退をする学生はほとんどいない」そうであり、その後の離職率から見ても、同社の目的はしっかりと達成されているようだ。

 入社後は新人研修を実施し、基本となる企業理解、接客訓練などを行う。この時点で既に接客のロールプレイングを行い、コンテストも実施して即座にフィードバックをかけていることもポイント。実際の現場に出る前に「実地」に寄り添った学びがかなり得られることで、その後の業務にもスムーズになじんでいけると見て取れる。

 また、入社後1、2、3年目にはそれぞれ研修を行い、各種フォローアップや社員同士の情報共有を行うよう心掛けられている。特に3年目には工場・店舗研修が実施され、自身が配属されている場とは異なる環境で業務に従事。これを機会に普段顔を合わせることの少ない店舗や工場の従業員との交流と、互いの業務理解を図り、それを円滑な企業運営へとつなげている。

家庭の事情にも配慮し「長く働く」を実現

 原田・ガトーフェスタ ハラダの従業員男女比は3対7で圧倒的に女性が多い。そうなると気になるのは、女性特有のライフイベントを踏まえた福利厚生の充実度だ。

 同社では、産休・育休(1年半)の取得はもとより、復帰後には子供の小学校就学前まで時短制度を活用可能。家庭の都合によっては、いったんパート職員となって働く時間をセーブすることもできる。

「たいていの社員は1年程度で育休を切り上げ、仕事の場へと戻ってきます。産後復職率は現時点で83%。多くの人は時短制度を利用して、仕事と家庭のバランスを取っている状況です。また、社員が出産等を原因としてパートに転身する場合、給与面でも配慮が行われます。社員時代の経験を鑑みて、通常よりやや高めの給与が設定されるので、家庭の事情に合わせて働き方を変えることにも積極的になれるのではないでしょうか」

 同社では社員の「事情」はさまざまな面で考慮される。先に述べた社員からパートへの転身の他、結婚を機に居住地が大きく変わるという社員なら、その行く先に同社の店舗がある場合、そこへの異動も可能になる。

 これらは制度として確立したものではないが、「弊社で働き続けたいという意志を持って相談してくれれば、臨機応変に対応していくというのが私たちのスタンスです」

 会社に相談すれば、互いに納得のいく回答を得られる。これは職歴を積む際にも同様。

 同社では年に一度「ウィルビーシート」という形で、自分の「今後」について希望を出すことができる。提出の有無は自由だが、直近の、あるいは数年後を見据えての異動希望などは、このシートを提出することで会社全体が把握。その上で、本人のやる気や資質、ジョブローテーションなどを考え合わせて「希望」が現実化することは少なくない。

「育休などから復帰する社員についても同様ですが、自身のやりたいこと、意見をきちんと会社に向けて発信してくれれば、私たちは『聞く耳』を持ちます。上長との距離も近く、風通しの良さがあるのが弊社の社風。それを生かすことで、経験ある社員を大切に育て、長く現場で働き続けてもらうことができているのだと考えます」

「気持ち良く、楽しく働く」ための制度も整備

 その他にも、工場での改善活動や店舗売上げ、質の高い接客等を評価する表彰制度を設け、年間優秀表彰を実施している。これは若手社員、ベテラン社員の区別なく参加できるものであり、身近な目標を社員に与えることで、日々のやりがいを生み出していくもの。特に若手社員にとっては、自分の意見やアイデアを明示する、格好の機会ともなり得ている。

 ちなみに、上位である金・銀・銅賞に輝いた従業員(個人あるいはチーム)にはそれぞれの順位に応じて金品も授与され、これもまた、やりがいの一つになっていると見ることができるだろう。

 加えて、社員食堂や仮眠室、レクリエーションルームの設置など、社員が「気持ち良く」働くための施設が整っている点も見逃せないが、これらはただ「ある」だけでなく、十分に活用されてもいるようだ。

「全従業員に気持ち良く、楽しく働いてもらうことは、会社全体で目指している目標の一つです。福利厚生もそれに準じて整えられていますし、給与面も少しずつですが向上させているのが現状です」

 その結果、中には親子で、さらには親子三代で同社に勤めている従業員もいるという。これは会社からの「長く、楽しく働いて欲しい」という気持ちがきちんと伝わり、それを従業員がしっかり受け止めている証でもある。

「親が子に、『あなたもここで働いたら』と勧められるくらいに居心地の良い会社。私たちは、今後もそうであり続けたいと願っていますし、それを実現させるため、さまざまな活動を行っていくつもりです」

本館シャトー・デュ・ボヌールには、商品をフルラインアップ。地元のお客さまをはじめ、観光客が大型バスで毎日訪れる

〈インタビュー〉三浦 聡恵さんに聞く「原田・ガトーフェスタ ハラダが働きやすい理由」

1981年5月、群馬県生まれ。高校卒業後、複数の接客アルバイトを経験したのち、2004年に原田・ガトーフェスタ ハラダ入社。地元スズラン百貨店高崎店に配属となり、店舗スタッフを務める。1年後には同店店長に昇格。その後、複数店舗のフォローを行うスーパーバイザー的な役割を担う現職(営業本部 営業2部 係長)に就く

 複数のアルバイトを経験するうち、自分は接客業が好き、向いているとの実感を得るようになりました。そんな頃、ガトーフェスタ ハラダの本館店舗の「シャトー・デュ・ボヌール」がオープンすると聞き、そのオープニングスタッフになりたいと募集に応募しました。全く新しいお店で全員一緒にスタートを切れること、ガトーフェスタ ハラダのラスクに親しみや安心感を抱いていたことが主な応募の理由です。

 ふたを開けてみたら、本館ではなくスズラン百貨店高崎店の店舗に配属となったのですが、仕事そのものには充実感がありました。同社が求める高い接客力を身に付け、それによってお客さまが笑顔になってくださったときには、大きな喜びが感じられます。また、自分自身も少しずつ成長し、店長を任されるようになってからは人材教育にも目覚め、スタッフが日々その力を伸ばしていく姿が私のもう一つのやりがいとなっていきました。

 現在は接客の現場から少しだけ離れ、複数店舗の統括を行う業務に就いています。この業務に就いたのは、自分の意思からです。弊社はとても風通し良く、上長とも気軽に会話ができる環境ですので、それを生かして折々に「店長たちからの声を聞き、まとめ、それに応えるようなスタッフがいるといいのでは」と意見を述べていました。私自身、店舗スタッフとは異なる仕事をしてみたいと感じるようになっていた時期でしたので、実際に意見が取り入れられ、その仕事の従事者として選ばれて、とてもうれしかったのを覚えています。

 今も担当する店舗を訪れ、スタッフ同様、現場に立つこともありますが、以前よりも視点が大きく変わったように思います。スタッフ時代はお客さまにより喜んでもらえるよう棚割りなどを変える、店長時代は自身とスタッフたちの考えを擦り合わせて、バランス良く店舗運営を行うことを学びましたが、今ではさらに物事を大きく捉えられるようになりました。

 そんな今でも「変わらない」と感じるのは、職場での自分の意見の言いやすさです。ウィルビーシートの制度を使わなくても、日常的な会話から「私のチャレンジ」を見いだして支えてくれる、そんな雰囲気がここにはあります。

 いわゆる、「聞く耳を持った企業」であるからこそ、私自身もこれだけ長く勤務できたのでしょう。長い間には「辞めてしまおうか」と思ったこともないわけではありません。しかし、それにストップをかけたのは、小さくとも職場に変化を起こし、「お客さまのため」の行動をさらに深めることに充実感を得ていたから。そんな私が自由に動ける環境があったからです。そしてそれは「今後も仕事を続けていくための原動力になるのでは」と感じています。

  • 企業名/(株)原田・ガトーフェスタ ハラダ
  • 所在地/群馬県高崎市新町1207
  • 代表者/原田義人
  • 創業/1901年
  • 年商/161億円(2018年度)
  • 従業員数/1008人(2019年4月1日現在)

 

 
 

※本記事は『商業界』2019年10月号に掲載されているものです。

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