購入型クラウドファンディングサイトとして世界最大規模を誇る「Kickstarter」は、支援額が目標金額に達しないと資金調達できないルールを採用するなど、これから新しいものを作るプロジェクト支援に焦点を当てている。Kickstarterが2017年9月に日本での展開を開始したことで、世界から資金を集められる環境が一気に身近になった。これが契機となり、ビジネス目的のクラウドファンディング活用が進むことが期待される。

世界の市場規模は約4710億円、日本のシェアは1.2%

 アメリカでは、世界の2大クラウドファンディングサイトと称される「Kickstarter」と「Indiegogo」の存在が大きく、購入型クラウドファンディングが大きな市場を形勢している。2016年12月にドイツの調査会社Statistaが公表した調査結果によると、2016年のアメリカにおける購入型クラウドファンディングの市場規模(調達金額)は、8億1900万ドル(約934億円)と推計。それが2017年には9億5900万ドル、2021年には13億6000万ドルに拡大すると予測している。同社によると、同じ基準で日本の市場規模を推計すると、2016年には5100万ドル(約58億1000万円)なので、2016年の時点でアメリカの市場規模は日本の約16倍という計算になる。

 世界規模で見ると、決してアメリカがシェアを独占しているわけではない。Statistaは世界市場に関する調査結果も公表しているが、それによると、2016年の全世界における市場規模は41億2900万ドル(約4710億円)であり、アメリカのシェアは約20%にすぎない。この数字は、イギリスをはじめとしたヨーロッパやアジアでも既に大きな市場に成長しており、日本だけが大きく出遅れていることを如実に示している。ちなみに2016年時点では、日本の全世界に占めるシェアはわずか1.2%である。

 アメリカでも法整備が進み、株式型のクラウドファンディングが2016年から本格的に立ち上がった。起業促進支援法(JOBS法)によって、スタートアップやベンチャー企業は、アメリカ証券取引委員会(SEC)に登録することで、指定されたプラットフォームから100万ドルを上限に資金調達できるようになった。

 購入型としては、Kickstarterが2009年のサービス開始以来、既に33億ドル(約3760億円)を超える資金調達を達成している。世界2位のIndiegogoの累計調達金額が2017年1月の時点で10億ドル(約1140億円)なので、Kickstarterの調達金額がいかに莫大であるかが分かるだろう。

 Kickstarterはサービス開始後に改善を重ね、今では世界に数多く存在している購入型プラットフォームのお手本ともいえる存在になっている。ここでは、Kickstarterが世界最大の地位を築けた成功要因を考察しつつ、Kickstarterのルールや利用手順を見ていくことにしたい。

クリエーターとバッカー、プレッジとリワード

 Kickstarterでは、簡単な手続きでプロジェクトを立ち上げ、支援者を募集できる。プロジェクトを主宰する人を「クリエーター」、プロジェクトに賛同して資金を提供する人を「バッカー(支援者)」、バッカーが提供する資金を「プレッジ(約束)」と表現している。プロジェクトページには、プレッジに応じてバッカーが受け取れる「リワード(お礼)」が明記されている。大半のケースでは、プロジェクトによって開発される製品やサービスがリワードとして提供される。

 クリエーターは、プロジェクトの期限と「ファンディングゴール(目標金額)」を明記する必要がある。期限までにプレッジが目標金額に届かない場合は、1円の資金も調達できずにプロジェクトは終了となる。調達できる金額が目標金額以上か、ゼロかのどちらかなので、「All or Nothing(オール・オア・ナッシング)」形式と呼ばれる。

 バッカーはプレッジする際にクレジットカードで支払いを行うが、この時点ではショッピング枠が一時的に確保されるだけ。目標金額をクリアしてプロジェクト成立した後に、クレジットカード会社に請求が回される仕組みだ。プレッジしたプロジェクトが不成立に終わった場合は、自動的にカード請求はキャンセルされる。なお、プレッジする金額には、リワード発送のための送料を加算できるようになっている。この辺りはEC先進国であるアメリカらしいシステムといえる。

 Kickstarterが掲げるコンセプトは、「クリエイティブなプロジェクトの資金調達のためのプラットフォーム」である。クリエーターは、人と共有できる何かを作る必要があり、資金提供の見返りであるリワードは、全てクリエーターによってプロジェクト用に製作されたオリジナルのものである、と定めている。現金同等物や株式はもちろん、以前から存在していた製品をリワードにすることはできない。別の表現をすると、既製品のマーケティング目的に利用することを厳格に禁じている。

 この部分がIndiegogoとの最大の差別化要因になっている。Indiegogoには、目標金額に達した場合のみ資金が調達できる「Fixed funding」形式と、目標金額には届かなくても期限までに集まった資金を得られる「Flexible funding」形式の2つがあり、9割以上がFlexible fundingを選択している。目標額を調達できなくても実行できるプロモーションやイベント的なプロジェクトも少なくないことを示している。この違いによって、両社がうまくすみ分けできているという見方もできるかもしれない。

日本語サイトからプロジェクトを開始するには

 Kickstarterは、現地の法律や規約に抵触していないかどうかを審査するため、プロジェクトを立ち上げることができる国や地域を限定している。今回、日本はプロジェクトを立ち上げることができる22番目の国・地域となった。これを契機に、日本から多数のプロジェクトが世界に向けて始動することは間違いない。

 プロジェクトを立ち上げる、つまりクリエーターになるためにはいくつかの要件を満たす必要がある。プロジェクトを立ち上げる国に住所と銀行口座を保有しており、それらを証明する書類をウェブ経由で提出して本人確認を受けなければならない。法人名義でプロジェクトを立ち上げることも可能だが、その場合でも、クリエーターの要件を満たし、本人確認を受けた個人をプロジェクトリーダーに指名することが必須条件となる。

 事前に力を入れて用意すべきは、何といってもプロジェクトページである。クリエーターが何者かという紹介をはじめ、何を作ろうとしているのか、その実現のためにどのような計画を立てているのか、調達する資金をどのように使う予定なのかなどを明確に記述しなければならない。

 バッカーはプロジェクトページを見てプレッジするかどうか、つまりお金を支払うかどうかを決める。海外のバッカーからも資金を集めたいなら、当然ながらプロジェクトページは英語で作成する必要がある。多くのクリエーターは、動画や画像を効果的に使ってプロジェクトの魅力をアピールしている。

 意外と重要なのが募集期間の設定である。期間は1日から最大60日までを任意に設定できるが、Kickstarterでは30日以下にすることを推奨している。過去のデータから、期間の短いプロジェクトの方が成功率が高いことが判明している。仮にプロジェクトが不成立に終わっても、同じアイデアでプロジェクトページをブラッシュアップして再挑戦することは可能であるが、一人のクリエーターが同時に複数のプロジェクトを開催することはできない。

 期限前に目標金額を超過しても、期限までは募集が継続され、超過分も含めて受け取ることができる。人気のプロジェクトでは、目標金額の10倍以上もプレッジが集まるケースもある。集まったプレッジからKickstarterの手数料5%とクレジットカード決済手数料が差し引かれてクリエーターに速やかに渡される。決済手数料は国ごとに異なっており、日本の場合は4.5%と定められている。つまり、日本で実施するプロジェクトの場合、集まった総額から合計9.5%が手数料として差し引かれる。プレッジが目標金額に届かずにプロジェクトが不成立になった場合は、手数料は一切かからないので安心だ。