ファッションをリードする人材を育てていく

 2018年11月には「シュー・クロゼット・アジア」と題して、Colony Closingの店舗にて展示会を開催した。扱うのは文字通り靴のみ。導入したブランドは、ジャランスリウァヤの他、GMTが扱っているパラブーツ、バーカー、トリッカーズなど。ただし、展示会とはいっても、実質的にはバイヤーと上顧客を招いての即売会だ。

「シンガポールのバイヤーはバイイング経験がありません。バイヤーとは名ばかりで、ブランドをセレクトして仕入れるという業務が存在しないんですね。だから、今回はバイヤーたちに個人的に商品を買ってもらった。いずれはバイヤーをピンポイントで招いて商談を成立させていきたいと考えています」

  自らセレクトした服や靴がお客から支持されれば達成感が得られ、次なるバイイングのモチベーションを高めていく。河村氏が変えようとしているのは、バイイングの仕組みだけではない。関係者の意識をも変え、ファッション市場の活性化に欠かせない目利き力を育てようとしているのだ。

「シュー・クロゼット・アジア」の後、メイドインフランスのブランド、パラブーツは、シンガポール高島屋S.C.のフランスフェアでも販売された。

「今後は、シンガポールで最もハイエンドなエリアにあるマンダリン・オーチャードホテル内の高級ショッピングモール・マンダリンギャラリーを舞台に、靴のセレクトポップアップショップを計画しています。有望なブランドをどんどんPRして、シンガポールに定着させたいですね」

 事実、河村氏と手を組んだことで、GMTのビジネスは大きく羽ばたいている。2018年からトリッカーズやバーカー、アイランドスリッパの卸売を開始し、シンガポールEUプラザ「Colony Closing」での取り扱いもスタート。2019年には、ロビンソン百貨店や髙島屋百貨店内に常設のコーナーが誕生した。シンガポールを足掛かりに、GMTが扱う靴は他のアジア諸国にも広がりそうだ。

 河村氏が運営するColony Closingの事業も着実に拡張している。来年の1月には、ミラノでオリジナルブランド”COLONY CLOTHING”のエキシビジョンパーティーの開催を予定しており、念願のヨーロッパデビューを図る。商圏の小さなヨーロッパでブランディングを図り、その成果を武器にアジア各地を回る計画だ。

 海外進出を進めているビームスのシンガポール店も、今年10月〜2020年1月の期間限定でColony Closing内にオープンする。店舗で販売されるのは、メンズ、ウィメンズのドレス、カジュアルのほぼ全レーベルと、シンガポールの気候や文化、風習を取り入れて新たに企画する商品。Colony Closingで実績を積んできた河村氏ならではのプロデュース力が発揮されることは間違いない。

「私がシンガポールに来てから6年が経ちますが、その間、東南アジアのイメージはずいぶん上がりました。働く場所としてアジアを選ぶ人も増えている。人もモノもどんどんアジアに流れてくるはず。これからも、現地で持続できるビジネスをつくる手伝いをしていきたいですね。そのためには、こちらでファッションをリードする人材を育てていかなければ」と河村氏。本気でファッションを伝えたいと真剣に、でも楽しく軽やかにビジネスを創出していく河村氏は間違いなく、東南アジアのファッションシーンに大きな影響力を与える1人である。