Colony Closingのディレクター、河村浩三氏

 シンガポールは東南アジア随一の先進国だ。2018年の1人当たりのGDPは6万4041ドル。世界第8位の数字を記録した(ちなみに日本は3万9306ドルで26位)。

 しかし、先進国として確固たる地位を築きながらも人々のファッション感度となるといまひとつ。所得は高いが、着る服にはあまりお金を使わない。そんな価値観が横行する国でセレクトショップを開き、熱狂的なファンを獲得しているのが、Colony Clothingを運営する河村浩三氏だ。東京にもショールームを開き、ファッションコンサルティング業もこなしながら、アジアと日本、さらにはヨーロッパも視野に入れて縦横無尽に活躍する河村氏の足跡とゴールを追った。

そもそもセレクトショップ自体が存在しない

 シンガポールでビジネスをやってみないか。2013年、河村氏は海外で会社を経営する友人からの言葉を契機に、セレクトショップのColony Clothingを立ち上げた。ビームスに17年間勤めた後での挑戦だ。

 冒頭で述べた通り、シンガポールの人々はファッションへのこだわりが低い。同じ東南アジアならタイの方がずっと上だ。だが、シンガポールは東南アジアのハブであり、ビジネスを新たに始めたい起業家にはありがたい税制面での優遇策があった。

「多国籍国家ならではの魅力もあります。さまざまな文化が混在していますからね。また、アジアと欧米のカルチャーをミックスしたスタイルを提案している店はなく、そもそもセレクトショップ自体が存在しないんです」

 ファッション感度が低いといっても、全くゼロというわけではない。限られた層ではあっても、ファッションへの関心が高い消費者は必ず存在するはずだ。シンガポールならではの利点と環境を検討し、河村氏はシンガポールでの起業を決めた。

 目指したのは「セレクトショップのあるべき姿」だ。

「ずっとアメリカンカジュアルに憧れ、プライベートでもサーフィンやスノーボードを楽しんできましたが、限界を感じていました。アジアの人にはもっと、アジアの人特有の体型に合わせて、欧米とアジアのカルチャーをミックスした形や色の服が合うんじゃないか。そんな思いから立ち上げたのがColony Clothingです。じっくりとマーケティングリサーチをしたわけではありませんが、きっとうまくいくという根拠のない自信はありました(笑)。幸い、投資家からの支援を受けることができて、無事、事業をスタートできました」

シンガポールのColony Closing店舗。シンガポールのファッションをリードする存在だ