32期連続で増収増益を記録するニトリホールディングスは、今や押しも押されもせぬ一大ホームファニシングチェーンだ。店舗数は576店を数え、アジアを中心に海外にも71店舗を出店する(2019年2月期)。これまで地方・郊外型の大規模店舗を中心に国内に出店してきたが、近年は都心型の「DECO HOME」を展開して都心部需要を取り込む。19年2月期の売上高は6081億3100万円(前年同期比6.3%増)、営業利益1007億7900万円(同7.9%増)、経常利益1030億5300万円(同8.6%増)、親会社に帰属する当期利益681億8000万円(同6.2%増)と、日本の小売企業でトップレベルの数字が並ぶ。

店名「N+」はPBからか?

 その好調なニトリが衣料専門店を展開していると聞き、訪問した。店舗名は「N+」(エヌプラス)、筆者が訪問したららぽーと富士見(埼玉県富士見市/19年3月20日開店)の他、越谷レイクタウン(埼玉県越谷市/19年3月29日開店)と計2店舗を出店。3店舗目は、10月下旬にテラスモール松戸にオープンさせるようだ。

 商品タグを見ると発売元が株式会社Nプラスである。所在地がニトリ東京本部同じで、株式会社Nプラスの代表取締役はニトリの現役役員が就いている。「N+」(エヌプラス)は、ニトリで好評を博した「Nクール」(接触冷感素材)、「Nウォーム」(吸湿発熱素材)、その他「Nグリップ」や「Nクリック」など機能特化型のPB商品で使われている「N」とニトリの頭文字が由来かと思われる。

実用衣料から品揃えを拡張

 同社は「価格」「品質」「デザイン」のバランスを取りながら「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」ことをコンセプトに取り扱い品種を広げてきた。国内店舗ではホームファッション中心とした小型店の「ニトリEXPRESS」や「デコホーム」といった新業態店で都市部への出店を加速させている。ファニチャーからファブリックに領域を広げ、今ではオリジナルのランドセルまで扱う。アパレル関連についても、機能肌着からルームウエアまで年々少しずつ展開商品を増やす。今夏はテレビ番組「ヒルナンデス」とコラボレーションしたワンピースが話題となった。ニトリ本業では実用衣料から序々にラインを広げつつあり、今回の「N+」は将来的なビジョンを見据えた実験だろう。

“ニトリ臭”は皆無

 ららぽーと富士見の3階にテナントとして出店する「N+」は、ABC-MARTやGAP、グローバルワーク、ゼビオスポーツ、家電量販店のノジマといった廉価型でファミリー志向の高いフロアに位置している。公式ホームページを立ち上げているが、他に販促を展開していないため、知名度はゼロに近い。現段階ではニトリと関連付けられるツールもなく、店名「N+」と外装デザインだけではニトリをイメージできる人はいないだろう(衣料テナント111店の1つにすぎない)。また、残念なことに店頭でファッションアピールするような販促や、機能を訴求するPOP等でお客を誘引させる仕掛けものない。筆者が訪問した土曜日の午後、他店より来店客は少なく埋没してしいる印象だった。

ブランドコンセプトを特定色で見せる大胆さ

 公式ホームページによると「『私のための大人服』として年齢をかさねながらも若々しさや感性を失わない大人の女性が毎日着たいと思うファッションを提案する」がコンセプトのようだ。イメージ写真から40、50代以上をターゲットにしているように思える。「通勤着からルームウエアまで生活シーンに合ったファッションをカラーコーディネイトとして提案していく」とある。よってファッションカテゴリーも「オレンジ&イエロー」「グリーン&ブルー」「モノトーン」「ルームウエア」となっている。シーズンテーマとしてカラーMDを取り上げる例はあるものの、ブランドコンセプトを特定色の組み合わせで訴求するという発想は、実に大胆だが同時にあまり類を見ない。次シーズン以降に注視したい部分でもある。

2店の発注量でこの物作りには驚かされる

 

 プライスラインは図にまとめた。アパレルに関しては1990円、2990円、3990円を中心とした構成で、1000円以下の商品はない。特に1000円台に3プライスそろえるのは、価格へのこだわりと見て取れる。オンラインショップも持たず、現状2店舗だけの発注量でこの価格帯の物作りは驚かされる。ニトリの好調さを背景とした強力なパートナシップがない限り実現不可能としか考えられない。

 しかし、同社が掲げる「お、ねだん以上。」はどうか。似鳥昭雄会長は自著の中で、「お、ねだん以上。ニトリ」について、「競合商品よりも3~5割値段が安いか3割以上は品質、機能性が優れていることが大前提」と語る。仮に競合をユニクロや無印良品と設定した場合、優位性はまだ感じられない。テナント出店から考えても低価格を狙いつつも、客単価は落とせない。それには買上点数を上げる必要がある。アパレル以外の扱いアイテム(帽子、カバン、ストール、アクセサリー、靴下)は補完的な印象が強く、ついで買いの程度は疑わしい。